著者
阿保 勝之 樽谷 賢治 原田 和弘 宮原 一隆 中山 哲厳 八木 宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1116-I_1120, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
13
被引用文献数
2

The production of Nori (Pyropia yezoensis) in the Seto Inland Sea is getting lower because of the bleaching of Nori which is caused by nutrient deficiency. In this study, we examined effects of nutrient discharge on Nori aquaculture area in Kako River estuary. In the aquaculture area, nutrient discharge from the river, sewage treatment plant and industrial effluent sustained the Nori production in the winter season. A numerical simulation estimated the behavior of the riverine water and revealed the effects of nutrient discharge on the nutrient environment of the aquaculture area. We also evaluated the effects of moderate operation of the sewage treatment plant on the nutrient environments. We demonstrated the increase of nutrient flux in the aquaculture area and figured out the effective area of the moderate operation.
著者
阿保 勝之 秋山 諭 原田 和弘 中地 良樹 林 浩志 村田 憲一 和西 昭仁 石川 陽子 益井 敏光 西川 智 山田 京平 野田 誠 徳光 俊二
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.101-111, 2018 (Released:2020-02-12)
参考文献数
27
被引用文献数
4

1972~2013年の約40年間にわたる浅海定線調査データをもとに,瀬戸内海における栄養塩濃度などの水質や海洋環境の長期変化傾向を明らかにした.水温は温暖化の影響で上昇しており,特に秋季の上昇率が高かった.透明度は,大阪湾を除く瀬戸内海では1990年代以降,大阪湾では2000年以降に上昇した.瀬戸内海の栄養塩濃度は減少傾向であった.DIN濃度は,大阪湾を除く瀬戸内海では1970年代に急激に低下した後,2000年代以降に再び低下が見られた.大阪湾では,1970年代の低下は見られなかったが,1990年以降に大幅な低下が見られた.DIP 濃度は,1970年代に高かったが1980年頃に低下し,大阪湾を除く瀬戸内海ではその後は横ばい,大阪湾の表層ではその後も低下を続けた.栄養塩濃度の低下については,陸域負荷削減が大きく影響しているが,底泥や外海からの供給量低下や近年の全天日射量の増加も栄養塩濃度の低下に影響を及ぼしていると考えられた.
著者
藤原 建紀 鈴木 健太郎 木村 奈保子 鈴木 元治 中嶋 昌紀 田所 和明 阿保 勝之
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.145-158, 2022 (Released:2022-05-10)
参考文献数
43
被引用文献数
3

海域の全窒素 (TN) ・溶存無機態窒素 (DIN) が大きく低下した大阪湾において, 生態系の栄養段階ごとに生物量の経年変化および季節変動パターンの変化を調べた。調査期間の1990~2019年には, 経年的水温上昇はほとんどなかった。DINの低下に伴って, 一次生産量が減り, クロロフィルで測った植物プランクトン量が減り, これが繊毛虫・カイアシ類などの動物プランクトンの減少, 仔稚魚量の減少へと連動していた。生態系全体としては, 各栄養段階の現存量がほぼ線形的に応答するボトムアップのシステムとなっていた。TNの低下が, DINの枯渇期間を夏のみから, 春から夏に広げ, これによる一次生産量の低下が, 上位栄養段階への窒素フローを減らしたと考えられた。また, 仔稚魚では, 内湾性魚種はどの優占魚種も生物量が大きく減少していた。一方, 広域回遊性のカタクチイワシだけは減らず, この一種のみが優占する状態に変化していた。
著者
原田 和弘 阿保 勝之 川崎 周作 竹迫 史裕 宮原 一隆
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.26-35, 2018

<p>播磨灘北東部沿岸(兵庫県明石市から加古郡播磨町沖)のノリ漁場周辺における溶存態無機窒素(DIN)の動態とノリの品質を調査した.当海域の表層DIN濃度は,港湾内や下水処理水放流口周辺で高い傾向にあった.また,表層DIN濃度の水平分布は海岸線に沿った岸寄りの東西方向に比較的高い濃度域が広がり,沖合域は低かった.塩分やアンモニア態窒素濃度の観測結果から,調査海域東部沿岸に位置するノリ漁場周辺では,下げ潮時(当海域では東流)に港湾からの流出水および下水処理水からの栄養塩供給を受けている可能性が示唆された.また,数値シミュレーション結果でも,放流された下水処理水は下げ潮時に東の方向に流れ,ノリ漁場に到達すると判断された.さらに,同漁場のノリの色調は,港湾流出水や下水処理水等の影響を受けやすい沿岸側で良好であることが判明した.</p>
著者
阿保 勝之 坂見 知子 高柳 和史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1211-1215, 2002-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
8

アサリ増殖場造成地において現地調査に基づく窒素・リンの収支計算を行い, アサリによる造成地の水質浄化機能 (懸濁態N・P除去量) を明らかにした. アサリ生息数の少ない現状では, アサリによる懸濁物除去よりも一次生産の方が大きく, 造成地は懸濁態窒素, リンの供給源となっていた. また, アサリの摂餌, 代謝, 排泄を数値モデル化することにより, アサリの稚貝放流, 増殖, 漁獲に伴う懸濁態窒素の除去量を定量的に評価した. 造成事業計画に従って放流・漁獲を行った場合, 海水中からの窒素除去量は年平均で41mgN/m2/dayあると見積もられた.
著者
阿保 勝之 宮村 和良
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.161-169, 2005-02-25

麻痺性貝毒の原因となる渦鞭毛藻Gymnodinium catenatumの個体群増殖に及ぼす海水流動の影響を解明するため,2002年11月20日から2003年5月6日に大分県の猪串湾において潮流調査とプランクトン調査を行った.冬季には,海面冷却や黒潮系暖水の影響により逆エスチュアリー循環流が発生し,湾内上層では湾外から高温水が流入し,下層では湾内の低温水が湾外方向へ流出する傾向にあった.しかし,猪串湾は南東方向に開口しているため,北よりの季節風が吹いた場合には高温水の流入が妨げられ,残差流が小さくなり湾内の海水は停滞した.また,降雨時には一時的にエスチュアリー循環流が発生し湾内の表層水が流出した.G.catenatumの増殖速度は小さいため,湾内における個体群増殖は海水流動の影響を強く受けた.季節風が強い時には湾内の海水交換は小さくG.catenatumの増殖に適した物理環境であったが,逆エスチュアリー循環やエスチュアリー循環が発達した時にはG.catenatumは湾外へ流出し湾内の細胞数は減少した.また,密度流に伴ってG.catenatumが湾奥に集積され濃密度分布を形成することもあった.