- 著者
-
中間 玲子
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学年報 (ISSN:04529650)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, pp.79-97, 2017-03-30 (Released:2017-09-29)
- 参考文献数
- 139
- 被引用文献数
-
3
2015年7月から2016年6月までの1年間の間に発表されたパーソナリティに関する研究の概観を通して, わが国におけるパーソナリティに関する研究の動向をとらえ, 今後の研究の在り方の展望を論じた。諸研究は特定の行動との関連における個人差についての研究, 適応に関する研究, パーソナリティの構成要素や概念の再評価に関する研究, パーソナリティの形成や発達に関する研究, の4つの枠組みから整理され, それぞれの動向について, その特徴と課題が論じられた。パーソナリティ研究全体の動向としては, 一対の両極とされがちな事象を対極ではなく独立した次元においてとらえる研究が少なからず見られたこと, 尺度作成が多いこと, 一方で, 尺度の精選や自記式以外の測定法の探究なども見られたということ, 個人の生活世界の要因を組み込んだ形で検討する研究が多くなっているということ, の3点が挙げられた。今後の研究の在り方として, 研究の問題設定におけるレベルの多様化, 文化的要因を組み込んだ研究のさらなる発展, プロジェクト型の研究の増加, の3点が展望された。