著者
長谷川 範幸 田中 光 柳町 幸 丹藤 雄介 中村 光男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.433-436, 2010 (Released:2010-11-24)
参考文献数
24
被引用文献数
3 3

高齢者は非高齢者に比し低アルブミン血症をはじめとした低栄養状態を高率に認める.低アルブミン血症は,易感染性,難治性感染症,褥瘡の難治化,手術後の縫合不全や創傷治癒の遷延化などを引き起こす.このことからも,高齢者にとって栄養状態を良好に維持することは非常に重要である.われわれは高齢者の低アルブミン血症の原因を明らかにし,その治療法に関する検討を行った.その結果,高齢者では非高齢者に比し消化吸収能は低下しておらず,蛋白質摂取量の低下及び消化吸収率の良好な肉類の摂取量低下という摂取蛋白質の変化を認め,このことが高齢者の低アルブミン血症の主因であると考えられた.高齢者の低アルブミン血症を改善する方法として,プロテインスコアが良好で消化吸収率も高い鶏卵を摂取する方法が有効であった.高齢者診療においては低アルブミン血症を認めた場合,早期から積極的な介入を行うことが望ましい.
著者
清水 亮 丹藤 雄介
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.40-50, 2022-02-01 (Released:2022-03-12)
参考文献数
7

【目的】先行研究において,栄養管理プロセスにおける栄養診断コード(Nutrition Diagnosis Code: NDC)の明確な違いを示すことが,栄養診断実施の促進に必要と考えられた。そこで,妥当性かつ一致性の高いNDC選択のためのフロー図(NDCフロー図)の開発に取り組むこととした。【方法】NDCフロー図は,エネルギーや栄養素摂取量に関係する第1NDC(P1)が導かれる部分と,第1NDCで示される栄養問題の根本的な原因を示す第2NDC(P2)が導かれる部分の二部構成とした。青森県内95病院の管理栄養士・栄養士の長に,提示した模擬患者症例についてNDCフロー図を用いて,栄養診断を実施してもらい,NDCフロー図の妥当性等を評価した。【結果】回答率は43.2%であった。模擬患者Aでは,P1, P2ともに正答率が80%以上,妥当と考える割合は90%を超えていた。他方,模擬患者Bでは,P1で正答率が約40%,妥当と考える割合が約90%,P2ではそれぞれ10%,50%であった。NDCフロー図の難易度は,有用性に比べて低い評価であった。【結論】NDCフロー図は,その有用性は期待されたものの,妥当で一致性の高いNDC選択のためのツールとしては改善が必要であり,特に体重や検査値に関するNDCや行動と生活環境領域の選択に課題があることが示された。
著者
中村 光男 丹藤 雄介
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.11, pp.1347-1354, 2000-11-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
44
被引用文献数
1

非代償期慢性膵炎患者は膵性脂肪便や膵性糖尿病を合併することが多い.前者の診断には糞便の肉眼的観察とともに糞便中脂肪排泄量を簡便に定量できる近赤外分光法が最もすぐれている.また蓄便なしに膵機能不全を診断するためには13C-混合中性脂肪を用いた呼気13CO2脂肪消化吸収試験を行うことがよりよい.膵性脂肪便を確診したら大量の膵消化酵素による補充療法を行うべきである.しかし,膵性脂肪便患者は炭水化物吸収不良も合併していることが多いので,インスリン治療と膵消化酵素治療法を連動して考え,更に栄養状態改善を治療のゴールとすべきである.