著者
山田 正子 竹内 枝穂 中澤 勇二 津田 淑江
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.108-115, 2003-05-20

モツァレラチーズを凍結乾燥および加熱した場合における遊離アミノ酸量と物性の変化について検索を行った。その結果,以下の知見が得られた。1.生チーズを凍結乾燥することにより,アスパラギン酸,セリン,グリシン,アラニン,リジンが有意に増加し、スレオニン、グルタミン酸,グルタミン,バリン,シスチン,イソロイシン,チロシン、フェニルアラニンが減少した。2.凍結乾燥チーズは加熱により,アスパラギン酸,スレオニン,グルタミン酸,バリン,シスチン,イソロイシン,ロイシンが有意に増加し,セリン,グルタミン,ヒスチジンが減少した。3.加熱された生チーズと凍結乾燥チーズとを比較すると,加熱した凍結乾燥チーズのアスパラギン酸,スレオニン,セリン,グルタミン酸,グリシン,アラニン,バリンおよびヒスチジンが有意に多く,減少したのはアルギニンのみであった。これらのことから,生および凍結乾燥チーズいずれも,加熱によるタンパク質分解で遊離アミノ酸が増加していると推定された。4.物性については,高温加熱および加熱後の放置時間が長いほど軟らかさの程度の低下および破談強度の増加がおこり,チーズが硬くなることが明らかとなった。生チーズについては,150〜200℃加熱で加熱後の放置時間が10分以内であれば,加熱前の軟らかさおよび破談強度に近い値を得られることが分かった。また,加熱による影響は凍結乾燥チーズのほうが大きく,150℃の加熱でも軟らかさの減少が起こることが明らかとなった。5.官能検査をおこなった結果,生および凍結乾燥チーズ間に硬さ,弾力性,伸長性,コクおよび総合評価では有意差は認められなかった。生チーズと同様に,凍結乾燥チーズも加熱調理に有用であると考えられた。以上のことから,高温加熱でなければ,生および凍結乾燥チーズが日常の調理においても風味向上のために利用できることが示唆された。
著者
山田 正子 中澤 勇二 細野 明義
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.29-36, 2000
被引用文献数
1

ラットのTrp-P-1排泄に対するカマンベールチーズの抗変異原性について検索を行った。凍結乾燥後粉末にしたカマンベールチーズを10%または30%(w/w)の割合で、基礎飼料に混合し, Trp-P-11 mgを水溶液にして飼料に染み込ませたものをラットに与えた。排出された糞および尿は, ブルーレイヨン吸着法により処理を行い, 得られた抽出液についてHPLCでTrp-P-1の定量および<i>Salmonella typhimurium</i> TA98を指示菌とし変異原性試験を行った。その結果, 尿については, チーズ30%投与で有意にTrp-P-1量の減少が認められた (P<0.05)。糞では, チーズ投与量の増加により, Trp-P-1の検出量が減少した。変異原性試験を行った結果においても, 30%チーズ投与により尿および糞の変異原性が減少し, 特に尿の変異原性は有意に低下した (P<0.05)。これらのことから, カマンベールチーズにはTrp-P-1の変異原性の減弱効果があることが明らかとなり, カマンベールチーズの摂取がヒトの人体に対する新たな保健効果があることが示唆された。
著者
安部 恵 板垣 千尋 鈴木 惇 山田 正子 中澤 勇二 伊藤 晋治
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.183, 2006

目的: ブルーチーズには、複屈折性を示す結晶状の構造が、タンパク質の基質および脂肪球に存在する。カビの増殖した部位と結晶の分布状態および結晶構造に脂肪酸が係わるかを確かめるために、この実験を行った。<BR>材料: ロックフォール、ブルーデコース、スティルトンおよびゴルゴンゾーラを用いた。組織化学的方法によりカビと脂肪酸を染色して、カビと脂肪酸の分布を調べた。結晶の分布を偏光装置を用いて調べた。<BR>結果: これらのブルーチーズでは、多くの脂肪は複屈折性を示す結晶性の構造物が脂肪内にあった。また、タンパク質の基質に複屈折性を示す結晶が存在した。基質に分布する複屈折性を示す小さい結晶は、スティルトンが最も多く、次にロックフォールで、ブルーデコース、ゴルゴンゾーラの順に少なかった。これらのブルーチーズには、大きな結晶の集積および不定形をした結晶の塊が、カビが増殖した部位およびその近くに分布していた。大きな結晶の塊は、ロックフォールで多く、ブルーデコースおよびゴルゴンゾーラで少なく、スティルトンでは非常に少なかった。基質に分布する結晶および脂肪の一部は、脂肪酸の染色に染まり、脂肪酸が存在した。脂肪酸は結晶を構成する一成分となっていた。染色された部位の大きさと染色の強さによる脂肪酸の分布は、スティルトンで最も多く、ロックフォール、ブルーデコース、ゴルゴンゾーラの順に少なかった。
著者
鈴木 惇 安部 恵 板垣 千尋 山田 正子 中澤 勇二 伊藤 晋治
出版者
修紅短期大学
雑誌
修紅短期大学紀要 (ISSN:13498002)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.57-65, 2007

ブルーチーズ(ゴルゴンゾーラ、ブルー・デ・コース、ロックフォールおよびスティルトン)における脂肪酸の分布状態を組織化学的方法により調べた。ブルーチーズにおける結晶性の構造物、脂肪およびタンパク質の基質は、脂肪酸の染色により染また。この知見は、遊離脂肪酸が結晶性の構造物、脂肪およびタンパク質の基質に分布したことを示す。カビが増殖した部位およびその周囲のタンパク質の基質は濃く染まった。カビが増殖した部位から離れるにつれて基質は薄くなり、染色されなくなった。結晶は濃く全体に染まった。表層が染まり内部が染まらない結晶が僅かにあった。全体が染まる脂肪球、表面の一部が染まる脂肪球および染まらない脂肪球が存在した。表面の一部しか染まらない脂肪球および全体が染まらない脂肪球の内部には、偏光装置による複屈折性が観察された。スティルトンは、カビが増殖した部位から広い範囲が染色された。ロックフォールとブルー・デ・コースでは、カビが増殖した部位およびその周囲が染まった。ゴルゴンゾーラでは、カビが増殖した部位が染まったが、染色される範囲は小さかった。スティルトンは、ほかのブルーチーズよりも脂肪酸が広く分布し、ゴルゴンゾーラは、ロックフォールとブルー・デ・コースよりも脂肪酸の分布は少なかった。ロックフォールとブルー・デ・コースの脂肪酸の分布は、同じ程度であった。