著者
上村 靖司
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,放射能汚染水における三重水素水T2Oを、純水H2Oとの融点の違いを使って分離/濃縮する技術の開発に取り組んだ.精密温度制御によってT2Oを模擬するD2O溶液からD2Oを除去/濃縮するために、低温循環水槽(範囲-20~80℃、0.01℃分解能)内に放射冷却ユニットおよび製氷水槽と温度安定用水槽を入れ,上部を断熱蓋で覆う装置を製作した.凍結濃縮と融解濃縮に取り組んだ結果、前者では恒温水槽温度が高くなるにつれて固相へのHDO濃縮度が高まる傾向があることがわかり,水槽温度1.5℃の場合に最大濃縮度40%となった.後者では1.4℃において固相への最大濃縮度13%という結果を得た.
著者
上村 靖司 永井 宏幸 宝地戸 謙介 伊藤 親臣
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.163, pp.19-27, 2010-10-05

2006年4月に33tの雪室をビルトインした住宅が新潟県小千谷市に建築され,2006から2008年にかけて,雪室の貯雪性能,雪冷房システムの冷房性能,空気清浄効果についての実証試験が行われた.雪室に入れて貯蔵された雪は,3室26畳の空間をひと夏通じて冷房しても9月中旬頃まで残った.冷房室は設定された25〜27℃に維持され,市販のエアコンに比べてそん色ない性能を発揮した.湿度は,雪表面における除湿効果で連続運転によって50%以下にまで下がった.粉塵量・臭いレベルの測定から,空気清浄効果が確認でき,特に高い除塵効果が示された.雪冷房運転のための電力消費は,3室合計で年間1500円以下であり,成績係数は平均11程度となり,エネルギー効率の高い冷房であることが示された.
著者
上村 靖司 星野 真吾
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.477-485, 2008 (Released:2021-04-09)
参考文献数
5

一般に氷を製造する場合の熱移動は,熱伝導または対流熱伝達が支配的であり,放射を工業上利用した製氷技術は見当たらず,その得失は未知である.本研究は,放射冷却による製氷(放射製氷) の技術開発を目的とし,実証実験装置を試作しその製氷過程の観察を行った.実験装置は低温熱源と断熱水槽で構成され,両者の間の熱伝導と対流熱伝達を排除し,かつ霜の成長を抑制するための真空層を挿入した. 実験は雰囲気温度約2℃に保持された低温室内で行い,水槽側面の静止画像撮影と水温測定を行った.初晶は冷却開始から数時間後に水槽上面で自然発生し,その後鉛直下向きにほぼ一定速度で成長し,40時間で約20mm の厚さとなった.その間の成長速度は0.6mmh-1であった. 生成された氷は目視では完全に透明で気泡も見られなかった.そして結晶は全体が鉛直方向をc軸とする単結晶であった.熱伝導による製氷(伝導製氷)と比較を行った結果, 伝導製氷は氷が厚くなると成長速度が低下するのに対し,放射製氷では速度低下が見られず,また取り込まれる気泡のサイズが小さいという違いが見られた.
著者
上村 靖司 加藤 涼 上浦 圭太
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.201, pp.11-18, 2013-12-05 (Released:2017-09-05)

人工的に製造した角氷と空気を直接接触させて冷房を行う冷房装置を製作し,冷房能力および空気清浄(集塵・脱臭)効果を試験的に評価した。内径250mmの円筒内に一辺約30mmの角氷を充てんし,角氷の空げきに空気を通して冷房したところ,2.5kWの冷房能力が得られた。次に,粒径の異なる3種類の氷,2段階の風量,2段階の初期氷充てん高さを組み合わせた条件を設定し,タバコの煙を用いて試験環境内の粉塵濃度および代表臭気成分濃度の変化を測定したところ,条件によらず集塵効果は見られなかったが,脱臭は空気清浄機と同等以上の効果が見られた。
著者
上村 靖司 高橋 徹 松澤 勝 佐藤 篤司 上石 勲 千葉 隆弘 渡邊 洋
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

数値地理情報システム(GIS)を活用して「中越地震と平成17年豪雪の複合被害」を数値地図上に統合, 避難行動および避難空間のシミュレーションをするシステムを開発した. また「地震-豪雪複合災害の被害想定アンケート」を被災地住民に対して実施し, 積雪期地震の場合に被害想定を行った. これらより建物倒壊数の増加, 火災発生数の増加に加え, 避難空間の不足, 移動の困難が深刻であることが明良になった.次に, 積雪期地震の建物被害想定のため, 積雪を加載した建築物模型を振動台上で加震し, 建物の振動応答および積雪の破壊状態を観察する実験が行われた. またこのモデル実験を計算機上で再現できる個別要素法に基づくシミュレーションプログラムも作成され, 積雪の破壊現象などが再現され, プログラムの有効性が明らかになった.積雪期に斜面上の雪に加震力が加わった時, 雪崩が発生するかどうかの積雪不安定度の理論的検討が進められた. また積雪層シミュレーションモデルSNOWPACKによる面的雪崩危険度予測の手法が, 地震による加震力を加えた問題について適用されその有効性が確認された.
著者
上村 靖司 関 嘉寛
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,越後雪かき道場の取組を通じて未経験外部支援者の関与による減災プロセスを分析し、雪に対する地域防災力向上手法を確立することである。2011年度からの3冬季に、新潟県,富山県、山形県の18か所で雪かき道場13回、命綱講習会22回を開催した。参加者と地域住民へのアンケートから「外部支援者との共同作業が安全に繋がる」、「外部者混在の講習会の方が心理的抵抗が少ない」など住民の防災意識啓発に有効であることが確認された。次に豪雪4県の雪害リスクの分析の結果、リスク水準が受容限度を超えていること、降雪量がリスクを支配し高齢化率や人口密度等の社会指標はほとんど寄与していないことを明らかにした。