著者
西野 泰代 氏家 達夫 二宮 克美 五十嵐 敦 井上 裕光 山本 ちか
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.17-24, 2009 (Released:2012-02-14)
参考文献数
34
被引用文献数
9 5

This study investigated the trajectories and related factors of deviant behavior among students during their three years of junior high school. Data was analyzed from 344 students who completed a questionnaire survey every September. Nineteen categories of deviant behavior were examined, such as smoking, drinking alcohol, bullying, truancy, violence, and stealing. We determined behavioral trajectories from mild deviant behaviors to more serious ones. The data showed that more than half of the children who engaged in serious deviant behaviors in the third year followed a trajectory from mild deviant behaviors. The three factors of “deviant peers”, “attachment to parents” and “achievement” were related to the trajectory into more serious deviant behaviors.
著者
氏家 達夫 二宮 克美 五十嵐 敦 井上 裕光
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、愛知県と福島県の中学生を3年間追跡し、問題行動の消長パターンと親や本人の心理的要因との関連を縦断的に明らかにしようとするもめである。調査は、子どもに対しては、平成14年9月から平成16年9月まで、およそ4ヵ月間隔で、合計7回実施した。親については、平成14年9月、平成15年9月、平成16年9月の3回実施した。調査内容は、子どもの非行や抑うつの問題行動、自己価値感、子どもの気質特徴、対処方略、友人の行動、友人との関係、親行動や親の夫婦関係、学校適応、などであった。各回約1000組を超える親子が参加した。縦断データとして分析可能だったのは、212名であった。明らかになったことは、非行については、非行行動の深まりに特定のパターンが認められること、抑うつと非行の問に関連があること、子ども自身の気質特徴が関係していること、親は必ずしも子どもの非行を把握できていないこと、友人の影響が親の影響より大きいことなどである。抑うつについては、抑うつ症状を呈すると判断される子どもはサンプルの20%程度に上ること、しかも継続的に抑うつ症状を報告する子どもが縦断サンプルの10%程度に上ること、抑うつに対する親の影響は限定的で間接的であること、自己概念や友人との関係が強い影響力を持っていること、などである。これらの分析結果は、ベルギー・ゲントで開催された世界行動発達学会(ISSBD)において3件、アトランタで開催された児童発達学会(SRCD)において2件、サンフランシスコで開催された青年発達学会(SRA)で4件の口頭発表でそれぞれ報告された。国内学会で41件の口頭発表で報告された。また、4本の論文を公刊した。
著者
氏家 達夫
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.284-292, 1980-12-30

本研究は,子どもがどのようにして誘惑に抵抗できるようになるのかということを問題にした。そして,言語的自己教示方略(VSI)と気紛らわし方略の2つの統制方略によってそれらを説明するために,2つの実験を行った。その結果は次の通りであった。 (1)実験Iでは,誘惑に対する抵抗状況における統制方略の自発的使用の程度が検討された。その結果,(a)視線そらし方略(ATS)が有効である。(b)6歳児はATSを自発的に用いられるが,4歳児では自発的に用いることはできない。(c)VSIは,4,6歳両群で自発的に用いられない。(d)4歳群と6歳群の間の誘惑に対する抵抗能力の差はATSによって説明されると考えられた。 (2)実験IIでは,被験児に,ATS,VSIの2つの統制方略のいずれかを用いるように教示を与えた。その結果,(a)ATS条件は,4歳群に対してのみ効果的であった。6歳群ではATS条件と統制条件に差がなく,しかもそれらは,4歳群のATS条件と差がなかった。(b)一方,VSI条件は6歳群でのみ効果的であった。(c)従って,年齢と条件の間には交互作用が認められる。(d)以上の結果から,4歳児と6歳児の間の誘惑に対する抵抗能力の差と,6歳児と8歳児の間の差には質的な違いがあり,およそ6歳を境にして,誘惑に対する抵抗に必要な統制方略がATSからVSIに入れ替わるものと考えられる。