- 著者
-
中井 裕
砺波 謙吏
大村 道明
大串 由紀江
- 出版者
- 養賢堂
- 雑誌
- 畜産の研究 (ISSN:00093874)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.5, pp.511-520, 2014-05
東北および関東の太平洋側に立地する飼料工場の生産量シェアは,国内全体の約3分の1に相当する。宮城県石巻には飼料工場が6つあるが,津波による施設等の損壊ほか浸水被害があった。例えば,ある工場では,震度6強の揺れによる機械への被害は少なかったが,3.6mの津波が襲い,製品在庫が大量流失し,機械設備が破損,電気設備も冠水した。高圧変電所の被災に伴い,通電までには45日を要した。復旧にあたっては,30cmものヘドロに埋まり除去に苦労したほか,水に浸かった飼料をどのように処理するかという大きな問題に直面した。それでも機械設備を修復し,5月18日に製造テストを開始して同23日から本格稼動させている。また,青森県八戸のある工場では,震度5強の揺れによる機械への被害は少なかったが,1.5mの津波が襲い,製品在庫の大量流失のほか,機械と電気設備も冠水した。3日後に高圧通電したことから復旧を急ぎ,3月23日に製造テストを開始し,28日から本格稼動させている。このように,被災した飼料会社では復旧に尽力するとともに,飼料業界でバックアップ体制を敷き,余力のある北海道・西日本・九州の工場で増産し,長距離輸送する体制を発生後1週目から本格化させている。あわせて備蓄飼料穀物35万tの貸付,輸送車両の高速道路使用特別許可等もあった。一方で,燃料・トランスバック・内航船が不足するという事態も生じた。また,一部の外国船は遠方の港への荷降しを希望し,対応に追われた社もあったようだ。