著者
氏家 達夫 二宮 克美 五十嵐 敦 井上 裕光
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、愛知県と福島県の中学生を3年間追跡し、問題行動の消長パターンと親や本人の心理的要因との関連を縦断的に明らかにしようとするもめである。調査は、子どもに対しては、平成14年9月から平成16年9月まで、およそ4ヵ月間隔で、合計7回実施した。親については、平成14年9月、平成15年9月、平成16年9月の3回実施した。調査内容は、子どもの非行や抑うつの問題行動、自己価値感、子どもの気質特徴、対処方略、友人の行動、友人との関係、親行動や親の夫婦関係、学校適応、などであった。各回約1000組を超える親子が参加した。縦断データとして分析可能だったのは、212名であった。明らかになったことは、非行については、非行行動の深まりに特定のパターンが認められること、抑うつと非行の問に関連があること、子ども自身の気質特徴が関係していること、親は必ずしも子どもの非行を把握できていないこと、友人の影響が親の影響より大きいことなどである。抑うつについては、抑うつ症状を呈すると判断される子どもはサンプルの20%程度に上ること、しかも継続的に抑うつ症状を報告する子どもが縦断サンプルの10%程度に上ること、抑うつに対する親の影響は限定的で間接的であること、自己概念や友人との関係が強い影響力を持っていること、などである。これらの分析結果は、ベルギー・ゲントで開催された世界行動発達学会(ISSBD)において3件、アトランタで開催された児童発達学会(SRCD)において2件、サンフランシスコで開催された青年発達学会(SRA)で4件の口頭発表でそれぞれ報告された。国内学会で41件の口頭発表で報告された。また、4本の論文を公刊した。
著者
井上 洋西 谷 典生 飯島 秀弥 五十嵐 敦 岡田 信司 瀧島 任
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.205-213, 1993
被引用文献数
4

選択的TxA_2受容体拮抗薬であるBAY u 3405が, 遅発型喘息反応 (LAR) 時の呼吸抵抗 (respiratory resistanse; Rrs) および気管支肺胞洗浄 (bronchoalveolar lavage; BAL) に与える影響を, Ascaris suum抗原感作モルモットを用いて検討した。呼吸抵抗 (Rrs) は, 30Hzオッシレーション法にて無麻酔下に測定し, 抗原吸入前のRrに対する増加率 (%Rrs) で評価した。抗原吸入2時間後, BAY u 3405 10mg/kgまたは溶媒の0.5%メチルセルロースのみを経口投与した。抗原吸入4および5時間後の%Rrsは, BAY群ではそれぞれ32.5±6.2%, 23.5±5.0%であったのに対し, 対照群ではそれぞれ101.4±27.5%, 77.5±19.9%で4および5時間後ともBAY群が対照群より有意に低値を示した (p<0.05)。抗原吸入4時間後のBALでは対照群とBAY群との間に有意な差は認められなかったが, 吸入6時間後のBAL中総細胞数, 好酸球数およびリンパ球数は, BAY群ではそれぞれ274.9±70.5, 62.5±13.1, 11.3±3.3 (×10^5cells) であったのに対し, 対照群ではそれぞれ491.9±55.1, 198.6±43.9, 32.1±7.3 (×10^5cells) で, いずれもBAY群は対照群より有意に (おのおのp<0.05) 少なかった。抗原吸入4時間後のBAL液中のhistamine (ng/ml), TxB_2 (pg/ml) およびPGD_2 (pg/ml) は増加傾向を示したが, 両群間に有意差はなく, LTC_4は, 両群とも測定限界 (20pg/ml) 以下であった。以上より, 選択的TxA_2受容体拮抗薬であるBAY u 3405は, LAR時の呼吸抵抗の上昇と気道への炎症細胞浸潤を抑制したものと考えられ, TxA_2がLARの発現に重要な役割をしていることが示唆された。