著者
上田 麻理 藤本 一寿
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.301-308, 2010-07-01
被引用文献数
2

雨天時は,降雨による環境悪化によって視覚障害者が屋外歩行時に危険に晒されているという意見が聞かれる。視覚障害者も雨天時に屋外を歩行する機会が少なくないことから,雨天時の視覚障害者の歩行の安全確保は重要な課題であり,その解決は急務である。本研究は,視覚障害者の雨天時の歩行環境整備の第一歩として,視覚障害者のための雨天時の歩行環境の問題点を明らかにするために,視覚障害者と歩行訓練士を対象に三つのアンケート調査を実施した。その結果,雨天時は,"傘にあたる雨音"等の降雨騒音によって,視覚障害者が歩行時に利用している聴覚情報の聴取が妨害されていることが分かった。そこで,雨天時の環境騒音レベルを測定してみたところ,降雨量がやや強い雨の状態で晴天時に比べ15dB以上高かった。このことから,視覚障害者の雨天時の歩行環境整備として,聴取妨害となる降雨騒音の低減が必要であると結論した。
著者
上田 麻理 山内 勝也 永幡 幸司
出版者
公益社団法人 日本騒音制御工学会
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.418-424, 2012-12-01 (Released:2020-01-16)
参考文献数
15

街頭宣伝放送の適切な音量を示すことを目的として,視覚障害者を対象とした主観評価実験により,視覚障害者が街頭宣伝放送に求める音量を求めた。その結果,視覚障害者が広告アナウンスおよびBGMに求める音量は,環境騒音より10 dB程度低い音量であった。街頭宣伝放送を情報源として利用する視覚障害者は少なく,情報源として利用する場合も車両走行音等の安全のために利用するような聴覚情報とは異なり,最低限必要な音量に設定していることが分かった。現状の街頭宣伝放送は,視覚障害者が望む音量より15 dB以上高い音量であり,街頭宣伝放送の音量低減に向けた規制値等の検討が必要であることを示した。
著者
三浦 貴大 藪 謙一郎 坂尻 正次 上田 麻理 檜山 敦 廣瀬 通孝 伊福部 達
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.283-294, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
54

Assistive instruments such as slopes and textured paving blocks are installed for helping elderly, visually and/or physically impaired people, who have any inconvenience to move outside. Though these precipitous situations of accessibility progress affect their migration pathway for their destination, up-to-date accessibility information is difficult to gain quickly because of local information disclosure. It is necessary to develop a comprehensive system which appropriately acquires and arranges scattered accessibility information and then presents the information intuitively. Thus, our final goal is to develop a social platform which can obtain and present the information depending on users' conditions and situations including users' disorders and places, and can share the information provided by users. Particularly in this paper, we analyzed the characteristics of shared information obtained by assessment and crowdsourcing for improving quality and quantity of accessibility information. Results indicated that different tendency of character counts among accessibility conditions was observed in the assessment and the crowdsourcing conditions.
著者
上田 麻理
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

雨天時は,降雨等による環境の変化によって,視覚障害者が危険に晒されている.特に,降雨時に発生する"傘の雨滴衝撃音"によって視覚障害者や聴覚障害者が普段利用している聴覚情報の利用が妨げられており,道路横断時の自動車接触事故経験を示す視覚障害者が多い等,生命に関わる重要な問題であり,解決策の提案は急務である.本研究では雨天時の視覚障害者の歩行の安全を確保するために降雨騒音低減傘の開発,検証実験と評価指標の検討,視覚障害者用補聴器の開発,法制の整備等を行う.視覚障害者のニーズを配慮した雨天時の歩行環境整備として,以下に示す整備を実施した.◆降雨騒音低減傘の開発/検証実験と評価指標の検討(概要:これまで,降雨騒音低減傘のための基礎的検討を行ってきたが,これらの知見を踏まえ,実用化に向けて制振対策と効果の確認旧標値への追従性等),物性値の測定を行う.また,視覚障害者によるユーザビリティに関する検証実験は大変重要である)昨年度及び一昨年度の二年間は,特許修正,製品化へ向けた傘の軽量化,降雨騒音レベル測定,評価実験を実施した.さらに,視覚障害者用補聴器の開発(概要:高度技術支援システム等の新たなデバイスを用いた福祉機器による移動支援を望む視覚障害者のために,視覚障害者用補聴器の開発と提案を行った.雨天時に,傘の雨滴衝撃音等の降雨騒音にマスキングされずに,必要な聴覚情報を聞き取り易くするための補聴器の開発と補聴器のフィッティングである.さらに,どれくらい降雨騒音によってマスクされているかを明らかにするためにマスキング計算モデルの構築を行った.◆視覚障害者用聴覚情報に係る法制の整備と工業規格化,国際標準化(概要:わが国における視覚障害者支援に関する法制では,雨天時等の環境変化に応じた整備指針がないことが問題の一つである.雨天時の歩行は視覚障害者にとって危険であることから,法制の整備や視覚障害者用サイン音の設置・運用に関する標準化は重要な課題である)本研究では,法整備のためのデータ収集を実施した.◆降雨騒音傘を例とした晴眼者の音環境の価値評価に関する経済評価実験:開発した降雨騒音低減傘の販売価格を設定する際の参考にすること及び,低減傘から得られる様々な効用(メリットなど)を経済評価実験により定量化することを目的とした.対象はまずは,低減傘の主な利用者ではない晴眼者を対象として実験を実施した.