著者
大山 牧子 畑野 快
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46092, (Released:2023-04-17)
参考文献数
32

大学生のリフレクションと学習成果との関係は,専門教育課程や体験・実習型科目で主に検討されており,また,リフレクションの測定も精緻になされていなかった.本研究では,リフレクションのプロセスモデルの特徴を整理し,講義・演習科目でも適応可能なリフレクションを測定する尺度を開発した上で,リフレクションと学習成果としての成績,能力の獲得感との関係を検討することを目的とした.大学生942名のデータをもとに因子分析を行った結果,「内容の想起・分析」「活動の想起・分析」「活用」の3次元からなるリフレクション尺度が開発された.さらに,クラスタ分析によって,それら3下位次元から6つのタイプを同定した.積極的にリフレクションを行うタイプの学生が,他のタイプよりも能力の獲得感が高い傾向にあることを示した.
著者
畑野 快 原田 新
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.67-75, 2014 (Released:2016-03-20)
参考文献数
50
被引用文献数
8

本研究の目的は,心理社会的自己同一性が内発的動機づけを媒介して主体的な授業態度に影響を及ぼすモデルを仮説モデルとし,その実証的検討を行うことで,大学生が主体的な学習を効果的に獲得する方策として心理社会的自己同一性,内発的動機づけの果たす役割について示唆を得ることであった。仮説モデルを実証的に検討するために,大学1年生131名,大学2年生264名,3年生279名の合計674名を対象とした質問紙調査を実施した。まず,媒介分析の前提を確認するため,学年ごとに心理社会的自己同一性,内発的動機づけ,主体的な授業態度の相関係数を算出したところ,全ての学年において3変数間に正の関連が見られた。次に,多母集団同時分析によってモデル適合の比較を行ったところ,仮説モデルについて学年を通しての等質性が確認された。最後に,仮説モデルをより正確に検証するため,ブートストラップ法によって内発的動機づけの間接効果を検証したところ,1~3年生全ての学年において内発的動機づけの間接効果の有意性が確認された。これらの結果から,1~3年生全ての学年において仮説モデルが検証され,大学生が主体的な学習を効果的に行う上で心理社会的自己同一性,内発的動機づけが重要な役割を果たす可能性が示された。
著者
大山 牧子 畑野 快
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.217-228, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
31

大学生のリフレクションと学習成果との関係は,専門教育課程や体験・実習型科目で主に検討されており,また,リフレクションの測定も精緻になされていなかった.本研究では,リフレクションのプロセスモデルの特徴を整理し,講義・演習科目でも適応可能なリフレクションを測定する尺度を開発した上で,リフレクションと学習成果としての成績,能力の獲得感との関係を検討することを目的とした.大学生942名のデータをもとに因子分析を行った結果,「内容の想起・分析」「活動の想起・分析」「活用」の3次元からなるリフレクション尺度が開発された.さらに,クラスタ分析によって,それら3下位次元から6つのタイプを同定した.積極的にリフレクションを行うタイプの学生が,他のタイプよりも能力の獲得感が高い傾向にあることを示した.
著者
畑野 快
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Suppl., pp.81-84, 2013-12-20 (Released:2016-08-10)
被引用文献数
10

本研究の目的は,内発的動機づけと主体的な学習態度を媒介する変数として自己調整学習方略(Self-Regulated Learning Strategy: SRLS)に着目し,主体的な学習態度に対する内発的動機づけ,SRLSの影響を明らかにし,大学生に主体的な学習態度を獲得させる方策を検討することであった.大学1年生266名を対象とした質問紙調査から,内発的動機づけがSRLSを媒介し,主体的な学習態度に影響を与えるモデルを仮定した上でSRLSの間接効果の検証を行ったところ,SRLSの下位尺度である「認知調整方略」,「動機づけ調整方略」の間接効果が有意であった.以上の結果を受け,大学教員が大学生に主体的な学習態度を身につけさせる方策について内発的動機づけ,SRLSの視点から考察した.
著者
畑野 快 溝上 慎一
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.13-21, 2013-05-20 (Released:2016-08-10)
参考文献数
27
被引用文献数
14

本研究の目的は,大学生の学習を態度と時間の2側面から捉えた上で主体的な授業態度に着目し,その測定尺度(Active Class Attitude scale;ACA尺度)の妥当性の検討を行い,主体的な授業態度と授業内,外学習時間に基づいて学生タイプを作成することで,大学生の学習を量・質の両方の側面からサポートする視点を検討することであった.そのために大学1年生204名を対象とした質問紙調査を行い,まず主体的な授業態度と学習に対する積極的関与との弁別性を因子分析によって検討したところ,主体的な授業態度と積極的関与の項目が異なった因子に負荷することが確認された.次に主体的な授業態度と授業内学習時間,授業外学習時間,自主学習時間との相関関係を検討したところ,主体的な授業態度は全ての学習時間と有意な正の関連を示すことが確認された.最後にクラスタ分析によって主体的な授業態度と授業内,外学習時間に基づく学生タイプを作成したところ,5つの学生タイプが得られた.以上の結果を踏まえ,ACA尺度の弁別的,収束的妥当性及び学生タイプに基づいたサポートの方策について議論を行った.
著者
畑野 快
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.61-72, 2010-12-01

This article examines the impact and effectiveness of Self-Regulated Learning (SRL) on learning research. Firstly, Students Approaches to Learning (SAL) and SRL are reviewed. Secondly, the effectiveness of self-regulated strategy is shown. The following three questions are examined: the content of self-regulated strategy, the validity of SRL theory, and application of SRL to relate to the context and character of the learner. To examine the three questions, it is important to develop a scale to measure self-regulated strategy. Lastly, to apply SRL theory to university education, the following are shown to be important: development of intervention programs, the general principles of teaching learning strategies within a self-regulatory framework, and the training of trainers through learning strategies.
著者
中間 玲子 杉村 和美 畑野 快 溝上 慎一 都筑 学
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.85.13074, (Released:2014-11-11)
参考文献数
34
被引用文献数
3 13

The Dimensions of Identity Development Scale (DIDS) provides a new method of researching identity development based on the dual-process model pertaining to lifespan development. This study developed and evaluated the Japanese version of this scale (DIDS-J). Two surveys of undergraduate and high school students showed that the DIDS-J had good reliability and validity and that it consisted of 25 items with five factors: commitment making, identity with commitment, exploration in breadth, exploration in depth, and ruminative exploration. Through cluster analysis of the DIDS-J, five identity statuses were found that were not clearly distinguished by previous scales: foreclosure, achievement, searching moratorium, diffused diffusion, and carefree diffusion. Research using the DIDS-J has two advantages: it enables us to examine the process of identity development among adolescents with a wider age range, and to compare results cross-culturally in future research. The trial investigations compared student scores with those from previous research in Western cultures, demonstrating that DIDS-J may lead to further explanations of identity development.
著者
畑野 快 溝上 慎一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.13-21, 2013
被引用文献数
2

本研究の目的は,大学生の学習を態度と時間の2側面から捉えた上で主体的な授業態度に着目し,その測定尺度(Active Class Attitude scale;ACA尺度)の妥当性の検討を行い,主体的な授業態度と授業内,外学習時間に基づいて学生タイプを作成することで,大学生の学習を量・質の両方の側面からサポートする視点を検討することであった.そのために大学1年生204名を対象とした質問紙調査を行い,まず主体的な授業態度と学習に対する積極的関与との弁別性を因子分析によって検討したところ,主体的な授業態度と積極的関与の項目が異なった因子に負荷することが確認された.次に主体的な授業態度と授業内学習時間,授業外学習時間,自主学習時間との相関関係を検討したところ,主体的な授業態度は全ての学習時間と有意な正の関連を示すことが確認された.最後にクラスタ分析によって主体的な授業態度と授業内,外学習時間に基づく学生タイプを作成したところ,5つの学生タイプが得られた.以上の結果を踏まえ,ACA尺度の弁別的,収束的妥当性及び学生タイプに基づいたサポートの方策について議論を行った.
著者
溝上 慎一 中間 玲子 畑野 快
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.148-157, 2016 (Released:2018-06-20)
参考文献数
31
被引用文献数
2

本研究は,青年期のアイデンティティ形成を,自己の主体的・個性的な形成に焦点を当てた自己形成の観点から検討したものである。個別的水準の自己形成活動が,抽象的・一般的水準にある時間的展望(目標指向性・職業キャリア自律性)を媒介して,アイデンティティ形成(EPSI統合・EPSI混乱)に影響を及ぼすという仮説モデルを検討した。予備調査を経て作成された自己形成活動尺度は,本調査における因子分析の結果,4つの因子(興味関心の拡がり・関係性の拡がり・将来の目標達成・将来への焦り)に分かれることが明らかとなった。これらの自己形成活動を用いて仮説モデルを検討したところ,個別的水準にある自己形成活動は直接アイデンティティ形成に影響を及ぼすのではなく,抽象的・一般的水準にある時間的展望を媒介して,アイデンティティ形成に影響を及ぼしていた。自己形成活動からアイデンティティ形成への直接効果は見られたが,小さな値であり,総じて仮説モデルは検証されたと考えられた。
著者
畑野 快
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.27-36, 2011-11-30

The purpose of the present study was to propose“ Class Process Performance (CPP)” and to develop the scale. CPP represents class attitude that university students want to gain through the class.“ Class Process Performance Scale (CPPS)” is used to measure CPP. Through Studies 1, and 2, CPPS was developed. In Study 1, 272 university students completed a questionnaire. The results of α coefficients showed reliability-; correlations between activeness and continuity to learning, future aims, and self-esteem demonstrated the validity of CPPS. In Study 2, 402 university students completed a questionnaire. The results of correlations analysis and analysis of structural equation modeling showed validity of CPPS: the goodness of fit ratings were GFI =.92, AGFI =.89, RMSEA =.06. The results of the present study showed that CPPS was a stable and valid scale.
著者
畑野 快 杉村 和美 中間 玲子 溝上 慎一 都筑 学
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.85.13319, (Released:2014-10-01)
参考文献数
35
被引用文献数
3 7

This study aimed to develop a 12-item version of the Erikson Psychosocial Stage Inventory (the 5th stage) (EPSI (5th)) and examine its reliability and validity. University students (N = 545) participated in this study. Confirmatory factor analyses revealed that a two-factor model provided a better fit than alternative one-factor models. An analysis of Cronbach’s α coefficients and the test-retest method showed acceptable scale reliability. In accordance with our hypotheses, correlation analyses revealed that the EPSI (5th) subscale scores (i.e., synthesis and confusion) were significantly related to measures of self-esteem, life satisfaction with life, and identity confusion. Implications and suggestions for future research are discussed.
著者
中間 玲子 杉村 和美 畑野 快 溝上 慎一 都筑 学
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.549-559, 2014 (Released:2015-02-25)
参考文献数
34
被引用文献数
5 13

The Dimensions of Identity Development Scale (DIDS) provides a new method of researching identity development based on the dual-process model pertaining to lifespan development. This study developed and evaluated the Japanese version of this scale (DIDS-J). Two surveys of undergraduate and high school students showed that the DIDS-J had good reliability and validity and that it consisted of 25 items with five factors: commitment making, identity with commitment, exploration in breadth, exploration in depth, and ruminative exploration. Through cluster analysis of the DIDS-J, five identity statuses were found that were not clearly distinguished by previous scales: foreclosure, achievement, searching moratorium, diffused diffusion, and carefree diffusion. Research using the DIDS-J has two advantages: it enables us to examine the process of identity development among adolescents with a wider age range, and to compare results cross-culturally in future research. The trial investigations compared student scores with those from previous research in Western cultures, demonstrating that DIDS-J may lead to further explanations of identity development.
著者
溝上 慎一 中間 玲子 畑野 快
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.148-157, 2016

<p>本研究は,青年期のアイデンティティ形成を,自己の主体的・個性的な形成に焦点を当てた自己形成の観点から検討したものである。個別的水準の自己形成活動が,抽象的・一般的水準にある時間的展望(目標指向性・職業キャリア自律性)を媒介して,アイデンティティ形成(EPSI統合・EPSI混乱)に影響を及ぼすという仮説モデルを検討した。予備調査を経て作成された自己形成活動尺度は,本調査における因子分析の結果,4つの因子(興味関心の拡がり・関係性の拡がり・将来の目標達成・将来への焦り)に分かれることが明らかとなった。これらの自己形成活動を用いて仮説モデルを検討したところ,個別的水準にある自己形成活動は直接アイデンティティ形成に影響を及ぼすのではなく,抽象的・一般的水準にある時間的展望を媒介して,アイデンティティ形成に影響を及ぼしていた。自己形成活動からアイデンティティ形成への直接効果は見られたが,小さな値であり,総じて仮説モデルは検証されたと考えられた。</p>
著者
畑野 快 原田 新
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.98-106, 2015

本研究の目的は,大学新入生の前期課程に着目し,アイデンティティを中核的同一性,心理社会的自己同一性に分離して捉えた上で,大学生の心理社会的自己同一性と主体的な学習態度の変化の関係を明らかにすることであった。そのために,大学1年生437名(男性221名,女性212名,性別不明4名)を対象に4月と7月の2時点で縦断調査を実施した。まず,中核的同一性,心理社会的自己同一性および主体的な学習態度の可変性について確認するため,2時点における平均値の変化を<i>t</i>検定によって確認したところ,全ての変数の平均値は有意に低下していた。次に,3つの変数の2時点における相関係数を算出したところ,中核的同一性では高い相関係数が得られたことに対して,心理社会的自己同一性,主体的な学習態度の相関係数は中程度であった。さらに,潜在変化モデルによって中核的同一性,心理社会的自己同一性と主体的な学習態度の変化の関係を検討したところ,中核的同一性の変化と主体的な学習態度の変化との間には有意な関連が見られなかったものの,心理社会的自己同一性の変化と主体的な学習態度の変化との間に有意な正の関連が見られた。最後に,心理社会的自己同一性を向上させるための支援の方策について議論を行った。
著者
畑野 快 杉村 和美 中間 玲子 溝上 慎一 都筑 学
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.482-487, 2014
被引用文献数
7

This study aimed to develop a 12-item version of the Erikson Psychosocial Stage Inventory (the 5th stage) (EPSI (5th)) and examine its reliability and validity. University students (<i>N</i> = 545) participated in this study. Confirmatory factor analyses revealed that a two-factor model provided a better fit than alternative one-factor models. An analysis of Cronbach's α coefficients and the test-retest method showed acceptable scale reliability. In accordance with our hypotheses, correlation analyses revealed that the EPSI (5th) subscale scores (i.e., synthesis and confusion) were significantly related to measures of self-esteem, life satisfaction with life, and identity confusion. Implications and suggestions for future research are discussed.
著者
畑野 快 原田 新
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.67-75, 2014

本研究の目的は,心理社会的自己同一性が内発的動機づけを媒介して主体的な授業態度に影響を及ぼすモデルを仮説モデルとし,その実証的検討を行うことで,大学生が主体的な学習を効果的に獲得する方策として心理社会的自己同一性,内発的動機づけの果たす役割について示唆を得ることであった。仮説モデルを実証的に検討するために,大学1年生131名,大学2年生264名,3年生279名の合計674名を対象とした質問紙調査を実施した。まず,媒介分析の前提を確認するため,学年ごとに心理社会的自己同一性,内発的動機づけ,主体的な授業態度の相関係数を算出したところ,全ての学年において3変数間に正の関連が見られた。次に,多母集団同時分析によってモデル適合の比較を行ったところ,仮説モデルについて学年を通しての等質性が確認された。最後に,仮説モデルをより正確に検証するため,ブートストラップ法によって内発的動機づけの間接効果を検証したところ,1~3年生全ての学年において内発的動機づけの間接効果の有意性が確認された。これらの結果から,1~3年生全ての学年において仮説モデルが検証され,大学生が主体的な学習を効果的に行う上で心理社会的自己同一性,内発的動機づけが重要な役割を果たす可能性が示された。