著者
下橋 淳子 寺田 和子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.62-67, 2001-06-30 (Released:2011-01-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1

ミルクアレルギーに対する減感作食品としての発酵乳製品の有効利用について検討するため, 発酵温度と時間を変えたヨーグルト, 乳酸濃度を変えた乳酸酸乳および市販の発酵乳製品についてαs1-カゼインとβ-ラクトグロブリンを測定し, 次のような結果を得た.1. ヨーグルトの発酵温度を30.0, 37.5および45.0℃に設定した場合, 37.5℃発酵がアレルゲン性たんぱく質の低減化に最も効果的であった.2. 発酵温度の違いに関わらずβ-ラクトグロブリンは, 長時間発酵を続けることにより消失したが, αs1-カゼインは, 発酵温度と時間によって分解の程度は異なり, 発酵温度37.5℃では約20%, 30.0℃および45.0℃では約50%まで減少させることができた.3. 発酵乳のアレルゲン性たんぱく質含量の減少には, 乳酸による酸分解以上に乳酸菌自体のたんぱく質分解作用が影響していることが示唆された.4. 市販の発酵乳製品は, 一般に牛乳よりアレルゲン性たんぱく質は減少していたが, 製品により減少の程度は様々であった.5. 乳製品乳酸菌飲料や乳酸菌飲料には, β-ラクトグロブリンはほとんど検出されず, αs1-カゼインは残存している製品もあったが, はっ酵乳に比べるとアレルゲン性たんぱく質含量は少ない傾向にあった.
著者
下橋 淳子
出版者
駒沢女子大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02884844)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.17-22, 2004-03-03
被引用文献数
1

グルコースとグリシンによるアミノカルボニル反応で生成した褐変物質、ショ糖のカラメル化反応によって生成した褐変物質、魚醤に含まれる褐変物質、タマネギを加熱して得られる褐変物質についてDPPHラジカル消去能を測定し、次のような結果を得た。1. pH5.0、6.0、7.0および7.4で0.5M-グルコースおよびグリシンの等量混液を加熱し、アミノカルボニル反応を行ったところ、pHが高いほど着色度が高く、着色度が高いほどDPPHラジカル消去能も高くなった。着色度を示す440nmにおける吸光度とDPPHラジカル消去能の間にはr=0.993の非常に高い正の相関関係が認められた。2. カラメル化によって着色した糖液でも、着色が進行するにつれてDPPHラジカル消去能は高くなった。着色度を示す440nmにおける吸光度とDPPHラジカル消去能の間にはr=0.882の非常に高い正の相関関係が認められた。3. アミノカルボニル反応による褐変物質とカラメル化による褐変物質を比較すると、アミノカルボニル反応による褐変物質の方が抗酸化性は高いことが推測された。4. 薄口しょう油や臼しょう油と同程度の着色を示す魚醤に含まれる褐色物質にもDPPHラジカル消去能が認められたが、抗酸化性は着色物質以外の成分も関与していることが示唆された。5. タマネギを加熱し、黄色〜あめ色〜茶色と褐変が進行するに従ってDPPHラジカル消去能は上昇した。
著者
下橋 淳子 寺田 和子
出版者
駒沢女子大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02884844)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.53-56, 1995-03-03

健康な女子短大生7名の24時間尿を3日間採取し、尿中窒素化合物および食塩量を測定して次の結果を得た。1. 実験期間が夏期であったことを考慮しても、被験者らの尿量は全般的に少なく、それに対応して比重はやや大きい傾向を示していた。2. 尿中窒素排泄量の3日間の平均値は、10.7〜15.4g/日であった。3. 尿中アンモニア排泄量の3日間の平均値は、0.3〜0.7g/日であった。4. 尿中クレアチニン排泄量の3日間の平均値は、0.90〜1.18g/日であった。5. クレアチニン係数は、15.4〜21.4であった。6. 食事調査によるタンパク質摂取量と、尿中総窒素排泄量からタンパク質の出納を3日間の平均値で見ると、ほぼバランスがとれていたが、欠食によるタンパク質摂取量の不足は、将来、健康を損なうことにつながることが示唆された。7. 食事調査による食塩摂取量と、尿中食塩排泄量の出納を3日間の平均値で見ると、ほぼバランスがとれていたが、1日の排泄尿量が著しく少ないと、食塩が排泄されにくくなることが示唆された。
著者
下橋 淳子 西山 一朗
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.247-250, 2008-12-31 (Released:2009-05-01)
参考文献数
11
被引用文献数
4 1

色調の異なる味噌の表面色と80%エタノール抽出液のDPPHラジカル消去能を測定し, 味噌の熟成中に生成したメラノイジンの生成量と抗酸化性の関係を調べた。さらに, 0.5M-L-リジンと0.5M-D-グルコースの等量混液によるアミノカルボニル反応液の着色度とDPPHラジカル消去能の関係からもメラノイジンの生成量と抗酸化性との関係を検討した。1) 味噌の表面色の明度とDPPHラジカル消去能の間には, 相関係数r=-0.755 (α‹0.05) で有意な負の相関が認められた。2) 味噌の熟成過程におけるアミノカルボニル反応で生成したメラノイジンが多く, 赤褐色化の進んだ味噌ほどDPPHラジカル消去能が高値を示した。3) 大豆の抗酸化成分を多く含む豆味噌の八丁味噌や赤だしは, 米味噌や麦味噌と比較してDPPHラジカル消去能がかなり高かった。4) 0.5MのL-リシンとD-グルコースの等量混合液によるアミノカルボニル反応液には, 着色度とDPPHラジカル消去能の間に相関係数r=0.961 (α‹0.01) で強い正の相関関係が認められた。
著者
下橋 淳子 寺田 和子 Atsuko SHIMOHASHI TERADA Kazuko
出版者
駒沢女子短期大学
雑誌
駒沢女子短期大学研究紀要 (ISSN:02884844)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.31-38, 1997-03-03

ハーブ5種類、ビタミンEやカロチンを多く含む食品4種類、褐変に関わる物質3種類およびβ-カロチンをハイリノール型サフラワー油に添加して60℃における抗酸化効果を調べた。さらに、効果の大きかった添加物については、35℃で油 : 酢=2 : 1の試料に対する抗酸化効果を調べた。比較のために合成抗酸化剤BHT添加試料と天然ビタミンE強化ハイリノール型サフラワー油についても並行してPOVを測定し、次の結果を得た。1. 60℃において、0.5%ローズマリー添加試料は、0.1%BHT添加試料を凌ぐ抗酸化効果を示し145時間後のPOVはコントロールの52%だった。2. 60℃において、0.5%セージ添加試料は、ローズマリーに次ぐ抗酸化効果を示したが、0.5%オレガノ・タイム・バジル添加試料は、20時間程度しか抗酸化効果を示さなかった。3. 60℃において、0.5%青じそ添加試料にはある程度の抗酸化効果が認められたが0.5%緑茶・パセリ・青のり添加試料には抗酸化効果がほとんど認められなかった。4. 60℃において、0.1%没食子酸添加試料にはある程度の抗酸化効果が認められたが、0.1%クロロゲン酸・カテキン添加試料には抗酸化効果が認められず酸化促進的な作用をする物質の存在が示唆された。5. 60℃において、0.1%β-カロチン添加試料の145時間後のPOVは、コントロールの85%であった。6. 60℃において、天然ビタミンE強化ハイリノール型サフラワー油は、20時間後のPOVがコントロールの39%であったが、その後の抗酸化効果の低下は、著しかった。7. 35℃において、ハイリノール型サフラワー油に2 : 1の割合で穀物酢を加えると油のみの場合よりPOVが上昇し、添加物の抗酸化効果が低下した。8. 35℃で穀物酢を加えた試料に対しても、0.5%ローズマリー添加試料は0.1%BHT添加試料を凌ぎ最も安定して抗酸化効果が高く、13日目のPOVはコントロールの36%であった。9. 35℃では、青じそは酸化促進的に作用し、0.5%添加試料より1.0%添加試料の方がPOVが高かった。10. 35℃で穀物酢を加えた試料に対し. 0.1%β-カロチン添加試料は、2~3日間はPOVがコントロールの21~27%で高い抗酸化効果を示したが、その後の抗酸化効果の低下は、著しかった。11. 35℃で穀物酢を加えた天然ビタミンE強化ハイリノール型サフラワー油は、7日間はPOVがコントロールの14~20%で高い抗酸化効果を示したがその後は抗酸化効果が低下した。
著者
下橋 淳子 寺田 和子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.222-227, 1992-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Effects of pH and organic acids on the color of infusion of black tea have been studied by color measurement and pigment separation.The color of infusion of black tea became brighter orange with lower value of pH and more reddish brown with higher value of pH.Infusion with buffers of pH 2.2-8.0 showed that optical density of butanol and water layers increased with higher pH in comparison with Methyl-iso-butylketone layer.Methyl-iso-butylketone layer which mainly contains theaflavins, had higher optical density with lower value of pH and lower optical density with higher value of pH. Butanol layer which mainly contains thearubigins, and water layer which contains water soluble pigment, had higher optical density with increase of pH.When the 2-4×10-5 mol of acetic acid, lactic acid, gallic acid, oxalic acid, malic acid, succinic acid, tartaric acid or citric acid was added to the infusion of black tea, the different effect on the color was not recognized.Ascorbic acid had the effect of increasing yellow and rising the value and chroma of the infusion of black tea in comparison with other organic acids.It is considered that the change of color of infusion of black tea, by adding lemon, is due to ascorbic acid and the decrease of pH.
著者
下橋 淳子 寺田 和子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.225-229, 1993-08-10 (Released:2013-04-26)
参考文献数
5

The effects of metallic salts and the hardness of water on the color of black tea infusion were examined.Water with the hardness of 70°-80° of calcium and the concentration of about 30 ppm of calcium ion produced the strongest redness. The addition of calcium ionmore than 60 ppm to the water caused the cream down.Water with the hardness of magnesium more than 400°and the concentration of magnesium ion more than 97 ppm had an effect on the color of black tea infusion.It is clarified that magnesium dose not practically affect the color of black tea infusion and from the sensory test, various factors such as the balance of redness and yellowness, value, chroma and transparency interact in the color of black tea infusion.The soft water with the hardness lower than 75° and the concentration of calcium ion less than 25ppm, is preferable for producing the beautiful color of black tea infusion.
著者
下橋 淳子 寺田 和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.225-229, 1993-08-10

紅茶に適した水、特に美しい水色を呈する水質について検討し、次のような結果を得た。1.ナトリウムイオンやカリウムイオンは120ppm程度の濃度では紅茶水色に影響を与えなかったが、マグネシウムイオン、マンガンイオンでは赤み、黄色み、彩度を増し、紅茶水色への影響は両者を混合した方がより大きくなった。2.カルシウムイオンは60ppm以上の濃度では著しい白濁を生じ、明度、彩度を低下させ水色を損なった。3.アルミニウムイオンは、紅茶水色の赤みを増し、美しい真紅色を示したが、赤色沈殿を生じた。4.カルシウム硬度70度〜80度、カルシウムイオン濃度として30ppm程度の水で紅茶水色の赤みが最高となった。5.マグネシウムは、マグネシウム硬度400度、マグネシウムイオン濃度として97ppm以上の高濃度にならないと、紅茶水色への影響は現れないため、日常的にはマグネシウムが紅茶水色に影響を与えることはないと思われる。6.官能検査の結果、紅茶水色の評価は赤みの強さだけでなく、赤みと黄色みのバランス、明度、彩度、透明感などの因子が相互に関わり合っていることが明らかとなった。7.美しい紅茶水色を得るには、硬度75度以下、カルシウムイオン濃度25ppm以下の中等度の軟水または更に硬度の低い軟水が水質として好まれた。特にニルギルのような明るいオレンジ色の水色を特長とする品種では、より硬度の低い水質が適していると考えられた。
著者
下橋 淳子 寺田 和子
出版者
駒沢女子大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02884844)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.1-6, 2003-03-03
被引用文献数
3

果実の抗酸化性、調理加工中の加熱や成分間反応で生成する褐変物質などの抗酸化性への影響を知るために、DPPHラジカル消去能を測定し、次のような結果を得た。1. 果実のDPPHラジカル消去能は、キウイフルーツやアメリカンチェリー、イチゴなどで果汁1ml当たり1400nmTrolox相当量前後の値を示し、高い抗酸化性が示唆された。2. アントシアン系色素を含む果実にはDPPHラジカル消去能が高い傾向がみられたが、皮にアントシアン系色素を含むブドウでは、皮を除いた場合のラジカル消去能は低値であった。3. 抗酸化性が高く、果実に多く含まれているアスコルビン酸は、10分以内の加熱では加熱時間の違いによるDPPHラジカル消去能への影響が認められなかった。4. 調理加工過程における加熱は、DPPHラジカル消去能にほとんど影響を与えないことが示唆された。5. 調理加工過程におけるアミノカルボニル反応やカラメル化反応によって生成する褐変物質には非常に高いDPPHラジカル消去能が認められた。