著者
中嶋 秀人 原 誠 石原 正樹 小川 克彦
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.197-204, 2022-08-01 (Released:2022-09-27)
参考文献数
47
被引用文献数
1

COVID-19 罹患後症状・Long COVID は,これまで新型コロナ後遺症,新型コロナウイルス (SARS- CoV-2) 急性感染後症候群とも呼ばれ,COVID-19 罹患後に感染性は消失したにもかかわらず,急性期から持続する症状や経過途中から新たに生じて持続する症状全般を指す.代表的な症状として,①全身症状:疲労感・倦怠感,関節痛,筋肉痛,②呼吸器症状:咳,喀痰,息切れ,胸痛,③精神・神経症状:記憶障害,集中力低下,不眠・睡眠障害,頭痛,抑うつ,筋力低下,④その他:嗅覚障害,味覚障害,脱毛,動悸,下痢,腹痛があげられる.LongCOVID の病態機序として,急性期からの遷延症状,肺機能低下がもたらす全身症状,集中治療後症候群などの複合的要因によるものが考えられ,神経症状としては中枢神経へのウイルス感染による神経障害,全身炎症に伴う中枢神経への炎症の波及,COVID-19 に誘導された自己抗体による神経障害などが想定されるが不明点が多い.Long COVID の症状は多岐であり,多分野におけるアプローチ・フォローアップが必要と考えられる.
著者
望月 秀樹 青木 正志 池中 建介 井上 治久 岩坪 威 宇川 義一 岡澤 均 小野 賢二郎 小野寺 理 北川 一夫 齊藤 祐子 下畑 享良 髙橋 良輔 戸田 達史 中原 仁 松本 理器 水澤 英洋 三井 純 村山 繁雄 勝野 雅央 日本神経学会将来構想委員会 青木 吉嗣 石浦 浩之 和泉 唯信 小池 春樹 島田 斉 髙橋 祐二 徳田 隆彦 中嶋 秀人 波田野 琢 三澤 園子 渡辺 宏久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001695, (Released:2022-05-28)

日本神経学会では,脳神経内科領域の研究・教育・診療,特に研究の方向性や学会としてのあるべき姿について審議し,水澤代表理事が中心となり国などに対して提言を行うために作成委員*が選ばれ,2013年に「脳神経疾患克服に向けた研究推進の提言」が作成された.2014年に将来構想委員会が設立され,これらの事業が継続.今回将来構想委員会で,2020年から2021年の最新の提言が作成された.この各論Iでは,遺伝子研究,トランスレーショナルリサーチ,核酸医薬,iPS研究,介護・福祉など,多様性を増す脳神経内科領域の臨床と研究について,最新トピックスを交えて取り上げる.*提言作成メンバー水澤 英洋,阿部 康二,宇川 義一,梶 龍兒,亀井 聡,神田 隆,吉良 潤一,楠 進,鈴木 則宏,祖父江 元,髙橋 良輔,辻 省次,中島 健二,西澤 正豊,服部 信孝,福山 秀直,峰松 一夫,村山 繁雄,望月 秀樹,山田 正仁(当時所属:国立精神・神経医療研究センター 理事長,岡山大学大学院脳神経内科学講座 教授,福島県立医科大学医学部神経再生医療学講座 教授,徳島大学大学院臨床神経科学分野 教授,日本大学医学部内科学系神経内科学分野 教授,山口大学大学院神経内科学講座 教授,九州大学大学院脳神経病研究施設神経内科 教授,近畿大学医学部神経内科 教授,湘南慶育病院 病院長,名古屋大学大学院 特任教授,京都大学大学院臨床神経学 教授,国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科 教授,東京大学医学部附属病院分子神経学特任教授,国立病院機構松江医療センター 病院長,新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野,新潟大学脳研究所フェロー,同統合脳機能研究センター産学連携コーディネーター(特任教員),順天堂大学医学部神経学講座 教授,京都大学大学院高次脳機能総合研究センター 教授,国立循環器病研究センター病院長,東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者ブレインバンク,大阪大学大学院神経内科学 教授,金沢大学大学院脳老化・神経病態学 教授)
著者
望月 秀樹 青木 正志 池中 建介 井上 治久 岩坪 威 宇川 義一 岡澤 均 小野 賢二郎 小野寺 理 北川 一夫 齊藤 祐子 下畑 享良 髙橋 良輔 戸田 達史 中原 仁 松本 理器 水澤 英洋 三井 純 村山 繁雄 勝野 雅央 日本神経学会将来構想委員会 青木 吉嗣 石浦 浩之 和泉 唯信 小池 春樹 島田 斉 髙橋 祐二 徳田 隆彦 中嶋 秀人 波田野 琢 三澤 園子 渡辺 宏久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001696, (Released:2022-05-28)

日本神経学会では,脳神経内科領域の研究・教育・診療,特に研究の方向性や学会としてのあるべき姿について審議し,水澤代表理事が中心となり国などに対して提言を行うために作成委員*が選ばれ,2013年に「脳神経疾患克服に向けた研究推進の提言」が作成された.2014年に将来構想委員会が設立され,これらの事業が継続.今回将来構想委員会で,2020年から2021年の最新の提言が作成された.この各論IIでは,疾患ごとに脳神経内科領域を分類し,各分野の専門家がわかりやすく解説するとともに,最近のトピックスについて冒頭に取り上げた.*提言作成メンバー水澤 英洋,阿部 康二,宇川 義一,梶 龍兒,亀井 聡,神田 隆,吉良 潤一,楠 進,鈴木 則宏,祖父江 元,髙橋 良輔,辻 省次,中島 健二,西澤 正豊,服部 信孝,福山 秀直,峰松 一夫,村山 繁雄,望月 秀樹,山田 正仁(当時所属:国立精神・神経医療研究センター 理事長,岡山大学大学院脳神経内科学講座 教授,福島県立医科大学医学部神経再生医療学講座 教授,徳島大学大学院臨床神経科学分野 教授,日本大学医学部内科学系神経内科学分野 教授,山口大学大学院神経内科学講座 教授,九州大学大学院脳神経病研究施設神経内科 教授,近畿大学医学部神経内科 教授,湘南慶育病院 病院長,名古屋大学大学院 特任教授,京都大学大学院臨床神経学 教授,国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科 教授,東京大学医学部附属病院分子神経学特任教授,国立病院機構松江医療センター 病院長,新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野,新潟大学脳研究所フェロー,同統合脳機能研究センター産学連携コーディネーター(特任教員),順天堂大学医学部神経学講座 教授,京都大学大学院高次脳機能総合研究センター 教授,国立循環器病研究センター病院長,東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者ブレインバンク,大阪大学大学院神経内科学 教授,金沢大学大学院脳老化・神経病態学 教授)
著者
望月 秀樹 青木 正志 池中 建介 井上 治久 岩坪 威 宇川 義一 岡澤 均 小野 賢二郎 小野寺 理 北川 一夫 齊藤 祐子 下畑 享良 髙橋 良輔 戸田 達史 中原 仁 松本 理器 水澤 英洋 三井 純 村山 繁雄 勝野 雅央 日本神経学会将来構想委員会 青木 吉嗣 石浦 浩之 和泉 唯信 小池 春樹 島田 斉 髙橋 祐二 徳田 隆彦 中嶋 秀人 波田野 琢 三澤 園子 渡辺 宏久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.709-721, 2021 (Released:2021-11-24)

日本神経学会では,脳神経内科領域の研究・教育・診療,特に研究の方向性や学会としてのあるべき姿について審議し,水澤代表理事が中心となり国などに対して提言を行うために作成委員*が選ばれ,2013年に「脳神経疾患克服に向けた研究推進の提言」が作成された.2014年に将来構想委員会が設立され,これらの事業が継続.今回将来構想委員会で,2020年から2021年の最新の提言が作成された.本稿で,総論部分1)脳神経疾患とは,2)脳神経疾患克服研究の現状,3)脳神経疾患克服研究の意義・必要性,4)神経疾患克服に向けた研究推進体制,5)脳・神経・筋疾患克服へのロードマップ,6)提言の要約版を報告する.*提言作成メンバー水澤 英洋,阿部 康二,宇川 義一,梶 龍兒,亀井 聡,神田 隆,吉良 潤一,楠進,鈴木 則宏,祖父江 元,髙橋 良輔,辻 省次,中島 健二,西澤 正豊,服部 信孝,福山 秀直,峰松 一夫,村山 繁雄,望月 秀樹,山田 正仁(当時所属:国立精神・神経医療研究センター 理事長,岡山大学大学院脳神経内科学講座 教授,福島県立医科大学医学部神経再生医療学講座 教授,徳島大学大学院臨床神経科学分野 教授,日本大学医学部内科学系神経内科学分野 教授,山口大学大学院神経内科学講座 教授,九州大学大学院脳神経病研究施設神経内科 教授,近畿大学医学部神経内科 教授,湘南慶育病院 病院長,名古屋大学大学院 特任教授,京都大学大学院臨床神経学 教授,国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科 教授,東京大学医学部附属病院分子神経学特任教授,国立病院機構松江医療センター 病院長,新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野,新潟大学脳研究所フェロー,同統合脳機能研究センター産学連携コーディネーター(特任教員),順天堂大学医学部神経学講座 教授,京都大学大学院高次脳機能総合研究センター 教授,国立循環器病研究センター病院長,東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者ブレインバンク,大阪大学大学院神経内科学 教授,金沢大学大学院脳老化・神経病態学 教授)
著者
中嶋 秀人
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.64, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
20

【要旨】抗 N-methyl-d-aspartate 型グルタミン酸(NMDA)受容体抗体を含む神経細胞表面抗体が関与する自己免疫性脳炎の臨床スペクトラムが解明されるにつれ、自己免疫性脳炎の診断機会が著しく増加している。一般的に自己免疫性脳炎は免疫療法に良好な反応性を示すため、早期の抗体診断にもとづく免疫療法の導入が推奨され、自己免疫性脳炎の診断アルゴリズムも提唱されている。自己免疫性脳炎の診断として、抗 NMDA 受容体抗体など個々の神経細胞表面抗体の同定には cell-based assay(CBA)が有用であるが、自己免疫性脳炎の幅広い臨床スペクトラムにおいては既知の CBA が陰性のことも少なくないため、CBA の相補的検査であるラット脳凍結切片を用いた免疫染色である tissue-based assay(TBA)と初代海馬培養細胞による抗体診断を併用した神経抗体スクリーニングを含む診断アルゴリズムの構築が求められる。実際の臨床の現場においては、TBA を含む抗体スクリーニングで陽性を確認したのち CBA の結果を待たずすみやかに免疫療法を導入する治療アルゴリズムが適用できる可能性がある。近年、スペインにおける単純ヘルペス脳炎コホートを対象とした前向き追跡調査では、単純ヘルペス脳炎後 27%に自己免疫性脳炎が続発し、全例で神経細胞表面抗体が陽性であることが確認されている。単純ヘルペス脳炎を含めた神経感染症と自己免疫性脳炎の双方をあわせて理解したうえで、自己免疫性脳炎の新しい診療アルゴリズムについて考察する。
著者
中嶋 秀人
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.265-267, 2020 (Released:2021-02-05)
参考文献数
15

Encephalitis is associated with high morbidity and mortality, and the neurologic manifestations of this condition include fever, headache, altered mental status, convulsions, and psychiatric symptoms. Early diagnosis of encephalitis is crucial to ensure that the right treatment is given on time. Herpes simplex virus was the most common infectious cause among acute encephalitis, followed by varicella zoster virus. Thus, more than a quarter of patients were potentially treatable with aciclovir. Recent repots have showed the increasing recognition of autoimmune encephalitis, and anti–NMDAR encephalitis was the most common autoimmune condition. In this article, the author describes the characteristic clinical findings, magnetic resonance imaging and spinal fluid analysis of herpes simplex encephalitis, varicella zoster encephalitis, and anti–NMDA receptor encephalitis. Early identification of these patients may allow timely initiation of aciclovir and/or immunomodulatory therapy, and help improve clinical outcomes.
著者
中嶋 秀人
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.495-499, 2018 (Released:2018-04-05)
参考文献数
22

Recent advances in the treatment of neurological infections are described based on reports published in 2016.According to the European cohort study of community–acquired bacterial meningitis, the incidence of adult bacterial meningitis has decreased substantially, which is partly explained by herd protection by pediatric conjugate vaccines. Also, adjunctive dexamethasone treatment was associated with substantially improved outcome. Streptococcus pneumonia is the most common pathogen in adult. Patients with active cancer, however, present with lower CSF leukocyte counts, are more likely to be infected with Listeria monocytogenes, and are at high risk of unfavorable outcome.The plasma–cell–depleting proteasome inhibitor bortezomib could be useful for severe and therapy–refractory cases of anti–NMDAR encephalitis. Bortezomib treatment showed clinical improvement or disease remission in 5 severely affected patients with anti–NMDAR encephalitis with resistance to standard immunosuppressive therapy (corticosteroids, IVIG, plasma exchange, immunoadsorption, rituximab, cyclophosphamide). Autoimmune encephalitis including anti–NMDAR encephalitis often poses a therapeutic challenge. The Korea study reported the efficacy and safety of rituximab treatment as a second–line immunotherapy treatment for autoimmune limbic encephalitis. Functional improvement occurred more frequently in the rituximab group compared to the control group, regardless of autoantibody status. In a prospective observational case control study, treatment effects of plasma exchange and immunoadsorption were evaluated in 21 patients with autoimmune encephalitis associated with NMDAR, LGI1, CASPR2, GAD, mGluR5 and Hu antibodies. Apheresis is well tolerated and effective also as first–line therapy in autoimmune encephalitis, particularly in patients with antibodies targeting neuronal surfaces.Cochrane Database Systemic Review reported the effect of adjuvant corticosteroid therapy in tuberculous meningitis. There is high quality evidence of the benefit of corticosteroids in preventing death in people with tuberculous meningitis. For HIV–positive people with TB meningitis, there is uncertainty about whether or not corticosteroids are beneficial due to the lack of direct evidence in this group. However, corticosteroids may not be associated with increased risk of adverse events. On the other hand, adjuvant corticosteroid therapy did not reduce mortality among patients with HIV–associated cryptococcal meningitis and was associated with more adverse events and disability than was placebo.
著者
中嶋 秀人
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.150-154, 2016 (Released:2016-08-10)
参考文献数
14

Meningitis and encephalitis are severe neurological infections that, if treated late and ineffectively, lead to poor neurological outcome or death. Since treatment is more efficient if given early, these conditions of meningitis and encephalitis should represent as a life–threatening neurological emergency. The management of patients with suspected meningitis or encephalitis begins with empiric treatments until the causal agent of infection is determined. However, the etiologic organism cannot always be distinguished. The goal is to identify those that are treatable, provide supportive care for those that are not, and, when possible, prevent the neurologic complications of these infections. In this article, the author will present some representative cases to describe the characteristic magnetic resonance imaging and spinal fluid analysis of bacterial meningitis, tuberculous meningitis, cryptococcal meningitis, herpes simplex encephalitis, and anti–NMDA receptor encephalitis, and discusses the choice of empirical treatments until the cause of infection is determined. Also the differential diagnosis of meningitis and encephalitis is reviewed, with an emphasis on infectious etiologies.
著者
谷 裕基 中嶋 秀人 山根 一志 大西 宏之 木村 文治 花房 俊昭
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.581-584, 2014-07-01 (Released:2014-08-02)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は66歳の女性である.約1ヵ月の経過で小脳性運動失調と意識障害が増悪し,頭部MRI FLAIR強調画像で脳幹の腫大,および中脳,橋,小脳脚,右小脳半球,右後頭葉に高信号をみとめた.造影MRIでは橋に造影効果を有する多発性の点状病変をみとめ,右後頭葉にも造影病変をみとめた.ステロイド薬により臨床症状と画像所見は急速に改善したが減量後に再燃した.右後頭葉の生検で血管周囲にT細胞を主とする炎症性細胞浸潤をみとめchronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids(CLIPPERS)と診断した.ステロイド薬増量と維持によりこれらの病変は消失し寛解した.MRIで高度脳幹浮腫を呈する疾患としてCLIPPERSを考慮する必要がある.