著者
吉田 忠雄 加藤 正大 大竹 宏直 加藤 健 寺西 正明 片山 直美 中島 務
出版者
Japan Society for Equilibrium Research
雑誌
Equilibrium research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.247-253, 2013-08-01
被引用文献数
3

Development of 3-tesla enhanced magnetic resonance imaging (MRI) provides a tool for the visualization of endolymphatic hydrops (EH). This technique was first developed in animal experiments and adapted in patients with inner ear diseases including Menieres disease (MD). Up to the present, we have demonstrated EH in many MD patients. Recently, we have succeeded in obtaining a 3D-real IR-like image even after intravenous standard-dose gadolinium administration. This type of image was named the HYDROPS (HYbriD of Reversed image Of Positive endolymph Signal and native image of positive perilymph signal). The relationship between unilateral MD and EH has not yet been explored. We studied 76 patients with unilateral MD who were evaluated using MRI. The mean age of the subjects was 53.4 years (range 17 to 80 years). Forty-two were women and 34 were men. Symptomatic and non-symptomatic ears were categorized into 4 groups (healthy, 76; possible, 48; Probable, 13; and definite, 15) based on AAO-HNS definitions. MRI was performed 4 hours after intravenous gadolinium administration. Overall, 152 ears were evaluated. EH in the cochlea was present in 57 of 76 symptomatic ears (73.7%) and 34 of 76 (44.7%) non symptomatic ears. Ears with definite MD had EH more frequently in the cochlea than ears in the healthy ears groups. Furthermore, EH in the vestibule with definite MD was larger than ears in any of the other groups. Our reports showed for the first time that there was Ba relationship between the degrees of EH and the stage of MD. Moreover, in fewer than half of unilateral MD patients EH was seen in the cochlea with non-symptomatic ears. EH in healthy ears may be an indicator of bilateral MD. Using MRI to identify this covert EH in asymptomatic patients may offer the possibility of early detection or prevention of MD.
著者
中島 務 曾根 三千彦 三澤 逸人 服部 琢 鈴木 亨
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

内耳への60mWソフトレーザー照射が耳鳴の抑制に効果があるかどうか二重盲検にて検討した。耳鳴の大きさ、持続時間、音色、苦痛度の変化にレーザー照射群とプラセボ照射群の間に有意差は認られなかった。メニエール病におけるゲンタマイシン鼓室内注入療法は、広く世界的に行われるようになってきている。我々は、、モルモットにおいてゲンタマイシンを蝸牛窓または鼓室内に投与し、基底回転の外リンパにおけるゲンタマイシン濃度を経時的に測定した。外リンパゲンタマイシン濃度は投与後1〜2時間後にピークとなり半減期が2〜数時間と非常に早いものであった。ゲンタマイシン鼓室内注入療法後、麻痺性眼振が出ても、その後前庭代償がおこって日常生活で問題となることは極めで少ない。高齢者では前庭代償がおこりにくいが、若い人でも直線加速刺激を行うと正常者とは異なる垂直方向の眼球の動きを前庭代償が完成されたと思われた時期においても観察された。モルモットにおいてシスプラチン内耳毒性に対するαトコフェロールの抑制効果を確認した。また、プロスタグランディンE1を蝸牛窓に置くと蝸牛血流が上昇した。内耳機能の評価に内耳血流状態の把握は重要である。レーザードップラープローブの先端を蝸牛骨壁にあてると、ラットではレーザードップラー出力の30〜40%が骨の血流成分で蝸牛血流とは別に考えなければならないことがわかった。人工内耳手術では、蝸牛骨壁に穴をあけるので、この穴にプローブをさしこんで血流測定をおこなえば可能な限り純粋に蝸牛血流の測定ができる。現在までのところ人工内耳手術を受けた20人にこのような方法にて蝸牛血流の測定を行ったが6人(特発性感音難聴2人、原因不明の先天聾2人、内耳道狭窄1人、髄膜炎後難聴1人)において顕著な蝸牛血流信号の低下を認めた。
著者
長縄 慎二 中島 務
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.10, pp.783-789, 2010-10-20
被引用文献数
3 1

従来, 難聴やめまいのMRI (Magnetic Resonance Imaging) 診断では聴神経腫瘍の有無や奇形, 椎骨脳底動脈循環不全, 脳腫瘍, 多発性硬化症などが診断される程度であり, 内耳のリンパ環境の変化については, 迷路炎によるリンパ腔の形態的変化や著明な内耳出血がない限り検出が困難であった.<br>近年, 3Tの登場とマルチチャンネルコイルによる信号雑音比の向上, 新しいパルスシークエンスソフトの開発による高速化などのMR技術の顕著な進歩が複合して, 内耳リンパ環境の変化を鋭敏に捉えることのできる3D-FLAIR (fluid attenuated inversion recovery) が臨床応用可能となり, 従来は画像的な異常を検出できなかった突発性難聴やハント症候群, ムンプス難聴などの多くの患者で異常所見を検出し得るようになった. さらに3D-FLAIRを鼓室内ガドリニウム造影剤投与と組み合わせることによって, 内リンパ水腫を検出することが可能となった. しかし, 本法はガドリニウム造影剤の適応外使用であり, 侵襲性もあるので, 次のステップとして静脈注射での内リンパ腔描出を目指した. まず血液迷路関門の透過性が亢進していると思われる突発性難聴症例を対象に通常量静脈投与4時間後には迷路外リンパ腔が増強され, 前庭において内リンパ腔の認識が造影欠損として可能であることを示した. メニエール病については国内で認可されている最大量である2倍量のガドリニウム造影剤の静脈投与4時間後の3D-FLAIRで蝸牛, 前庭において内リンパ水腫を描出することに成功した. しかし, 静脈投与4時間後撮影は鼓室内ガドリニウム造影剤投与に比べて造影剤の外リンパ移行が不十分なことも多く, さらに薄い濃度の造影剤を検出する方法を検討している. このようにさまざまな内耳MRI研究は, 感音性難聴とめまいにおける画像を使った客観的医療の導入のきっかけとなることを目指して進化している.