- 著者
-
下村 政嗣
- 出版者
- 公益社団法人 日本油化学会
- 雑誌
- オレオサイエンス (ISSN:13458949)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.6, pp.267-274, 2020 (Released:2020-06-10)
- 参考文献数
- 26
「持続可能な開発目標(SDGs)」策定の背景となる「人新世」や「プラネタリー・バウンダリー」に象徴される人間活動が地球環境に大きな影響を及ぼしつつある時代において,持続可能性を回復する循環型経済システムへ移行しようとする動向がある。今世紀になり,ナノテクノロジーの世界的な展開と相俟って新しい展開を迎えたバイオミメティクスは,分子レベルの材料設計からロボティクスの分野を超えた,建築,都市設計,に至る“生態系バイオミメティクス”と称すべき幅広い分野に広がっている。バイオミメティクスの手本である生態系は,再生可能な太陽光エネルギーを駆動力とした生産,食物連鎖による消費,代謝による分解によって,「ゆりかごからゆりかごへ」の完全なる物質循環系を植物・動物・微生物からなる生物多様性が可能としている。生物多様性からの技術移転をもたらすバイオミメティクス・インフォマティクスと,人と生物の界面がもたらす循環型経済の観点から,バイオミメティクスを巡る世界動向を紹介する。