著者
山田 剛史
出版者
日本老年行動科学会
雑誌
高齢者のケアと行動科学 (ISSN:18803474)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.35-55, 2020 (Released:2021-01-01)
被引用文献数
1

単一事例データの評価のため,様々な統計的方法が提案されている。本稿の目的は,単一事例データのために開発された効果量 (Effect Size) を解説することである。さらに,効果量を用いて行われる,複数の単一事例研究の統計的な統合の手法であるメタ分析についても紹介した。マルチレベルモデルを用いた単一事例研究のメタ分析,単一事例データへのベイズモデリングの適用についても述べた。
著者
山田 剛史
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Suppl, pp.219-232, 2015-03-31 (Released:2017-06-28)

本稿の目的は、シングルケース研究(single-case research)のための統計的方法について簡潔なレビューを行うことである。具体的には、(1)シングルケース研究のデータ(以降これをシングルケースデータと呼ぶことにする)の特徴、(2)視覚的判断の精度に関する研究、(3)推測統計的方法(統計的検定)、(4)記述統計的方法(効果量)、(5)統計的方法について学ぶためのリソースの紹介、(6)統計的方法の現状と展望(考察)、からなる。
著者
山森 光陽 岡田 涼 山田 剛史 亘理 陽一 熊井 将太 岡田 謙介 澤田 英輔 石井 英真
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.192-214, 2021-03-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
93

この紙上討論の目的は,メタ分析や,メタ分析で得られた結果を多数収集し,メタ分析と同様の手続きでさらなる統合的見解を導く分析(スーパーシンセシス)といった,研究知見の統計的統合が,学術的な教育研究の持つ現象理解と理論形成,社会的要請への応答という二つの役割に対して果たしうる寄与を議論することである。日本の教育心理学におけるメタ分析の受容の経緯と最近の研究動向の概観を踏まえ,研究知見の統計的統合の普及が,個々の一次研究をサンプルと見なし,これらの積み重ねで結論を導こうとする態度の広まりといった,教育心理学および隣接領域での研究上の意義が示された。また,「エビデンスに基づく教育」を推進する動きとその是非に対する議論の活発化といったことも背景として,効果量のみに注目する単純化された見方がもたらされ,研究知見の拙速な利用が促されるといった社会的・政策的影響が見られることも示された。その上で,これらの意義や問題に対して議論がなされた。研究知見の統計的統合は現象理解と理論形成に一定の貢献をするものの,因果推論を行うためには個票データのメタ分析が必要となり,そのためのオープンサイエンスの推進の必要が指摘された。また,研究知見の統計的統合が,精度が高く確からしい知見をもたらし得るものと見なされ,その結果が平均効果量といった単純な指標で示されることから,教育の実践者が持つ判断の余地の縮小や,教師の仕事の自律性の弱化を招きうるといった危惧が表明された。これらの議論を通じて,研究知見の統計的統合は,現象理解と理論形成に対しては,知見群全体の外的妥当性を高めるための有効な手立てであることが示され,構成概念の再吟味や概念的妥当性の検証にも寄与する可能性があり,教育心理学の理論自体の精度と確からしさを高めることにつながる展開が期待できることが導かれた。社会的要請への応答に対しては「何が効果的か」を知りたい,明解でわかりやすい結論が欲しいという要望には応えていることが示された。一方,この討論で指摘された諸問題は,教育心理学が産出する研究知見そのものが研究分野外に与えるインパクトそのものを問うものであることも示された。最後に,研究知見の統計的統合が,現象理解と理論形成,社会的要請への応答という二つの役割をいっそう果たしていくためには,教育心理学の領域の内外で,合理的な知見を伝達し交わし合うことに対する意識が,これまで以上に求められることを論じた。
著者
山田 剛史
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.44-58, 1999-02-25 (Released:2017-06-28)

単一事例実1験計画(シングルケース研究法)で得られたデータの評価方法として、いくつがの統計的方法が提案されている。ランダマイゼーション検定は、(1) データの系列依存性を問題としない、(2) 時系列分析ほど多くのデータポイン1・を必要としない、(3) 様々なデザインに適した方法が考案されている、といった理由からシングルケースデータの分析方法として近年注目されてきている。本稿では、これまで多くの研究者によって提案されてきた、様々な単一事例実験データ分析のためのランダマイゼーション検定の方法を、(1) 測定時期への処理のランダム振り分け、(2) 介入ポイントのランダム振り分け、(3) フェーズへの処理のランダム振り分け、とランダム振り分けの方法の違いにより大別し、さらにそのカテゴリ下に分類される種々のランダマイゼーション検定の方法について概説するとともに、この検定を実際のデータに適用する際の問題点に関しての検討を行う。
著者
山田 剛史
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.15-35, 2004
被引用文献数
1

The present study investigated about life history in adolescence through making life-history graph from dimension of important event, and impression and describing change of feelings and meanings about them on questionnaire. Furthermore, the purposes of this study were to understand self-development of adolescence in past-present-future and to investigate effects of reflection taken by graph making. Each time dimension were positioned as "meaning's re-construction toward affirmative vector for past life event", "affirmative meanings for present self", and "affirmative meanings for future". As a result, multiple aspects of self-development were shown by description-based qualitative analysis. Also, reflection effects such as "affirmative self-understanding", "eagerness to self-development", and "unfavorable self-understanding" was achieved. Furthermore practical significance was found. Throughout all discussion, possibility of "qualitative questionnaire method" by active usage of the life-history graph as adolescent psychological research method and descriptive data such as meanings and reflection was suggested.
著者
鳥居 朋子 岡田 有司 高橋 哲也 林 透 村上 正行 山田 剛史 串本 剛 大山 牧子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、4年間の研究期間において下記の5点を一体的に進める。(1)教育プログラムの評価と改善の好循環システムの先進事例を検討するため、米国・英国等の大学への訪問調査を行い、優れた循環システムの要件を抽出、(2)日本の大学の全国的な量的調査により、教育プログラムの評価と改善に関わる実態分析や主要な問題を特定、(3)学習成果測定や教育プログラムの評価を推進している日本の大学への訪問調査、(4)日本の大学において教育プログラムの評価と改善の好循環システムを形成する際に考慮すべき点やシステム構築上の要件等の抽出・整理、(5)好循環システムを組織的に構築するための具体的な手法をティップスの形式にまとめ公表。
著者
青木 多寿子 橋ヶ谷 佳正 宮崎 宏志 山田 剛史 新 茂之 川合 紀宗 井邑 智哉
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

よい行為の習慣形成を目指す品格教育(character education)は,小中連携の9年一貫で,学校・家庭・地域で連携して子どもの規範意識を育む生徒指導体制の確立を可能にする。本研究では,米国の品格教育優秀校の視察を通して,品格教育の実践に関わる具体的な手立てだけでなく,単なる徳の提示にとどまらない品格教育の本質について論考した。加えて,小中学校へのアンケート調査で,品格の構成要素を示した。さらに,品格教育は,1,2年くらいで成果が出るような教育でなく,5,6年目かかること,また特に中学生で大きな成果が見られることを示した。
著者
山田 剛史 YAMADA Tsuyoshi
出版者
名古屋大学高等研究教育センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.155-176, 2018-03

本稿の目的は、第1に、大きく変化する時代・社会的状況の中で、アウトカム基盤型カリキュラムの設計や多様な能力育成手段としてのアクティブラーニングの展開、多面的な学習成果の測定・評価(インスティテューショナル・リサーチ)および改善につなげる内部質保証システムの構築など、急速に進められる大学教育の質的転換の流れを概観することである。第2に、学生の学習(学び)と発達(成長)の双方を促し、大学から社会へのトランジション課題を乗り越えるために必要な視点・概念として、「学生エンゲージメント(StudentEngagement)」に着目し、理論的・実証的知見の整理を行うとともに、国内で実施した全国調査(社会人調査、大学生調査)に基づく検討、それらを通じた大学教育への実践的視座を得ることである。検討の結果、(1)アウトカム(成果)を左右する上でも学生エンゲージメント(プロセス)に着目し、それらを高めることが重要であること、(2)学生エンゲージメントを高めるためには、質保証の仕組みやツールを導入したり、教育方法としてアクティブラーニングを行ったりするだけではなく、教職員によるエンゲージメント(深い関与)が必要であることなどが示された。This paper aims first to outline the trend of rapid qualitative transformation in university education, for instance, design of outcome-based curriculum, promotion of active learning as a means to cultivate diverse abilities, and establishment of an internal quality assurance system that measures and assesses multifaceted learning outcomes (institutional research: IR) and leads to their improvement in drastically changing times and social situations. The second aim is to organize theories and empirical knowledge focusing on “student engagement” as a necessary viewpoint and concept to encourage both students’ learning and development so that they overcome transition problems from university to society. Furthermore, the paper aims to gain a practical perspective on university education through investigation based on national surveys (for university students and working adults, respectively) conducted in Japan. The investigation’s result shows: 1) It is important to focus on and enhance “student engagement (process),” which influences their learning outcomes; and 2) in addition to introduction of a quality assurance system, tools, and implementation of active learning as an educational method, faculty members’ engagement is also required to enhance student engagement.
著者
山田 剛史 杉澤 武俊 村井 潤一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Suppl., pp.53-56, 2008-02-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究では,心理統計のテスト項目データベースの開発を試みた.本システムはWebブラウザからアクセスでき,複数のキーによる項目検索が可能である.また,データベースに項目特性値の情報を持たせる場合の問題点として,これらの指標は集団依存性が非常に強い可能性が挙げられる.これを検討するため,複数の大学で共通のテストを実施し比較した.その結果,基礎的な問題については集団によらず類似した値を取るが,発展的な問題については受験者集団によりかなり異なる値となった.このことから,データベースに載せる情報として項目特性値のような量的な情報だけでなく,質的な情報についても検討すべきであることが示唆された.
著者
村井 潤一郎 山田 剛史 杉澤 武俊
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Suppl., pp.9-12, 2009-12-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
3

心理学関連学科において,心理統計教育は重要な意味を持っている.そこで,心理統計教育の現状把握のため,質問紙を用いた全国調査を行った.調査票を全国の担当教員に送付し,授業の担当教員,その授業を受ける学生,双方からデータを収集し分析した.基本統計量に基づき考察した結果,学生が力がつくと思っている授業,教員が実際に行っている授業それぞれの特徴が明らかになった.これらの結果の,心理学以外の統計教育への適用可能性も示唆された.
著者
山田 剛史 森 朋子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-21, 2010
参考文献数
26
被引用文献数
7

本研究では,大学生の汎用的技能獲得における正課と正課外が果たす役割について学生の視点から検討することを目的として,卒業を目前に控えた大学生657名に調査を行った.主な結果は次の通りである.(1)大学生の汎用的技能を捉えるために精選した項目群に関する因子分析の結果,35項目8因子(F1批判的思考・問題解決力,F2社会的関係形成力,F3持続的学習・社会参画力,F4知識の体系的理解力,F5情報リテラシー,F6外国語運用力,F7母国語運用力,F8自己表現力)が抽出された.(2)正課・正課外の差異に関するt検定の結果,正課は正課外に比してF5とF6が,正課外は正課に比してF2,F3,F4,F8が有意に高い値を示した.(3)学部系統別の正課・正課外による差異に関する分散分析の結果,正課と正課外は汎用的技能獲得において異なる役割を果たしていることが示され,目的養成学部やGPプログラム取得による効果が示唆された.
著者
高橋 智子 山田 剛史 小笠原 恵
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.49-60, 2009-05-30
被引用文献数
1

本研究では、過去40年にわたって「特殊教育学研究」に掲載された一事例実験の研究を対象に、各研究で用いられた処遇の効果についての総括的なレビューを行うことを目的とした。第1巻から第43巻より51の論文を抽出し、3種類の効果量(PND,Busk and Serlin(1992)の効果量、Center,Skiba,and Casey(1985-86)の効果量)を用いて、年齢、障碍種、標的行動ごとに研究結果の統合を行った。その結果、年齢、障碍種、標的行動によって効果の大きさが異なる可能性が示された。年齢においては13〜18歳で、障碍種では自閉症カテゴリで、標的行動では対人スキル・机上学習で処遇の効果が全体的に大きいことが示唆された。
著者
中谷 和彦 山田 剛史 柴田 知範
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2022-04-01

ハンチントン病などの神経変性疾患ではゲノム上のCXGリピート配列の異常伸長が発症原因となる。本提案研究では、提案者が創製したミスマッチ塩基対を認識する低分子化合物が示した、異常伸長したリピート配列への結合と、in vivo での短縮効果から見出した2つの核心的学術的問い、「CAGリピートDNAが形成するCAG/CAG部位に分子NAが結合することにより、どのような生体反応が誘起されたのか?」と「分子NAとNCDはなぜ、そしてどのように2:1複合体を形成するのか?」について、統合的な理解の獲得とより高い短縮効果を示す化合物創製への展開を目指す。