著者
大住 倫弘 草場 正彦 中野 英樹 森岡 周
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.165-174, 2012-08-10 (Released:2013-02-19)
参考文献数
29

Habituation to pain has been addressed in many recent studies. It is clear that patients with chronic pain do not become habituated to the pain; however, little is known about habituation to the inner experience of pain. We investigated the brain mechanisms underlying habituation to the inner experience of pain by using event-related potentials (ERPs), which provide superior temporal resolution, and low-resolution brain electromagnetic tomography (LORETA), which enables identification of regions of nervous activity. Fifteen healthy subjects participated in this study. The subjects were shown 4 sets of photographic images, with each set shown 30 times. The images included 15 images of a hand subjected to pain (painful condition). The subjects were instructed to imagine themselves in that condition and to imagine the pain they may experience in such a situation (inner experience of pain). Electroencephalography was continuously performed via 128 scalp electrodes mounted on an electrode cap. ERPs were recorded during the inner experience of pain; we also recorded N110 responses for emotional components and P3 responses for cognitive evaluation. To investigate habituation to the inner experience of pain, the mean amplitudes of P3 and N110 recordings were calculated for the first 2 (early sets) and last 2 (late sets) sets of trials for each painful condition; next, early sets were compared with late sets. We also analyzed the change in nervous activity after habituation to the inner experience of pain by LORETA analysis. The amplitude of central P3 responses was significantly lower for the late image sets than the early image sets of the painful condition. However, the mean amplitude of N110 responses did not significantly change. LORETA analysis of P3 responses showed reduced activity in the left secondary somatosensory area and left posterior insular cortex, indicating that the sensory component of the inner experience of pain was lower in the late sets than in the early sets. During habituation to the inner experience of pain, the P3 response, which is related to cognitive evaluation of this experience, changed, and brain activity, which reveals the sensory component of the inner experience of pain, reduced. Our study suggests that habituation to the inner experience of pain occurs at the point of recognition of the sensory component of pain. We hypothesize that pain recognition necessary for habituation to the inner experience of pain.
著者
澳 昂佑 木村 大輔 松木 明好 井上 純爾 服部 暁穂 中野 英樹 川原 勲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.355-360, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

〔目的〕立位姿勢制御時の感覚統合の異常が改善したことにより,歩行能力が改善した症例を経験したので報告する.〔対象〕対象は脳梗塞発症後1ヵ月経過した70歳代女性とした.本症例は,明らかな麻痺がないにもかかわらず,麻痺側立脚期が短縮し,転倒の危険性を有していた.〔方法〕立位時の各感覚貢献度を算出すると,本症例は感覚情報の重みづけに異常を有していることが明らかとなった.通常の理学療法に加え,セラピストはディジョックボード上で麻痺側片脚立位姿勢をとらせ,足底からの感覚入力を促すトレーニングを行った.介入期間は1ヵ月とした.〔結果〕立位時感覚貢献度指数,歩行左右対称性,10m歩行速度に改善が認められた.〔結語〕今回の再重みづけトレーニングが本症例の立位時の感覚統合に効果があった可能性が示唆された.
著者
兒玉 隆之 中野 英樹 大住 倫弘 森岡 周 大杉 紘徳 安彦 鉄平
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.43-51, 2014-04-20 (Released:2017-06-28)

【目的】振動刺激によって脳内に惹起される運動錯覚が脳機能へ及ぼす影響を,脳波Rolandic alpha rhythm(μ波)を用いたexact Low Resolution Brain Electromagnetic Tomography(eLORETA)解析により検討することを目的とした。【方法】対象は運動障害・感覚障害を有していない健常者20名。方法は安静時,振動刺激時,自動的な筋収縮運動(自動運動)時,振動刺激や運動を伴わない感覚刺激時のそれぞれの条件下にてμ波を計測し,それぞれの脳活動部位および機能的連関をeLORETA解析により比較検討した。【結果】振動刺激時は,安静時および感覚刺激時の条件に比較し感覚運動領野上のμ波が有意に減少し,本領域での半球内および半球間における有意に強い機能的連関を認めた。自動運動時との比較では,感覚運動領域上のμ波,さらに感覚運動領野の機能的連関に差を認めなかった。【結論】振動刺激がもたらす運動錯覚の感覚運動情報処理には,感覚野のみならず,一次運動野を中心とする運動領野の機能的ネットワークが基盤となっていることが示唆された。
著者
村田 伸 甲斐 義浩 安彦 鉄平 中野 英樹 岩瀬 弘明 松尾 大 川口 道生 松本 武士 吉浦 勇次 角 典洋
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.195-198, 2018-01-31 (Released:2018-02-23)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

本研究は,開発した膝関節内反動揺を軽減させる構造の靴(膝内反軽減シューズ)を紹介するとともに,変形性膝関節症患者の歩行に及ぼす影響を検討した。変形性膝関節症患者21名(すべて女性:平均年齢63.4±8.0歳)を対象に,膝内反軽減シューズと一般靴を履いた際の歩行パラメータを比較した。その結果,膝内反軽減シューズを履いて歩くと,足角が有意(p<0.001)に減少し,ストライド長と歩幅は有意(p<0.001)に広がり,歩行速度が有意(p<0.001)に速まった。一方,歩隔,歩行角,立脚時間,両脚支持時間の4項目には有意差は認められなかった。有意差が認められた足角,ストライド長,歩幅,歩行速度の効果量はΔ=-0.34~0.47の範囲にあり,膝内反軽減シューズが変形性膝関節症患者の歩行に及ぼす一定の効果が示唆された。
著者
阪本 昌志 兒玉 隆之 中野 英樹 植田 智裕 森 郁子 谷 都美子 村田 伸
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.279-283, 2019 (Released:2019-08-30)
参考文献数
23

We examined the effects of foot massage on healthy adult females’ mental and physical functions by electroencephalography as an emotional assessment method. We randomized 20 healthy adult females into 2 groups receiving a massage by a therapist (Group A) and mechanical massage using a commercially available massager (Group B), each of which consisted of 10 subjects. After massage, the lower limb volume significantly decreased in both groups, but Group A showed more favorable results related to comfort, pain, and feeling refreshed. Electroencephalography confirmed increased beta waves, indicating enhanced neuronal activity, in the medial prefrontal cortex and anterior cingulate gyrus of Group A after massage. The results suggest that foot massage by a therapist positively influences not only physical functions, but also mental conditions.
著者
村田 伸 中野 英樹 安彦 鉄平 岩瀬 弘明 豊西 孝嘉 松倉 祥子 児島 諒
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.109-113, 2017

<p>本研究は,開発した下肢がむくみ難いパンプス(開発パンプス)を紹介するとともに,そのむくみ抑制効果について検証した。方法は,開発パンプスと一般パンプスを交互に履くクロスオーバーデザインを採用し,かつそれぞれのパンプスが対象者に分からないようブラインド化して効果を検証した。なお,下肢のむくみは下肢容積を水置換法によって計測することで判定した。対象とした女子大学生12名両下肢24肢の登校時と下校時の下肢容積変化量を比較した結果,開発パンプス装着日は-15.4±19.5ml,一般パンプス装着日は41.7±14.0ml であり,有意差(p<0.05)が認められ,開発パンプス装着日の下肢容積の減少が確認された。このことから,開発パンプスの下肢のむくみに対する一定の抑制効果が確認された。</p>
著者
今井 亮太 中野 英樹 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.401-405, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
13
被引用文献数
3

〔目的〕本研究の目的は,物体の視覚的提示に伴う腱振動刺激による運動錯覚時の脳活動を明らかにすることとした.〔対象〕振動刺激によって錯覚を経験した際の錯覚強度が4以上であった11名を対象者とした.〔方法〕以下の3条件にて手関節総指伸筋腱を振動刺激した.条件1:物体提示なし.条件2:手関節を掌屈すれば物体に接触する距離に物体を提示.条件3:手関節を掌屈しても物体に接触しない距離に物体を提示.脳活動は,機能的近赤外分光装置を用いて測定した.〔結果〕条件1と条件3に比べ,条件2において右運動前野,右感覚運動野,右頭頂領域にoxy-Hbの有意な増加が認められた.〔結語〕物体の提示位置が異なることにより,運動錯覚時の脳活動が変化することが示唆された.
著者
葛迫 剛 村田 伸 合田 明生 中野 英樹 白岩 加代子 堀江 淳 野中 紘士
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.122-128, 2023-08-20 (Released:2023-08-20)
参考文献数
30

【目的】本研究は,1年後に骨量が低下した高齢女性における身体機能および生活機能の影響要因を明らかにすることを目的とした。【方法】骨量低下はTスコアが−2.5以下とし,ベースライン時点で骨量が低下していない高齢女性85名を対象とした。1年後に骨量が低下した者を骨量低下群,骨量を維持していた者を対照群として群分けし,ベースライン時点の基本属性,身体機能,基本チェックリストを比較した。【結果】骨量低下の影響要因として,Body Mass Index(以下,BMI)(オッズ比0.761, 95%信頼区間0.612–0.945),基本チェックリストの「運動器の機能」(オッズ比1.995, 95%信頼区間1.020–3.901)が抽出された。【結論】1年後に骨量が低下する高齢者は,ベースライン時点でBMIが低いこと,「運動器の機能」が低下していることに影響を受けることが示唆された。
著者
葛迫 剛 村田 伸 合田 明生 中野 英樹 白岩 加代子 堀江 淳 野中 紘士
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12382, (Released:2023-06-30)
参考文献数
30

【目的】本研究は,1年後に骨量が低下した高齢女性における身体機能および生活機能の影響要因を明らかにすることを目的とした。【方法】骨量低下はTスコアが−2.5以下とし,ベースライン時点で骨量が低下していない高齢女性85名を対象とした。1年後に骨量が低下した者を骨量低下群,骨量を維持していた者を対照群として群分けし,ベースライン時点の基本属性,身体機能,基本チェックリストを比較した。【結果】骨量低下の影響要因として,Body Mass Index(以下,BMI)(オッズ比0.761, 95%信頼区間0.612–0.945),基本チェックリストの「運動器の機能」(オッズ比1.995, 95%信頼区間1.020–3.901)が抽出された。【結論】1年後に骨量が低下する高齢者は,ベースライン時点でBMIが低いこと,「運動器の機能」が低下していることに影響を受けることが示唆された。
著者
村田 伸 安彦 鉄平 中野 英樹 阪本 昌志 鈴木 景太 川口 道生 松尾 大
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.151-156, 2022-02-28 (Released:2022-03-25)
参考文献数
16

本研究の目的は,母趾外反角(hallux valgus;HV 角)軽減シューズが外反母趾女性の歩行に及ぼす効果を検証することである。外反母趾のある女性12名(平均年齢24.8±11.5歳)を対象に,HV 角軽減シューズと外見が同じコントロールシューズを履いた際の歩行パラメータを比較した。その結果,HV 角軽減シューズを履いて歩くと,歩幅が有意(p<0.05)に広がり,両脚支持時間は有意(p<0.05)に短縮して,歩行速度が有意(p <0.05)に速まった。一方,歩隔,足角,歩行角,立脚時間,遊脚時間の5項目には有意差は認められなかった。有意差が認められた歩幅,両脚支持時間,歩行速度の効果量はΔ=|0.46|~|0.60|の範囲にあり,HV 角軽減シューズが外反母趾女性の歩行に及ぼす一定の効果が示唆された。
著者
村田 伸 甲斐 義浩 安彦 鉄平 中野 英樹 松尾 大 川口 道生 松本 武士 吉浦 勇次 角 典洋
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.19-22, 2018-04-30 (Released:2018-08-12)
参考文献数
17

本研究の目的は,変形性膝関節症患者20名(全て女性:64.0±7.0歳)を対象に,通常歩行と最速歩行時の歩行パラメータを比較し,歩行の特徴を明らかにすることである。その結果,最速歩行時には有意(p<0.01)に速度が速まるが,その他ストライド長と歩幅は有意(p<0.01)に広がり,足角と歩行角は有意(p<0.05)に狭まった。また,立脚時間と両脚支持時間が有意(p<0.01)に短縮した。ただし,歩行速度を高めるためのパラメータの効果量を算出すると,ストライド長と歩幅は中等度(ともにΔ=0.69)であったが,立脚時間と両脚支持時間の短縮の効果(Δ=-1.62と-1.14)は大きかった。これらのことから,変形性膝関節症患者はストライド長や歩幅を広げるよりも,立脚時間や両脚支持時間を短縮させて,速く歩こうとすることが示唆された。
著者
村田 伸 合田 明生 中野 英樹 安井 実紅 高屋 真奈 玻名城 愛香 上城 憲司
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.67-71, 2020-07-22 (Released:2020-08-04)
参考文献数
23

本研究の目的は,デイサービスを利用している34名の女性高齢者を対象に,30秒椅子立ち上がりテスト(30-sec Chair Stand test; CS-30)と虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(10-sec Chair Stand test for Frail Elderly; Frail CS-10)を併せて行い,大腿四頭筋筋力とともに各種身体機能評価の測定値との相関分析から,デイサービス事業所で実施しやすい下肢機能評価法を検討することである。相関分析の結果,大腿四頭筋筋力と有意な相関が認められたのは握力のみであったが,CS-30とFrail CS-10はともに握力・最速歩行時間・Timed Up Go Test·Trail making test Part A との間に有意な相関が認められた。さらに,Frail CS-10のみ通常歩行時間とも有意な相関が認められた。これらの結果から,特別な機器を必要とせず,簡便に短時間で実施できるFrail CS-10は,デイサービス利用高齢者の歩行能力や動的バランスを反映する下肢機能評価法であることが示唆された。
著者
井上 純爾 澳 昂佑 森 拓也 田中 貴広 加藤 丈博 中野 英樹 松木 明好 木村 大輔 川原 勲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.265-270, 2019 (Released:2019-04-26)
参考文献数
20

〔目的〕中殿筋の電気力学的遅延(EMD)を改善させる介入が Duchenne徴候に及ぼす効果について検証すること.〔対象〕寛骨臼回転骨切り術後9ヵ月経過した40歳代女性.本症例は患側の股関節外転筋力が徒手筋力検査にて4以上あるにもかかわらず歩行時にDuchenne徴候を呈していた.さらに患側中殿筋のEMDが健側と比較して延長していた.〔介入〕最大等尺性収縮運動を複数回実施させ,介入期間は5日間とした.〔結果〕介入後,患側中殿筋のEMD,立ち上がり速度,中間周波数が改善し,それに伴い歩行時の骨盤傾斜角および体幹傾斜角に改善を認めた.〔結語〕Duchenne徴候を呈する変形性股関節症術後患者に対して,等尺性収縮運動が中殿筋のEMDを改善させ,中殿筋のEMD改善と骨盤傾斜角の減少に関連を認めた.
著者
村田 伸 安彦 鉄平 中野 英樹 満丸 望 久保 温子 八谷 瑞紀 松尾 大 川口 道生 上城 憲司
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.113-117, 2018-10-16 (Released:2018-10-19)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究の目的は,幼児の通常歩行と最速歩行時の歩行パラメータの特徴を明らかにすることである。対象児50名(男児16名,女児34名)の歩行分析を行った結果,全ての歩行パラメータに性差は認めなかった。また,最速歩行時には通常歩行時よりも歩行速度・歩行率・ストライド長・歩幅は有意に高まり,立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間は有意に短縮した。それらの効果量は,距離因子(d=0.74~0.81)よりも歩行率(d=1.84)や時間因子(d=1.51~1.88)が大きかった。さらに,通常歩行速度は歩行率・ストライド長・歩幅・立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間の6項目と有意な相関が認められたが,最速歩行速度と有意な相関が認められたのは歩行率・立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間の4項目であった。これらの結果から,幼児期の歩行を評価し結果を解釈する場合は,性差の影響を考慮する必要のないことが示された。また,歩行能力を向上させるためには,歩幅やストライド長を広げる戦略が有効と考えられた。
著者
今井 亮太 大住 倫弘 平川 善之 中野 英樹 福本 貴彦 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-7, 2015-02-20 (Released:2017-06-09)

【目的】術後急性期の痛みおよび運動に対する不安や破局的思考は,その後の痛みの慢性化や機能障害に負の影響を及ぼす。本研究は,術後急性期からの腱振動刺激による運動錯覚の惹起を起こす臨床介入が痛みの感覚的および情動的側面,ならびに関節可動域の改善に効果を示すか検証することを目的とした。【方法】対象は,橈骨遠位端骨折術後患者14名とし,腱振動刺激による運動錯覚群(7名)とコントロール群(7名)に割りつけて準ランダム化比較試験を実施した。課題前後に,安静時痛,運動時痛,Pain Catastrophizing Scale, Hospital Anxiety and Depression Scale,関節可動域を評価した。介入期間は,術後翌日より7日間,評価期間は,術後1日目,7日目,1ヵ月後,2ヵ月後とした。【結果】反復測定2元配置分散分析の結果,VAS(安静時痛,運動時痛),関節可動域(掌屈,背屈,回外,回内),PCS(反芻),HADS(不安)の項目で期間要因の主効果および交互作用を認めた(p<0.05)。期間要因では,両群ともに術後1日目と比較し,7日目,1ヵ月後,2ヵ月後に有意差を認めた(p<0.05)。【結論】術後翌日から,腱振動刺激を用いて運動錯覚を惹起させることで,痛みの程度,関節可動域,痛みの情動的側面の改善につながることが明らかにされた。また,痛みの慢性化を防ぐことができる可能性を示唆した。
著者
大住 倫弘 草場 正彦 植田 耕造 中野 英樹 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.599-602, 2012 (Released:2012-12-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1

〔目的〕今回,幻肢痛患者の質的な評価を行い,皮膚受容感覚に関連する幻肢痛であると判断した2症例に対して,早期から触圧覚識別課題を実施した結果を報告する.〔対象〕2症例とも糖尿病性壊疽に陥り下腿切断を施行した後に,皮膚受容感覚に関連する幻肢痛が出現していた.〔方法〕断端部にクッションにより触圧覚が与えられる部位の識別を行った.〔結果〕課題開始当初は2症例とも触圧覚の部位を正確に識別することが困難であったが,課題を行っていくことで識別可能となっていき,幻肢痛も消失した.〔結語〕症例の幻肢痛がどのような病態なのかを質的に評価した上で,介入方法をできるだけ早期に決定していくことの重要性が示唆された.
著者
藤田 浩之 中野 英樹 粕渕 賢志 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.199-204, 2012 (Released:2012-06-13)
参考文献数
27
被引用文献数
2

〔目的〕本研究は足底知覚トレーニングが後期高齢者の立位姿勢バランスの安定化に対しての有効性を検証した.〔対象〕介護老人保健施設に入所する後期高齢者19名とし,トレーニング群9名,コントロール群10名にそれぞれ無作為に振り分けた.〔方法〕トレーニング群には硬度の異なるスポンジマットを弁別させ,コントロール群には一定の硬度のスポンジマットにて立位姿勢を保持させ,10日間実施した.〔結果〕トレーニング群に立位重心動揺値の有意な減少が認められた.〔結語〕これらの結果より生理的に感覚機能が低下する後期高齢者においても,立位姿勢バランスの安定化に対して足底知覚課題が有効的に作用することが示唆された.