14 0 0 0 OA 平田神学の遺産

著者
三ツ松 誠
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.183-205, 2018-09-30 (Released:2018-12-30)

平田国学が明治維新に与えた影響の如何という古典的な問いにつき、現在の研究状況をサーベイする。要点を三点にまとめると以下の通り。第一点。戦後の平田国学研究には、戦時下の顕彰運動の反動で、ナショナリスティックな側面を取り上げることを回避して、霊的世界の探究者としての篤胤に注目する傾向があった。しかし政治運動に関わった人々の主体形成に篤胤国学が影響したことは否定しがたい。第二点。近年の国立歴史民俗博物館における平田篤胤関係資料の調査の進展によって、篤胤やその家族、門人たちに関する豊饒な研究素材が学界に提供され、大きく研究水準が引き上げられた。古い議論にはそのままでは通用しない部分が生じている。第三点。明治初年における平田国学の挫折、という通俗的理解には注意すべきである。津和野派や薩摩派の国学者も篤胤から影響を受けているのだから、平田直門の失脚だけでは維新政権での篤胤学の影響力の消滅は意味しない。
著者
三ツ松 誠
出版者
佐賀大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:18819044)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.45-52, 2015-03
著者
三ツ松 誠
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.183-205, 2018

<p>平田国学が明治維新に与えた影響の如何という古典的な問いにつき、現在の研究状況をサーベイする。要点を三点にまとめると以下の通り。</p><p>第一点。戦後の平田国学研究には、戦時下の顕彰運動の反動で、ナショナリスティックな側面を取り上げることを回避して、霊的世界の探究者としての篤胤に注目する傾向があった。しかし政治運動に関わった人々の主体形成に篤胤国学が影響したことは否定しがたい。</p><p>第二点。近年の国立歴史民俗博物館における平田篤胤関係資料の調査の進展によって、篤胤やその家族、門人たちに関する豊饒な研究素材が学界に提供され、大きく研究水準が引き上げられた。古い議論にはそのままでは通用しない部分が生じている。</p><p>第三点。明治初年における平田国学の挫折、という通俗的理解には注意すべきである。津和野派や薩摩派の国学者も篤胤から影響を受けているのだから、平田直門の失脚だけでは維新政権での篤胤学の影響力の消滅は意味しない。</p>
著者
小野寺 拓也 山根 徹也 三ツ松 誠 平山 昇 森田 直子 池田 勇太
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究計画の目的は、近代社会において合理主義が進むなかで、にもかかわらず(あるいは、だからこそ)感情や情動といった「非合理的」とされる要素が果たす役割やそれが起動するメカニズムを明らかにすることである。具体的には、「感情体制」というマクロな構造を視野に入れつつ、エゴドキュメントという史料をもとにミクロにそのメカニズムを解明する。第一に19世紀の国民国家形成期と、20世紀前半の大衆社会や総力戦の時代の日本とドイツにおける多層的な「感情体制」のありようを明らかにする。第二に、多様なエゴドキュメントの分析を通じて、感情や直感が必要とされ人々の行動基準となっていくメカニズムを解明する。
著者
坂本 信道 西村 慎太郎 三ツ松 誠 鈴木 喬 柏原 康人 小山 順子 中川 博夫 小林 健二 三野 行徳 有澤 知世 恋田 知子 荒木 優也 太田 尚宏
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.50, pp.1-16, 2018-01-24

●メッセージ平安時代人の散歩――国際化と辞書――●研究ノート明治27年の長塚村大字渋川の人びと――原発事故帰還困難区域の歴史資料を読む――平田国学と和歌●書評ブックレット〈書物をひらく〉2入口敦志著『漢字・カタカナ・ひらがな 表記の思想』ブックレット〈書物をひらく〉5恋田知子著『異界へいざなう女 絵巻・奈良絵本をひもとく』●トピックス「ないじぇる芸術共創ラボ NIJL Arts Initiative」について第10回日本古典文学学術賞受賞者発表第10回日本古典文学学術賞選考講評バチカン図書館所蔵マリオ・マレガ収集文書群の調査と活用 ローマでのくずし字講座と講演会の開催について大学共同利用機関シンポジウム2017 「研究者に会いに行こう!――大学共同利用機関博覧会――」平成29年度「古典の日」講演会第41回国際日本文学研究集会総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況●表紙絵資料紹介武蔵国多摩郡連光寺村富沢家文書「諸用扣(留)」
著者
三ツ松 誠
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、国学者としての長野義言の資料の残存状況を調査し、今後の研究の可能性を開くとともに、井伊直弼と義言の国学思想とその政治上の立場との関わりを問題にした。既存の研究では、本居宣長流の歌詠みだった義言は、説教くさい儒教や道徳一般を嫌う故に、安政の大獄に際して容赦なく敵対者を弾圧することができたのだと説かれてきた。だがむしろ、本居宣長説を独自に拡張した神学に伴う善悪二元論的発想が、敵対者への仮借なき姿勢につながったのではないだろうか。
著者
三ツ松 誠 三ツ松 誠
雑誌
幕末地方歌壇の研究――佐賀藩の場合――
巻号頁・発行日
pp.11-23, 2021-03-31

○本書は平成29~30年度に実施された特定研究(若手)「幕末地方歌壇の研究――佐賀藩の場合――」(研究代表者:三ツ松誠)の成果報告である。
著者
三ツ松 誠
出版者
雅俗の会
雑誌
雅俗 (ISSN:13437577)
巻号頁・発行日
no.16, pp.34-43, 2017-07
著者
中尾 友香梨 日高 愛子 白石 良夫 大久保 順子 土屋 育子 沼尻 利通 亀井 森 三ツ松 誠 谷口 高志 田中 圭子 中尾 健一郎 村上 義明 二宮 愛理 脇山 真衣 河野 未弥 明石 麻里
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、肥前小城藩の藩主家と藩校に伝わっていた蔵書群である小城鍋島文庫の典籍を調査し、具体例として当文庫所蔵の『十帖源氏』を輪読・翻字し、分析を加えた。主要なる成果物として、2017年5月に『小城鍋島文庫蔵書解題集(試行版)』を刊行し、また2018年3月に笠間書院より『佐賀大学附属図書館小城鍋島文庫蔵「十帖源氏」立圃自筆書入本 翻刻と解説』を出版した。
著者
三ツ松 誠
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.79-102, 2012-06-30

近年、天皇祭祀を重視する新たな「国家神道」論が提出されているが、実際の祭祀を推進した側が近代日本の宗教政策をどう考えていたのかは議論が少ない。そこで式部寮で活躍した国学者飯田年平の議論を検討した。彼は厳密な古典研究に基づいた神祇・教導政策の実施を持論とし、天皇を中心とした神々への崇敬を他の諸宗教の上に置いた。そして「国体皇道」を国民に貫徹させようとする志向性に比して、その「宗教」性を拡充しようとする志向性は弱かった。彼の主張ほどに政府が教導政策へ積極的なコミットメントを行ったとは見做しがたい。だが、彼の論理が、所謂「神社非宗教論」と方向性を同じくしている、と評価することは許されよう。かかる立場からすれば、日本人としてのナショナル・アイデンティティの確立にはコスモロジカル、そしてスピリチュアルな基礎付けが第一に求められると説いた平田篤胤の議論は、批判すべきものだったのである。