著者
釜﨑 大志郎 大田尾 浩 八谷 瑞紀 久保 温子 大川 裕行 藤原 和彦 坂本 飛鳥 下木原 俊 韓 侊熙 丸田 道雄 田平 隆行
出版者
一般社団法人 日本老年療法学会
雑誌
日本老年療法学会誌 (ISSN:2436908X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2023-01-06 (Released:2023-01-07)
参考文献数
31

【目的】本研究の目的は,プレフレイルからロバストへの改善に関連する基本チェックリスト(kihon checklist: KCL)の各領域の特徴を検討することとした。【方法】対象は,半年に1回の体力測定会に参加した地域在住中高年者とした。改訂日本版cardiovascular health study基準(改訂版J-CHS)でプレフレイルの有無を評価し,半年後に同様の評価を行った。ベースラインから半年後にプレフレイルからロバストに改善した群と変化がなかった非改善群の2群に分けた。また,KCLで生活に関連する機能の評価を行った。改善群と非改善群を従属変数,KCLの各領域の点数を独立変数とした2項ロジスティック回帰分析を行った。また,有意な関連を示したKCLの下位項目に回答した割合を比較し,特徴を検討した。【結果】分析対象者は,地域在住中高年者60名(71.9±7.8歳)であった。2項ロジスティック回帰分析の結果,プレフレイルからロバストへの改善の有無にはKCLの社会的孤立(OR: 0.04, 95%CI: 0.00-0.74, p=0.031)が関連することが明らかになった。また,ロバストに改善した群は,社会的孤立の中でも週に1回以上外出している者が有意に多かった。【結論】プレフレイルの地域在住中高年者へ外出を促すことで,ロバストへ改善する可能性が示唆された。
著者
山田 諒大 古後 晴基 八谷 瑞紀 久保 温子 大川 裕行 坂本 飛鳥 満丸 望 藤原 和彦 岸川 由紀 溝田 勝彦 釜﨑 大志郎 溝上 泰弘 鎌田 實 大田尾 浩
出版者
公益社団法人 佐賀県理学療法士会
雑誌
理学療法さが (ISSN:21889325)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.9-15, 2022-02-28 (Released:2022-04-29)
参考文献数
19

[目的]高齢者の転倒不安の有無に関係する身体機能を調査した。[対象]地域在住高齢者84名,75.5(71.0〜79.0)歳であった。[方法]測定項目は,転倒不安の有無,転倒経験,握力合計,上体起こし,膝伸展筋力体重比,長座体前屈,座位ステップ,片足立ち合計,30秒椅子立ち上がりテスト,timed up & go test,最大歩行速度とした。転倒不安あり/なしの違いに関与する身体機能を抽出するために強制投入法による多重ロジスティック回帰分析で検定した。[結果]転倒不安の有無を判別する身体機能は座位ステップ(オッズ比0.95)であり,予測式の判別的中率は84.4%であった。なお,座位ステップのカットオフ値は62.5回(AUC :0.70)であった。[結論]地域在住高齢者の敏捷性を改善することで転倒不安を軽減できる可能性が示された。
著者
久保 温子 村田 伸 平尾 文 小渕 可奈子
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.77-81, 2014-07-01 (Released:2014-09-12)
参考文献数
20

【目的】本研究の目的は、幼児における開眼片足立ちと幼児運動能力調査項目値との関連性から、幼児期の開眼片足立ち測定の妥当性を検討した。【対象】健常年中、年長児173名とし、平均月齢は66.9±6.8カ月であった。【方法】開眼片足立ち時間を測定した後、文部科学省の示した幼児運動能力調査より、25m走、立ち幅跳び、ボール投げ、両足跳び越し、体支持時間を評価した。開眼片足立ち時間と各運動能力測定値との関連をピアソンの相関係数から検討した。【結果】開眼片足立ち時間は、25m走、立ち幅跳び、両足跳び越し、体支持時間で有意な相関が認められた。【結語】幼児の開眼片足立ちは多くの運動機能を反映する評価であり、幼児期における開眼片足立ち測定の妥当性が示唆された。
著者
村田 伸 安彦 鉄平 中野 英樹 満丸 望 久保 温子 八谷 瑞紀 松尾 大 川口 道生 上城 憲司
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.113-117, 2018-10-16 (Released:2018-10-19)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究の目的は,幼児の通常歩行と最速歩行時の歩行パラメータの特徴を明らかにすることである。対象児50名(男児16名,女児34名)の歩行分析を行った結果,全ての歩行パラメータに性差は認めなかった。また,最速歩行時には通常歩行時よりも歩行速度・歩行率・ストライド長・歩幅は有意に高まり,立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間は有意に短縮した。それらの効果量は,距離因子(d=0.74~0.81)よりも歩行率(d=1.84)や時間因子(d=1.51~1.88)が大きかった。さらに,通常歩行速度は歩行率・ストライド長・歩幅・立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間の6項目と有意な相関が認められたが,最速歩行速度と有意な相関が認められたのは歩行率・立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間の4項目であった。これらの結果から,幼児期の歩行を評価し結果を解釈する場合は,性差の影響を考慮する必要のないことが示された。また,歩行能力を向上させるためには,歩幅やストライド長を広げる戦略が有効と考えられた。
著者
八谷 瑞紀 村田 伸 大田尾 浩 久保 温子 松尾 奈々 甲斐 義浩 溝田 勝彦 浅見 豊子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】歩行能力の評価は,5mや10mの短距離における歩行時間を計測することが多い。しかし,元気高齢者では天井効果のために適切に身体機能を把握できない可能性がある。そこで我々は,高齢者のための新たな歩行能力評価法として,多くの施設で確保されている10m歩行路を利用した50m歩行時間を考案した。本研究では,50m歩行時間の有用性について,男性元気高齢者を対象に50m歩行時間中のlap間の所要時間の変化を検討し,つぎに50m歩行時間および5m歩行時間を測定し,下肢筋力,持久力,バランス能力との関連について検討した。【方法】対象は,地域在住の高齢者用フィットネスジムを利用している男性13名(年齢71±3歳)とした。なお,対象者は,自宅生活が自立しており,自家用車などで自ら調査に参加できる者であった。歩行能力の評価は,50m歩行時間のほか5m歩行時間を実施した。身体機能の測定項目は,大腿四頭筋筋力,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),開眼片足立ちテスト,Timed Up & Go Test(TUG)を実施した。50m歩行時間は,10mの歩行路間に配置したコーンを3往復折り返して合計60mを歩き,開始からの50mにかかる所要時間を計測する。準備するものは,10mの歩行路,方向転換時の目印(コーン),ラップ機能付きのストップウォッチである。測定方法は,開始前の姿勢は静止立位とし,コーンの横に立つ。被験者への説明として,検査者の合図で歩き出すこと,目印の外側を3往復することを伝えた。その際の歩行条件は最速歩行とした。10mの歩行路を直進し,コーンの外周で方向転換を行い,再び直進歩行を行う。3往復する間は休憩を入れず連続して歩行を行う。ストップウォッチの操作は,歩行開始から40m(2往復目)までは10mごとにラップ計測を行い,50m終了時にストップを押す。記録する評価項目は,50m歩行の所要時間(秒),およびラップ機能で計測したlap1~lap 5の10mごとの所要時間(秒)である。実施する上での注意点として,下記の3点を説明した。第一に,最初に立つ位置は,コーンの左右どちらでもよいこと。第二に,歩行補助具の使用を認めた。しかし,方向転換時に杖をコーンの内側についたり,触れたりすることがないように配慮した。このほか,歩行補助具を使用しない場合であっても,コーンに触れないように事前に説明を行った。第三に,安全確保を最優先に考慮し転倒などの事故には十分に注意した。統計学的分析方法は,対象者の50m歩行時間の方向転換を含まないlap1を除く,lap2からlap 5までの各ラップから得られた所要時間を一元配置分散分析にて比較した。また,50m歩行時間および5m歩行時間の測定値と,身体機能の測定値との関連をピアソンの相関係数を用いて検討した。なお,統計解析にはSPSS19.0(IBM社製)を用い,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に基づいて行われた。対象者に研究の趣旨と内容を十分に説明し,同意を得たうえで測定を開始した。また,研究の参加は自由意思であること,参加しない場合に不利益がないことを説明した。本研究は,事前に施設の施設長の承認を得て実施した。【結果】50m歩行時間のlap2からlap5までに得られた所要時間を比較した結果,すべてのラップ間に有意な差は認められなかった(F=0.16,r=0.92)。歩行能力と身体機能との関連をみたところ,50m歩行時間と有意な相関が認められたのは,大腿四頭筋筋力(r=-0.62,p<0.05),CS-30(r=-0.90,p<0.01),開眼片足立ちテスト(r=-0.70,p<0.05),TUG(r=0.89,p<0.01)であった。一方,5m歩行時間と有意な相関が認められたのは,大腿四頭筋筋力(r=-0.57,p<0.05),TUG(r=0.58,p<0.05)であり,CS-30,開眼片足立ちテストとは有意な相関が認められなかった。【考察】本研究の結果から,50m歩行時間のlap2からlap5の所要時間において有意な差が認められなかったことより,男性元気高齢者では最速歩行を50m行っても,lap間による所要時間の落ち込みはないことが確認された。一方,50m歩行時間は,今回測定を行ったすべての身体機能と有意な相関が認められ,5m歩行時間は,大腿四頭筋筋力,TUGと有意な相関が認められた。以上のことから,5m歩行時間は男性元気高齢者の歩行能力を適切に表すことが困難である可能性が示めされた。また,50m歩行時間は,下肢筋力,持久力,バランス能力と関連が認められたことから,男性元気高齢者の歩行能力を適切に表す歩行能力評価法である可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】身体機能の評価は,対象者の現状を正確に表せる指標であることが求められる。50m歩行時間は,高齢者の歩行能力を適切に評価する指標として期待できる。