- 著者
-
荒川 秀俊
渡辺 和夫
土屋 清
藤田 哲也
- 出版者
- 気象庁気象研究所
- 雑誌
- Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.3, pp.163-181, 1972-12-25 (Released:2012-12-11)
- 参考文献数
- 15
亜熱帯性メソサイクロンが各種大気じょう乱の聞で占める位置づけを,その大きさと強さによって求めたところ,温帯性メソサイクロンと弱い熱帯低気圧の中間に在ることがわかった。洋上に発生して,100kmからせいぜい200kmほどの大きさを持った亜熱帯メソサイクロンを既存の地上観測網で捕捉する機会はきわめて少く,したがって,その構造や性質を調べる手掛りはほとんどない。たまたま,1960年9月1日のこと,メソサイクロンが東支那海に発生して北東に進んでいることが名瀬レーダーで発見された。それから一昼夜して,それが九州中部に上陸して消滅するまでの状況をかなり刻明に記録することができたので,このじょう乱が亜熱帯メソサイクロンの良い例では決してないが,このケースを調べることによって,メソサイクロンの一般的構造や性質をうかがうことにした。メソサイクロンは亜熱帯じょう乱としての螺線状降雨帯を持っているが,中緯度に進んで来ると共に,収束の大きな東半円内にある降雨帯で数多くの積乱雲が発生して顕著なメソ高気圧を作ってゆく。ところで,じょう乱の主体であるメソサイクロンのスケールと副産物的なメソ高気圧の大きさと強さが同じオーダーであるために,後者は前者の構造を著しく変えてしまうことが特徴である。また循環が弱いために対称的構造をとることができず,著しい非対称になっていることも特徴といえる。限られた高層観測点と山岳測候所で得られた資料の時系列を使って内挿をほどこし,1kmから14kmまでを1km毎に14層の等高度面天気図を作ることによって3次元解析を試みた。その結果として,亜熱帯メソサイクロンへの空気流入量は,巨大積雲のそれと,発達期にある台風への流入量の丁度中間であることがわかった。