著者
中里 英樹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.197-212, 2004-09-30 (Released:2008-12-22)
参考文献数
16

本稿は、宗門改帳を用いた統計分析および社会学におけるリレーショナル・データベース(RDB)利用の可能性を考察するものである。まず、世帯に関する質問紙調査の代表的存在である世帯動態調査を比較対象にして、宗門改帳の形式の特徴について述べる。ついで、様々な形式のデータを結合し、非定型データを定型データに変換する上で有効な道具となりえるRDBの特徴と、歴史研究における導入の事例を紹介する。その上で、宗門改帳の情報から、世帯動態調査と同様に子との同居率やその変化を算出するための変数を作成する方法について、具体的にSQL(RDB操作の標準言語)文を示しながら解説していく。さらにそれを踏まえて、社会学における質問紙の効率的な利用のためのRDBの応用可能性についても提案する。
著者
蘭 信三 中里 英樹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.41-57, 1998-09-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
48

本稿は、計量的歴史社会学の展開を跡づけるとともに、その可能性と今後の課題を論じるものである。アメリカにおける歴史社会学の復興が、没歴史的な一般理論の構築とその検証としての社会調査への反省から生じたこともあり、その主流は、質的データを多面的に検討することによって歴史的な事象を理解する、あるいはその因果律を明らかにしようとするものであった。しかし、一方で計量的歴史社会学と呼べるような試みも、着実に成果をあげてきた。集合行動と社会変動など比較的マクロな対象をあつかう主流派歴史社会学とトピックを共有しつつ、コンピュータを用いた計量的分析を行ったティリーやレイガンがその例であるが、本稿で中心的に見ていくのは、フランス・イギリスの歴史人口学・家族史からくる流れである。その流れは、アメリカにおいて、社会学・人口学における計量的方法の発達を受けて、イベントヒストリー分析などの多変量解析を用いた家族史研究へと展開する。さらに大量データをコンピュータによって処理し計量的に分析する家族史の試みは、日本においても成果を挙げつつあり、その一例は本稿で紹介される。このような計量的歴史社会学は、データの収集と加工およびその処理、分析技法、個人単位の分析と長期変動の分析との両立など、解決すべき課題も多いが、これらの課題に適切に対処できれば、歴史社会学、さらには社会学全般において大きな流れを築いていく可能性を持っているといえよう。
著者
筒井 清忠 中里 英樹 水垣 源太郎 野崎 賢也 沼尻 正之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.18-32, 1996-06-30 (Released:2009-10-13)

近代主義からポスト近代主義へという巨視的な視点から, 戦後日本における歴史社会学的研究の展開を後づける。とくに, 家族・宗教・農村・文化の各ジャンルにおいて歴史社会学が自己の研究の有効性をどのように示してきたのかが主な考察の対象となる。柳田民俗学, 農村の近代化, パーソンズ・ベラーの構造機能主義宗教社会学, アナール派の社会史のインパクト, モラル・エコノミーの視点, 等々多彩なトピックを見せながら歴史社会学が各ジャンルの中で隆盛を見せてきた様子が明らかにされる。現代はまだ発展・拡散の時期であり, 収束的な方向は21世紀に期されているのではという視点が示される。
著者
川端 弘俊 碓井 建夫 丸川 雄浄 原 茂太 中里 英樹 田中 敏宏
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.184-192, 2002-07-31 (Released:2010-05-31)
参考文献数
11
被引用文献数
9 9

ダイオキシン類は有機塩素化合物であることから, 燃焼物中の塩素源およびその形態がダイオキシン類生成濃度に大きく影響する重要な因子になると考えられる。そこで本研究では, 主として高温における燃焼実験および熱力学的平衡計算から, ダイオキシン類生成濃度に及ぼす燃焼過程における有機塩素, 無機塩素などの塩素源およびその塩素形態の影響を実験室規模の燃焼炉を用いて調査した。ダイオキシン類を構成する4元素が存在すると, 800℃という高温燃焼においてもダイオキシン類は生成する。また, 燃焼物中の塩素源および塩素形態が同一である場合, 塩素濃度とダイオキシン類生成濃度はほぼ比例し, 燃焼物質中の塩素源が有機塩素化合物か熱力学的に安定な無機塩素化合物かによりダイオキシン類生成濃度は大きく異なる。さらに, 無機塩素化合物でも, その塩素形態すなわち水和物などの活性なClが存在すると高濃度のダイオキシン類が生成することを, 小麦粉と塩との水和物の燃焼実験により明らかにした。