著者
中村 智幸 片野 修 山本 祥一郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.745-749, 2004-09-15
被引用文献数
3 2

コクチバスとオオクチバスの成長に対する流水と水温の影響を実験的に検討した。給餌下では,両種ともに流水池と止水池との間で成長率に有意差は認められなかった。しかし,オオクチバスに対するコクチバスの成長比は,水温の低い時期に大きかった。無給餌下では,オオクチバスの体重の減少率は止水池に比べて流水池において大きかったが,コクチバスでは両池の間で体重の減少率に有意差は認められなかった。以上の結果は,コクチバスのほうがオオクチバスに比べて,流水と低水温に対する適応能力において優れていることを示している。
著者
中村 智幸 手塚 清 大友 時夫
出版者
[栃木県水産試験場]
雑誌
栃木県水産試験場研究報告 (ISSN:13408585)
巻号頁・発行日
no.42, pp.84-84, 1999-03

那珂川の天然アユ資源を適正に管理するためには,再生産状況を把握する必要がある。そこで,アユ仔魚の流下状況を調査した。仔アユは10月1日から11月26日にかけて採集された。採集数が多かったのは10月下旬から11月上旬にかけてで,この頃が流下の盛期だったと考えられる。総流下数は約2,177万尾と算出された。昨年の推定値は約249万尾であったことから,昨年に比べて今年の流下数は多かったと考えられた。
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎 阿部 信一郎
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.115-119, 2005-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
15
被引用文献数
3

外来魚ブルーギルは日本全国の湖沼や河川に拡まっており, 水産有用魚種や生態系への影響が危惧されている。しかし日本の河川上中流域におけるブルーギルの生態についてはほとんど報告がない。著者らは長野県の千曲川の1支流である浦野川のAa-Bb移行型の河川形態区間で, 2003年の6月及び7月に75個体のブルーギルを電気ショッカーによって採捕した。すべてのブルーギルは岸から1m以内で採捕され, その空胃個体は75個体中8個体にすぎなかった。胃内容物充満度は平均0.63%で, 最大で2.86%に達した。ブルーギルは主にユスリカ科の幼虫を摂食し, そのほかカゲロウ科やトビケラ科の幼虫及び陸生昆虫を捕食していた。ブルーギルの食性は浦野川の在来魚の何種かといちじるしく重複していた。ブルーギルは河川の魚類群集に負の影響を与えると考えられ, 根絶される必要がある。
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎 阿部 信一郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.902-909, 2004-11-15
被引用文献数
4 9

浦野川において魚類の種組成,個体密度,成長率および食物関係について調査した。合計で14種,7,052個体の魚類が採集された。オイカワがもっとも優占し40%以上の個体数を占め,ついでドジョウ,ウグイ,カマツカが多かった。これらの魚種は6月から8月にかけて正の成長を示した。大半の魚はユスリカなどの水生昆虫を捕食していたが,オイカワだけは底生藻類を主食としていた。浦野川の調査区においてはナマズなどの魚食性魚類がほとんど生息しておらず,その生態的地位が空白となっている。したがって,オオクチバスなどの外来魚食魚の侵入が危惧される。
著者
久保田 仁志 中村 智幸 丸山 隆 渡邊 精一 Hitoshi Kubota Tomoyuki Nakamura Takashi Maruyama Seiichi Watanabe 栃木県水産試験場 独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所水面利用部 東京水産大学海洋環境学科 東京水産大学資源育成学科 Tochigi Prefectural Fisheries Experiment Station Freshwater Fisheries and Environment Division National Research Institute of Fisheries Science Department of Ocean Sciences Tokyo University of Fisheries Department of Aquatic Biosciences Tokyo University of Fisheries
出版者
The Japanese Society of Fisheries Science
雑誌
日本水産学会誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.703-709, 2001-07-15
参考文献数
19
被引用文献数
5 12

1993年6月∿1995年11月にかけて, 利根川水系鬼怒川の小支流において, イワナ, ヤマメの生息数, 当歳魚の移動分散, 成長の季節変化を調査した。3ヶ年の総採捕個体のうち, イワナは81.4%(1073個体中873個体), ヤマメは98.8%(244個体中241個体)が当歳魚であった。ヤマメ当歳魚は2月から採捕され, 8月以降はほとんど採捕されなかった。これに対して, イワナ当歳魚は3月から採捕され, 6月以降は1回の調査あたりの採捕数の変化はなかった。一方, 1995年に鬼怒川本流で採捕調査を行ったところ, 採捕された当歳魚のうちイワナが8.0%, ヤマメが92.0%を占め, ヤマメ当歳魚が優占した。以上の結果から, 小支流は特にイワナ当歳魚にとって重要な成育場所であると考えられた。We investigated the seasonal changes in number, dispersal and growth of juvenile Japanese charr Salvelinus leucomaenis and masu salmon Oncorhynchus masou masou in the Karatakisawa Stream, a small tributary of the Kinu River in central Japan. 873 (81.4%) of a total 1073 charr caught by monthly sampling from 1993 to 1995 were age-0,and 241 (98.8%) of a total 244 salmon were age-0. Most of the newly emerged age-0 salmon were caught in the spring of 1995. They shifted downstream, and the number of fish decreased markedly by early summer. The number of the age-0 charr caught at any sampling from any month did not decrease until the end of autumn, although the distribution of the age-0 charr shifted downstream. In contrast, of a total 387 age-0 fish captured by samplings in the adjacent Kinu River in 1995,356 (92.0%) were salmon, whereas only 31 (8.0%) were charr. These results suggest that small tributaries play an important role as nursery habitats, especially for Japanese charr.