- 著者
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山口 瑞穂
- 出版者
- 「宗教と社会」学会
- 雑誌
- 宗教と社会 (ISSN:13424726)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, pp.65-79, 2019-06-08 (Released:2021-06-05)
- 参考文献数
- 39
本稿は、1970年代半ばから1990年代半ばの日本におけるエホバの証人の歴史展開を、宗教運動論や教団組織論の視点から検討し、この時期の発展要因を明らかにする。検討に際し、教団側の刊行物だけでなく教団外からの情報も採用し、世界本部の布教戦略に注意を払った。ハルマゲドン1975年説が期待外れとなり、離脱者の増加という現象に直面した世界本部は、以前にも増して「終わりが近い」ことを強調し、多くの時間を宣教に費やす「開拓奉仕」と称される活動を督励した。日本支部の信者に占める「開拓者」の比率は群を抜いて高く、その多くは非信者の夫をもつ主婦たちであった。エホバの証人の救済観や教義は、日本人には本来受け入れにくいものであったが、「家から家」への戸別訪問による宣教に多大な時間が投じられたことが入信者の獲得と教勢拡大につながった。世界本部と日本支部の強固な関係は、献身的な活動を引き出した看過できない要素となっている。