著者
中村 亮一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

本年度は昨年に引き続き、医療用メカトロニクスシステムを中心とする外科手術支援システムに必要不可欠なシステム構成要素である術中情報獲得(モニタリング)システム及び術中戦略支援(ナビゲーション)システムといったソフトウエアの研究開発を行った。今年度は対象とする術式を腹部領域(主として肝・腎)でのMR誘導下冷凍治療(Cryotherapy)に絞り、この術式を支援するモニタリングおよび及び治療戦略支援システムの構築を行った。今年度のシステム開発においては、システムを構成する大きな要素として次の3つの要素技術を開発した。1.術中に逐次撮像されるMRI画像から術中の氷球形状を三次元的かつ定量的に自動抽出するオートセグメンテーション法2.1.により得られた定量的な氷球形状の経時的変化からオプティカルフロー法を用いて氷球成長速度を推定し、この速度情報を利用して近未来の氷球形状を予測する治療効果予測法3.1.、2.により得られたリアルタイム/将来の氷球情報を基に、治療の進捗・安全性等の評価指標を医師に提示する治療モニタリング法さらにこれらの要素技術を組み合わせ、3次元画像表示ソフトウエアとユーザインタフェースをあわせたMR誘導下冷凍治療支援システムの構築を行った。5例の動物実験と数例の臨床データを用いたオフラインでの実験の結果、本システムで提示されるリアルタイム/近未来の表球データは医師の作成した氷球データとの比較の結果高い精度を持ち、またMR画像取得/計算/描画に要する時間も2秒程度と、精度・リアルタイム性共に高い能力を有し、将来的な臨床への応用が可能であると考えられる。本年度開発したモニタリング・ナビゲーションシステムと、初年度に開発した能動鉗子システムを組み合わせることにより、低侵襲手術を実現する総合的外科支援メカトロニクスシステムの臨床応用が可能となると考えられる。
著者
中村 亮一
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では安全で高度な内視鏡下胎児手術をサポートするシステムとして、低侵襲性の向上と術具機能の確保を両立させるために、腹腔内で先端部が変形することで内視鏡手術用デバイスとしての機能を持つエンドエフェクタ「変形駆動」機能を開発し,挿入時φ8mmから体内でφ14mmに大型化する把持鉗子を開発した.また3次元超音波画像診断装置と手術ナビゲーションを用いて、手術ナビゲーションとしての術野情報・術具位置姿勢提示機能のみならず、子宮内組織と術具との距離(接近度)を術者に提示する「近接覚」提示機能を備えたリアルタイム3D超音波ナビゲーションを開発した.
著者
中村 亮一 村垣 善浩 伊関 洋
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.248-255, 2005-05-01
被引用文献数
2

はじめに -術中情報の可視化- 精密かつ安全な手術を遂行する上で最も重要な事項の一つは, 患者, 病変に関しての質の高い情報をいかに確保するかということである. 「敵を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」とは孫子の言葉であるが, 手術においてもまさしくこの言葉が当てはまる. すなわち, 対象となる病変の情報を多く獲得し, かつ自分が手術という一連のプロトコルの中で現在どういう状態にあり, これから何をするべきかを決断するための情報を獲得することが, よりよい手術結果を獲得するために必要なことである. 肉眼で確認できない患者体内の病変についてのより質の高い情報を獲得するための試みが古くより多くの医学者, 科学者によりなされてきた. Roentgenが1895年11月8日にX線を発見し12月22日に夫人の手指骨の透過写真を撮影したのが, 非侵襲的な(切開等の直接的侵襲を伴わない)体内情報の画像化の最初である. その後, HounsfieldによるX線CTの開発(1968), 和賀井敏夫らによる超音波診断装置の開発, そしてLauterbur, Mansfieldらにより開発された核磁気共鳴画像(MRI)(1971)の登場により, 体内の多品質, 高品質な画像情報の獲得が可能となった.
著者
中村 亮一 平澤 貴宏 田中 昌也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.402, pp.19-24, 1999-10-28
被引用文献数
1

本稿では、近年のデータ系トラヒックの急増に応える、高処理能力のマルチプロセッサATM交換システムの呼処理分散方式について述べる。具体的には、マルチプロセッサ上の「入出分離型呼処理モデル」と「交換OS/上位APL分離型呼処理モデル」の2種類の分散方式について、性能や保守性など様々な面から比較・評価を行う。分散方法の優劣は、適用先のネットワークの特性に依存し、性能や品質に優れている前者は安定期のネットワークに適しており、需用(トラヒック量)の変動やソフトウェア処理量増に耐久性の高い後者は、発展期のネットワークに適している。
著者
石谷 和久 四七 秀貴 中村 亮一 稲守 久由
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1999, no.2, 1999-03-08
被引用文献数
1

多様なマルチメディア通信の需要の増大に対応するために、マルチプロセッサ構成の分散型通信ノードシステムが提案されている。分散型通信ノードシステムでは、プロセッサ間通信方式として分散オブジェクト指向を採用することで、柔軟なソフトウェア配置と容易なプロセッサ追加を実現している。一般に、通信ノードシステムでは、処理の効率化を達成するためにRealtime OSを備えて、呼処理、保守運用処理など様々な要求品質(処理遅延、損失率など)の異なる処理をその優先順位に従って処理している。一方、分散オブジェクト指向では、サーバ側(ターゲット側)の実行環境とクライアント側の実行環境とは、独立に決定されている。本稿では、分散型通信ノードシステムにおいて、Realtime OSの特性を活かして多様な要求品質の異なる処理を、分散環境で実現するプロセッサ間通信方式を提案する。