著者
大泉 宏 幅 祥太 中原 史生 三谷 曜子 北 夕紀 斎野 重夫 吉岡 基
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.243-248, 2020 (Released:2020-08-04)
参考文献数
12

2019年5月と7月に北海道知床半島沖の根室海峡でシャチの白色個体が2例観察された.1頭目は成熟したオス,2頭目はメスか未成熟のオスと推定された.北太平洋周辺海域からこれまでに報告されたシャチの白色個体の写真と比較した結果,どちらの個体も既知の個体の特徴と一致しなかった.これら2頭はアルビノであるか白変種であるかの判断は出来なかったが,いずれも確認できた範囲内では,通常黒色である部位が白かった.このようなシャチの白色個体が日本の沿岸から確認されたという報告は無く,これらの2頭は日本における初記録と考えられる.
著者
大泉 宏 中原 史生 吉岡 基 三谷 曜子
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

北海道の釧路沖と羅臼沖でシャチ(Orcinus orca)の調査を行った結果、2007年から2017年の写真から両海域で合わせて380個体が識別され、既知の個体と合わせ計506個体が登録された。海域共通の個体は少数であったこと、海域に独特の鳴音があったこと、衛星標識個体の回遊範囲が異なっていたことから、両海域のシャチは少なくとも行動圏の異なる比較的独立した集団と考えられた。衛星標識個体は千島列島から太平洋西部にまで回遊し、鳴音にはロシア沿岸の集団との関連が予想された。北海道東部にはシャチの重要な生息地があることを明らかにでき、その分布範囲と個体群構造の基礎的知見を構築することが出来た。
著者
友永 雅己 森阪 匡通 伊村 知子 中原 史生 林 美里 田中 正之 足立 幾磨
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-05-31

チンパンジーなどの大型類人猿とハンドウイルカなどの鯨類を主たる対象として、われわれ人間の知性の進化を、特に系統発生的制約と環境適応という観点から比較認知科学の手法を駆使して検討を行ってきた。研究は、物理的世界および社会的世界の知覚・認識・理解に関して様々な観点から多様な種を対象に実施された。その結果、基礎的視知覚、空間認識における身体的制約、イルカ類における道具使用的行動、概念的メタファーの理解、他個体認識、聴覚コミュニケーションの種特異性と一般性、オランウータンやイルカにおける向社会行動の発現過程、チンパンジー、オランウータン、イロワケイルカにおける母子間関係の発達的変化を明らかにした。
著者
中原 史生
出版者
常磐大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ハクジラ類における鳴音の個体群変異を明らかにすること、個体群に特徴的な音響パラメーターの特性を把握することを目的として、北海道室蘭市沖、千葉県銚子沖、東京都小笠原諸島父島周辺海域、アクアワールド茨城県大洗水族館、沖縄美ら海水族館において鳴音調査を行った。野外では鯨類の遭遇頻度が低く、十分な調査を行うことはできなかったが、飼育個体から多くのデータを得ることができた。昨年度までに蓄積したデータにバンドウイルカ、ミナミハンドウイルカ、オキゴンドウ、コビレゴンドウ、マッコウクジラの鳴音データを加えて解析を行ったところ、バンドウイルカ、ミナミハンドウイルカ、コビレゴンドウのホイッスルにおいて個体群間で差異がみられた。判別分析の結果、各種とも70%以上の正答率で判別が可能であった。上記をふまえ、平成15年度に数値解析プログラムMATLABを用いて作成したプロトタイプ鳴音判別プログラムの再検討を行った。鳴音判別プログラムを用いた種判別はかなりの精度で行えるようになったが、個体群判別という点では、まだまだ十分な信頼性を得ることはできなかった。今後さらに判別精度を高めるために、継続して研究を行っていく必要がある。これまでの研究成果について、日本動物行動学会、海洋音響学会「声を利用した海洋生物の音響観測部会」において発表を行った。また、これらの成果はFisheries Science誌、Marine Mammal Science誌へ投稿準備中である。