- 著者
-
中川 秀己
川島 眞
- 出版者
- 日本皮膚科学会西部支部
- 雑誌
- 西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.5, pp.553-565, 2006 (Released:2006-11-09)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
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小児(7~15歳)のアトピー性皮膚炎に対する塩酸フェキソフェナジンの有効性および安全性を検討するため,フマル酸ケトチフェンドライシロップを対照薬とした多施設共同二重盲検無作為化並行群間比較試験を実施した。各群の用法・用量は,塩酸フェキソフェナジン群(以下,Fexo群)では,1回30mg錠(7~11歳),60mg錠(12~15歳)を1日2回,フマル酸ケトチフェンドライシロップ群(以下,Keto群)では,1g1包(ケトチフェン含有量1mg)を1日2回とし,4週間経口投与した。主要評価項目は,かゆみ日誌により評価した投与前後の平均かゆみスコア変化量とした。本治験には190例が登録され,治験薬を1回でも服薬した174例を安全性解析対象集団とし,そのうち治験計画適合集団(PPS)である162例を有効性解析対象集団とした(Fexo群77例,Keto群85例)。その結果,投与前スコアおよび年齢層を共変量とした共分散分析モデルを用いた両群の母平均の差の点推定値は0.050,95%片側信頼限界上限は0.185で,95%片側信頼区間は非劣性限界値0.37を含まなかったことから,Fexo群はKeto群に対して非劣性であることが検証された。投与前後の平均かゆみスコア変化量の平均値および95%信頼区間は,Fexo群-0.50[-0.61,-0.38],Keto群-0.58[-0.70,-0.45]であった。また,副次評価項目であるかゆみスコアの経時推移(週ごとおよび日ごと),皮疹の状態,患児の印象においても,主要評価項目の結果を支持するものであった。安全性について,有害事象発現率は,Fexo群83例中25例(30.1%),Keto群91例中29例(31.9%)で,両群間に有意差は認められなかった(p=0.7452,Fisherの直接確率検定)。主な有害事象は鼻咽頭炎,傾眠であった。副作用発現率においても両群間に有意差は認められず(p=0.6487,Fisherの直接確率検定),鎮静作用に関する副作用は,Fexo群83例中3例(3.6%),Keto群91例中4例(4.4%)と,同様に両群間で有意差は認められなかった(p=1.0000,Fisherの直接確率検定)。鎮静作用に関する有害事象は全て傾眠であった。以上より,塩酸フェキソフェナジンの有効性は,フマル酸ケトチフェンドライシロップに劣ることなくアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を改善し,安全性についても臨床上問題となる有害事象が認められなかったことから,本剤は小児のアトピー性皮膚炎のそう痒に対して有用な薬剤であると考えられた。