著者
中村 大輝 原田 勇希 久坂 哲也 雲財 寛 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.3-22, 2021-07-30 (Released:2021-07-30)
参考文献数
90

近年,教育学を含む多くの学問分野において過去の研究知見が再現されないという再現性の危機が問題となっており,その原因の1つとして問題のある研究実践(Questionable research practices, QRPs)の存在が指摘されている。本研究では,国内の理科教育学分野におけるQRPsの実態を明らかにし,再現性問題への具体的な対応策を提案することを目的として,『理科教育学研究』に掲載された過去4年間の論文におけるQRPsの状況を分析した。その結果,8種類のQRPs(妥当性の確認不足,母集団の未定義,出版バイアス,誤った多重比較,検定力不足,HARKing,過度の一般化,記載情報の不足)が行われていることが示唆され,理科教育学分野の実証研究における研究方法の問題点が明らかになった。また,再現性問題の解決に向けて,QRPsを防止するために,本誌に関わる研究者,実践者,編集委員会が取り組むべき対応策として「追試の積極的な実施」「適切な研究方法の普及」「事前登録制度の導入」「オープンサイエンスの実施」の点から4つのアイデアを示した。
著者
久坂 哲也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.397-408, 2016-03-19 (Released:2016-04-23)
参考文献数
59
被引用文献数
3 3

メタ認知は学力や動機づけ, 学習方略などと密接な関係にあるため, 我が国の理科教育学研究においてもメタ認知を対象とした研究が数多く見受けられるようになった。しかし, メタ認知の重要性は多くの研究者が認めるところであるが, メタ認知は高次な認知機能であると同時に抽象的な概念であることから研究の遂行が困難な側面も併せもっている。 そこで, 我が国の理科教育学研究におけるメタ認知研究の動向と課題を明らかにするため, 代表的な学術誌から文献を収集して分析を行った。その結果, 観察や実験活動を中心とした理科学習場面における児童生徒のメタ認知的モニタリングやメタ認知的コントロールといったメタ認知的活動を発問や教材教具の工夫によって直接的に促す授業設計や学習方略に関する研究が盛んに行なわれており, 実践的な知見が蓄積されていることが示された。しかし一方, 科学的思考や科学的探究といった科学的な問題解決能力を育成する際に必要なメタ認知的知識の種類やそれらを獲得させるための教授方略に関する研究といったメタ認知の知識的側面に着目した研究が少ないことが明らかになった。また, メタ認知を変数として扱った場合の測定方法に関しても課題が残されており, 今後の研究が待たれるところである。
著者
原田 勇希 久坂 哲也 草場 実 鈴木 誠
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.627-641, 2020-03-30 (Released:2020-04-15)
参考文献数
48
被引用文献数
1 1

学校教育においてメタ認知能力の育成は重要視されており,理科教育学においても個人のメタ認知能力を測定するための質問紙が開発されてきた。一方,近年の研究によると,質問紙法などの自己報告による測定方法(off-lineメソッド)では,メタ認知の測定は難しいことが指摘されている。本研究ではこれまでに開発された理科教育用メタ認知測定尺度が,真にメタ認知を測定できているかを確かめるため,その収束的妥当性と弁別的妥当性を検討することを目的とした。研究の結果,メタ認知測定尺度と理科の学業成績(全国学力・学習状況調査)との間に実質有意味な正の相関が確認できなかったことから,収束的妥当性は認められないと結論づけた。また自己愛傾向や社会的望ましさ反応バイアスとの確かな正の相関が確認されたことから,弁別的妥当性は認められないと結論づけた。以上の結果をもとに,現在の理科教育学におけるメタ認知の測定方法の限界と今後の方策について考察した。
著者
三宮 真智子 久坂 哲也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.49-52, 2014

メタ認知的知識に働きかけて情報判断力を育てる目的から,本質的には同じテーマの問題を小学生にも馴染みやすいエピソードを用いた異なるカバーストーリーのもとで,複数回呈示して,メタ認知的知識を事例ベースで学ばせる学習教材を開発した.小学校3年生を授業群,独習群,統制群の3群に分け,教育介入を通して教材の効果を検証した結果,プレテストから遅延テストにかけて,授業群,独習群の得点が統制群よりも上昇した.また,自由記述の分析から,学習によって獲得したメタ認知的知識を日常場面でも積極的に活用しようとする態度の形成が示唆されたことから,本学習教材は,情報判断力の育成に有効であったと考察した.
著者
中嶋 彩華 久坂 哲也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-9, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
16
被引用文献数
2

本研究の目的は,小学校教員の理科指導に対する不安,教師効力感,学習動機が教員歴によってどのように推移するのかを明らかにすることである.そのため,現在,学級担任をしている小学校教員を対象に,質問紙を用いた横断的調査を実施した.得られた488名のデータを分析した結果,理科指導に対する不安は全体的に教員歴が増すと低下する傾向があること,下位尺度に着目するとどの教員歴でも理科の専門的知識に対する不安の平均値が最も高いことが示された.また,教師効力感は教員歴4〜6年で一度下降する傾向にあるが,その後,教員歴とともに上昇する傾向が示唆された.さらに,教科指導学習動機の自律的動機である内発的動機は教師効力感に対して正の影響を与えるが,同じ自律的動機である熟達志向は教師効力感に対して負の影響を与えることが示された.
著者
久坂 哲也 及川 宏輝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.67-70, 2019-11-30 (Released:2019-11-27)
参考文献数
9

本研究の目的は,中学生の理科学習に対するメタ認知的判断の正確さについて,自己愛傾向や社会的望ましさによる影響を検討することであった.先行研究を援用して中学生用の尺度を作成したところ社会的望ましさ尺度は信頼性が得られず使用を断念し,自己愛傾向とメタ認知的判断の正確さの関連について分析した.その結果,評価過敏性はメタ認知を過小評価させ,誇大性はメタ認知を過大評価させる可能性が示唆された.
著者
清野 樹恵 中嶋 彩華 久坂 哲也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.117-120, 2017-12-02 (Released:2018-07-01)
参考文献数
8

本研究は,小学校の理科授業場面における児童のメタ認知的方略の使用に着目し,他の学習方略(認知的方略,外的リソース方略)の使用との関係性について検討することを目的とした。公立小学校1 校の第6 学年の児童を対象に質問紙調査を行い,回答は全て5 件法で求めた。分析の対象者は95名であった。分析の結果,モニタリング方略の使用には作業方略,認知的方略,人的リソース方略が,コントロール方略の使用には認知的方略,人的リソース方略が有意な正の影響を与えていること,作業方略のみがコントロール方略の使用に対し有意な影響を与えていないことが示された。
著者
久坂 哲也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.33-36, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
6

本研究は,高校生の理科学習場面における達成目標傾向,
著者
八木 一正 三上 良太 久坂 哲也 Anderson David Nashon Samson
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.91-96, 2006

過去の研究において,子どもたちに正しい科学的概念を形成させるために,素朴概念の修正を考慮した教授方法が採用される必要性や,素朴概念の修正に関して「メタ認知的支援」を行い,「メタ認知的モニタリング」の働きを促す事の有用性が示されている。そこで本研究ではその事を踏まえ,素朴概念の中でも素朴物理学を修正する事を狙いとし,遊園地を活用した科学体験学習の開発に取り組んだ。そして,実際に科学体験学習を開催して参加者を対象にアンケートやテストによる調査を行い,その分析結果から,今回行った科学体験学習は素朴物理学の修正に有効である可能性が示された。