著者
上城 憲司 井上 忠俊 村田 伸 小浦 誠吾 納戸 美佐子 中村 貴志
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.376-381, 2018-04-15

Abstract:本研究では地域在住高齢者を対象に,認知課題ゲーム(以下,Pゲーム)の実施方法の違いと認知機能別の特徴について検討した.Pゲームは25マスの図案の上に数字をランダムに記し,1〜25の番号が書かれたペットボトルのキャップをできるだけ早く,対応する図案の番号の上に置いたり取り出したりするゲームである.Pゲームの実施方法の違いについて比較した結果,「取り出す」パターンは,「置く」パターンよりも遂行時間が有意に短かった.また,Trail Making Test(TMT),Pゲームを認知機能別に比較した結果,「置く」パターンはすべての群間に有意差が認められた.一方,「取り出す」パターンは,TMTが健常群と認知機能低下群,認知症疑い群,Pゲームが健常群と認知症疑い群との間に有意差が認められ,認知機能低下に伴い遂行時間が長くなる傾向が示された.本研究の結果から,Pゲームは心理的ストレスが低く,簡易に認知機能の程度を判定する評価ツールとして有用性が高いと推察する.
著者
古賀 菜津季 大田尾 浩 上城 憲司
出版者
公益社団法人 佐賀県理学療法士会
雑誌
理学療法さが (ISSN:21889325)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.23-28, 2017-02-28 (Released:2017-04-12)
参考文献数
9

要旨:[目的]1 分間語想起スクリーニングテストによる認知機能低下を判別するカットオフ値を検討した。併せて語想起された産生語の傾向について調査した。[対象]地域在住の女性高齢者51名(平均年齢:76.7±8.1歳)とした。[方法]測定項目は,1 分間語想起スクリーニングテスト,挙げられた産生語,Mini-mental state examination(MMSE)とした。1 分間の語想起テストは1 分間にできるだけ多く動物名を挙げるように指示した。各測定項目の関連を相関係数にて検討した。また,MMSE から認知機能低下の有無を群分けし,1 分間語想起スクリーニングテストの ROC 曲線を描出しカットオフ値を検討した。[結果]1 分間語想起スクリーニングテストと MMSE とのあいだに(r=0.49,p<0.01)有意な相関が認められた。ROC 曲線のAUC は0.74〜0.99であり,認知機能低下を判別する 1 分間語想起スクリーニングテストのカットオフ値は12/11個(感度100.0%,特異度53.3%,正診率58.8%)が適切であると判断された。産生語は回答率が高い順に,イヌ,ネコ,サル,キリン,トラ,ウシであった。[結論]1 分間語想起スクリーニングテストは認知機能低下の発見に有用であることが示された。また,語想起された産生語はペットや干支の動物名を挙げることが多いことが明らかとなった。
著者
村田 伸 合田 明生 中野 英樹 安井 実紅 高屋 真奈 玻名城 愛香 上城 憲司
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.67-71, 2020-07-22 (Released:2020-08-04)
参考文献数
23

本研究の目的は,デイサービスを利用している34名の女性高齢者を対象に,30秒椅子立ち上がりテスト(30-sec Chair Stand test; CS-30)と虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(10-sec Chair Stand test for Frail Elderly; Frail CS-10)を併せて行い,大腿四頭筋筋力とともに各種身体機能評価の測定値との相関分析から,デイサービス事業所で実施しやすい下肢機能評価法を検討することである。相関分析の結果,大腿四頭筋筋力と有意な相関が認められたのは握力のみであったが,CS-30とFrail CS-10はともに握力・最速歩行時間・Timed Up Go Test·Trail making test Part A との間に有意な相関が認められた。さらに,Frail CS-10のみ通常歩行時間とも有意な相関が認められた。これらの結果から,特別な機器を必要とせず,簡便に短時間で実施できるFrail CS-10は,デイサービス利用高齢者の歩行能力や動的バランスを反映する下肢機能評価法であることが示唆された。
著者
村田 伸 安彦 鉄平 中野 英樹 満丸 望 久保 温子 八谷 瑞紀 松尾 大 川口 道生 上城 憲司
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.113-117, 2018-10-16 (Released:2018-10-19)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究の目的は,幼児の通常歩行と最速歩行時の歩行パラメータの特徴を明らかにすることである。対象児50名(男児16名,女児34名)の歩行分析を行った結果,全ての歩行パラメータに性差は認めなかった。また,最速歩行時には通常歩行時よりも歩行速度・歩行率・ストライド長・歩幅は有意に高まり,立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間は有意に短縮した。それらの効果量は,距離因子(d=0.74~0.81)よりも歩行率(d=1.84)や時間因子(d=1.51~1.88)が大きかった。さらに,通常歩行速度は歩行率・ストライド長・歩幅・立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間の6項目と有意な相関が認められたが,最速歩行速度と有意な相関が認められたのは歩行率・立脚時間・両脚支持時間・遊脚時間の4項目であった。これらの結果から,幼児期の歩行を評価し結果を解釈する場合は,性差の影響を考慮する必要のないことが示された。また,歩行能力を向上させるためには,歩幅やストライド長を広げる戦略が有効と考えられた。
著者
古後 晴基 村田 伸 村田 潤 安部田 章 上城 憲司
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.19-22, 2012 (Released:2013-03-08)
参考文献数
8

本研究は,健常成人女性12名(年齢21.3±0.6歳)を対象に,マッサージによる末梢循環動態に与える影響を検証する目的で,マッサージ前後の足趾容積変動およびサーモグラフィーによる手背部皮膚温度分布の変化を調査した。15分間の安楽座位を対照課題とし,実験課題は15分間のマッサージ(肩部,腰背部,下腿部)を実施した。その結果,マッサージ実施後の足趾容積変化量は,-0.83±0.26ml/100ml/?(平均±標準誤差)であり,有意に減少した(P<0.05)。皮膚温度分布の変化は,安楽座位およびマッサージ有のいずれにおいても上昇傾向を示したが,有意な差は認めなかった。これらのことから,マッサージによる末梢循環動態の受ける影響は,下肢のむくみ軽減や皮膚温度の変化を反映することが示唆された。
著者
上城 憲司 白石 浩 堀川 晃義 納戸 美佐子 谷川 良博 菅沼 一平
出版者
西九州大学
雑誌
西九州リハビリテーション研究 (ISSN:18825761)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.21-27, 2008

本研究の目的は,重度認知症患者デイケアにおける作業療法士協会版「認知症アセスメント」の有用性を検討するものである。認知症高齢者および主家族介護者,各50組を対象に調査を実施した。その結果,「認知症アセスメント」における軽度群,重度群の2群間の比較において,Mini Mental State Examination, Clinical Dementia Rating,見守り度評価に有意差が認められた(p<0.01)。しかしながら,Zarit Caregiver Burden Interview (以下ZBI)やデイケア参加期間に有意差は認められなかった。このことにより,「認知症アセスメント」が,知的・行動面の重症度やデイケア職員の見守りの視点を反映する可能性があることが示唆された。タイプ分類とZBIの関係では,ZBI平均点が「ひっそり,ごそごそタイプ」,「周囲との摩擦タイプ」で高い傾向があり,身体機能の低下や対人トラブルが介護負担感に影響を与えることがわかった。