著者
竹森 啓子 下津 咲絵 佐藤 寛
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.163-171, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
27

本研究は教員のメンタルヘルスリテラシー(MHL)と児童のサポート知覚、抑うつ、不安の関連を検討することを目的とした。14名の教員とその担任学級の児童425名を対象に質問紙調査を実施した。その結果、教員のMHLと児童のサポート知覚は相関関係にはないことが示された。また、階層線形モデリングの結果、児童の抑うつ症状の抑制には教員からのサポートを学級全体が知覚することと、児童個人が知覚することの両方が有効であるであることが示された。一方で児童の不安症状の抑制には児童個人がサポートを知覚することのみが有効であった。さらに教員が対処法に関するMHLが高いことが児童の不安が抑制されることが明らかになった。以上の結果を踏まえて、教員対象のMHL教育の在り方を議論した。
著者
佐藤 寛 石川 信一 下津 咲絵 佐藤 容子
出版者
日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.307-317, 2009-06-01
被引用文献数
2

The three depression self rating scales, the Children's Depression Inventory(CDI), the Depression Self-Rating Scale for Children(DSRS), and the Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D), are used to screen for depression in Japanese adolescents. The present study incorporating these three scales and a semi-structured interview for determining DSM-IV depressive disorders aimed to test the ability of the scales to identify depressive disorders in a community sample of junior high school students in Japan. The receiver operating characteristics (ROC) analyses and stratum-specific likelihood ratios (SSLRs) were applied to the data sets of 286 community adolescents aged 12 to 14 years old. The ROC analyses revealed moderate convergent validity of these scales in detecting depressive disorders. The optimal cut-off points suggested by the ROC analyses were 31 for CDI, 24 for DSRS and 37 for CES-D, which were all higher than traditional cut-off points. Results of the SSLRs further demonstrated that these three scales were useful in screening for depressive disorders in Japanese community adolescents, applying the optimal cut-off points as noted.本研究の目的は,子どもの抑うつを測定する自己評価尺度の判別精度を受信者操作特性(ROC)分析と層別尤度比(SSLR)の観点から検討することであった。一般対象者の中学生286名に対し,抑うつの自己評価尺度であるCDI,DSRS,CES-Dの日本語版を実施した。加えて,DSM-IVに基づくうつ病(大うつ病,気分変調症,小うつ病)の半構造化面接を実施し,抑うつの自己評価尺度との比較を行った。本研究の対象者のうち,15名(5.2%)が面接時点で何らかのうつ病の診断に該当していた。ROC分析の結果,これらの自己評価尺度はいずれも中程度以上のうつ病の判別力を示しており,各尺度の最適なカットオフ値はそれぞれ,CDI31点,DSRS24点,CES-D37点であることが明らかにされた。SSLRを算出したところ,CDIでは0-21点で0.51,22-30点で1.57,31-54点で108.40となった。DSRSでは0-15点で0.46,16-23点で1.06,24-36点で∞であった。CES-Dでは0-15点で0.40,16-36点で1.00,37-60点で54.20であった。各尺度の日本語版における従来のカットオフ値(CDI22点,DSRS16点,CES-D16点)を満たしていた場合でも,得点が本研究のカットオフ値に満たない場合にはうつ病の検査後確率は検査前確率とほとんど変わらないことが示された。
著者
下津咲絵
雑誌
精神科治療学
巻号頁・発行日
vol.21, pp.521-528, 2006
被引用文献数
3
著者
佐藤 寛 下津 咲絵 石川 信一
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.439-448, 2008-05-15

抄録 本研究では,わが国の一般中学生におけるうつ病の有病率について検討を行った。中学1~2年生328名(平均年齢13.3±0.6歳)を対象に,大うつ病,気分変調症,および小うつ病に関する半構造化面接を実施した。その結果,うつ病の時点有病率は4.9%(男子2.2%,女子8.0%),生涯有病率は8.8%(男子6.2%,女子12.0%)であり,約20人に1人が面接の時点でうつ病の診断基準に該当し,約11人に1人がこれまでにうつ病に罹患した経験があることが示された。自殺念慮はうつ病群の31.3%,非うつ病群の2.6%でみられ,自殺企図の既往歴はうつ病群の18.8%,非うつ病群の1.9%において認められた。
著者
中村 光 岩永 可奈子 境 泉洋 下津 咲絵 井上 敦子 植田 健太 嶋田 洋徳 坂野 雄二 金沢 吉展
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION FOR MENTAL HEALTH
雑誌
こころの健康 : 日本精神衛生学会誌 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.26-34, 2006-12-30

本研究の目的は, ひきこもり状態にある人を持つ家族の受療行動に影響を及ぼす要因を明らかにすることであった。ひきこもり親の会 (セルフヘルプグループ) に参加している家族153名から自記式質問紙による回答を得た。その結果, 以下のことが明らかにされた。(1) 家族の85.6%がひきこもり状態を改善するために相談機関を必要としている。(2) 精神疾患に対する偏見が家族の受療行動を阻害する可能性がある。(3) 相談機関の存在や所在地を知っていることが, 家族の受療行動を促進する可能性がある。(4) 家族にとって保健所や精神保健福祉センター, 電子メールによる相談は利用しにくく, 反対に電話相談は利用しやすい可能性がある。(5) ひきこもり状態にある本人が相談機関来所を拒否すると, 家族の受療行動を阻害する可能性がある。調査結果の検討を通して, ひきこもり状態にある人を持つ家族の受療行動を促進する方法が議論された。