著者
大槻 マミ太郎 海野 一郎 可児 毅 松井 慶太 中川 秀己
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.10, pp.2327-2338, 2022-09-20 (Released:2022-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

タクロリムス軟膏(プロトピックⓇ軟膏)0.03%小児用の承認時に承認条件が設定されたことから,使用実態下での安全性と有効性の確認のために長期特定使用成績調査を実施した.安全性では1,221例,有効性では1,210例を解析対象とした.主な副作用は「皮膚感染症」9.9%,「塗布部位の刺激感」3.3%であった.2年6カ月~3年未満での中等度以上改善率は71.5%であった.使用開始から3年後までの安全性及び有効性に関して新たな問題となる事項は認められなかった.皮膚がん及び悪性腫瘍発現状況に関しては,最長10年間,5,815.6人・年観察したところ発現は認められなかった.
著者
大槻 マミ太郎 照井 正 小澤 明 森田 明理 佐野 栄紀 髙橋 英俊 小宮根 真弓 江藤 隆史 鳥居 秀嗣 朝比奈 昭彦 根本 治 中川 秀己
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.8, pp.1561-1572, 2011-07-20 (Released:2014-11-13)

Clinical use of TNFα (tumor necrosis factor α) inhibitors, adalimumab and infliximab, for psoriasis began in January 2010 when an additional indication for this disease was approved. In January 2011, an interleukin-12/23 p40 (IL-12/23 p40) inhibitor, ustekinumab, was newly approved as the third biologic agent with an indication for psoriasis. All of these biologic agents are expected to exhibit excellent efficacy against not only psoriasis but also psoriatic arthritis, and to contribute to the improvement of quality of life (QOL) of psoriatic patients. At the same time, however, they require safety measures to prevent adverse drug reactions such as serious infections. We therefore decided to prepare this Guideline/Safety Manual for the Use of Biologic Agents in Psoriasis (The 2011 Version) by revising that for the use of TNFα Inhibitors prepared by the Biologics Review Committee of the Japanese Dermatological Association in February 2010. In this new unified version for all three biologic agents including ustekinumab, requirements for clinical facilities for the use of biologic agents, contents of safety measures against reactivation of tuberculosis and hepatitis B, and recommendable combination therapies with biologic agents, have been renewed and added. This guideline/safety manual has been prepared to assist dermatology specialists experienced in clinical practice of psoriasis to use biologic agents safely and properly.
著者
中川 秀己 川島 眞
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.553-565, 2006 (Released:2006-11-09)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

小児(7~15歳)のアトピー性皮膚炎に対する塩酸フェキソフェナジンの有効性および安全性を検討するため,フマル酸ケトチフェンドライシロップを対照薬とした多施設共同二重盲検無作為化並行群間比較試験を実施した。各群の用法・用量は,塩酸フェキソフェナジン群(以下,Fexo群)では,1回30mg錠(7~11歳),60mg錠(12~15歳)を1日2回,フマル酸ケトチフェンドライシロップ群(以下,Keto群)では,1g1包(ケトチフェン含有量1mg)を1日2回とし,4週間経口投与した。主要評価項目は,かゆみ日誌により評価した投与前後の平均かゆみスコア変化量とした。本治験には190例が登録され,治験薬を1回でも服薬した174例を安全性解析対象集団とし,そのうち治験計画適合集団(PPS)である162例を有効性解析対象集団とした(Fexo群77例,Keto群85例)。その結果,投与前スコアおよび年齢層を共変量とした共分散分析モデルを用いた両群の母平均の差の点推定値は0.050,95%片側信頼限界上限は0.185で,95%片側信頼区間は非劣性限界値0.37を含まなかったことから,Fexo群はKeto群に対して非劣性であることが検証された。投与前後の平均かゆみスコア変化量の平均値および95%信頼区間は,Fexo群-0.50[-0.61,-0.38],Keto群-0.58[-0.70,-0.45]であった。また,副次評価項目であるかゆみスコアの経時推移(週ごとおよび日ごと),皮疹の状態,患児の印象においても,主要評価項目の結果を支持するものであった。安全性について,有害事象発現率は,Fexo群83例中25例(30.1%),Keto群91例中29例(31.9%)で,両群間に有意差は認められなかった(p=0.7452,Fisherの直接確率検定)。主な有害事象は鼻咽頭炎,傾眠であった。副作用発現率においても両群間に有意差は認められず(p=0.6487,Fisherの直接確率検定),鎮静作用に関する副作用は,Fexo群83例中3例(3.6%),Keto群91例中4例(4.4%)と,同様に両群間で有意差は認められなかった(p=1.0000,Fisherの直接確率検定)。鎮静作用に関する有害事象は全て傾眠であった。以上より,塩酸フェキソフェナジンの有効性は,フマル酸ケトチフェンドライシロップに劣ることなくアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を改善し,安全性についても臨床上問題となる有害事象が認められなかったことから,本剤は小児のアトピー性皮膚炎のそう痒に対して有用な薬剤であると考えられた。
著者
中川 秀己 五十嵐 敦之 江藤 隆史 小澤 明 根本 治
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.10, pp.1449-1459, 2005-09-20 (Released:2014-12-10)
被引用文献数
1

乾癬治療の質的向上を図ることを目的として,前回の調査よりも参加施設を拡大し,乾癬患者の症状および改善度,ストレス,満足度など多面的な項目からなるアンケート調査を医師,患者両方に実施し,685例の回答を得た.現在の治療満足度について「とても満足している」と回答した患者は9.8%,治療効果とストレス改善効果を総合的に判断した総合満足度に「とても満足」,「満足」と回答した患者は19.0%と,前回の調査同様,本邦における乾癬患者の満足度は低いことが確認された.また,ストレスを感じている患者の割合は67.4%であり,原因として「患部を見られること」,「外用薬による治療」があることも明らかにされた.総合満足度へ影響を及ぼす因子では「患者による症状の改善評価」(寄与率52%)が最も高く,患者の視点から症状改善を把握することの重要性が明らかにされた.そして,患者と医師の改善度評価にはギャップが存在することが示唆された.これらの知見から,乾癬治療の質を向上させるためには,患者が皮膚症状の改善度をどのように感じているのか,皮膚症状や外用薬治療が日常生活に支障を来していないか,などを患者に尋ねることで患者の治療満足度を把握し,それに対応した治療を行うことで患者満足度の高い,患者の視点に立った治療が実現できると考えられた.
著者
中村 考伸 出光 俊郎 塚原 理恵子 小山 尚俊 中村 哲史 飯田 絵理 正木 真澄 梅本 尚可 加倉井 真樹 山田 朋子 堂本 隆志 中川 秀己 伊東 慶悟
出版者
The Japanese Skin Cancer Society
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.350-354, 2013

33歳,女性。10年前から左足底に褐色斑があり,受診した。初診時,左足底に径7×5 mm大の黒褐色斑があり,辺縁不整で色調に濃淡がみられた。ダーモスコピーではparallel furrow patternとirregular fibrillar patternを示した。臨床的にはmelanoma <i>in situ</i>を疑う所見であったが,ダーモスコピーでは良性病変を示唆する結果であり,切除生検を施行した。病理組織では表皮内にメラノサイトが孤立性,あるいは胞巣を形成し,一部は付属器浸潤もみられるなどmelanoma <i>in situ</i>の可能性が否定できず,切除瘢痕辺縁から5 mm離して,再切除を施行した。<br> 病理組織像を再検討したところ,Saidaの提唱したpseudomelanomaに一致する良性の色素性母斑の可能性が高いと診断した。類似の診断名としてはmelanocytic acral nevus with intraepidermal ascent of cells(MANIAC)などが報告されている。足の色素性病変におけるダーモスコピー上の良性所見と組織学的にメラノーマに類似する所見の解離についてはさらに周知しておく必要がある。
著者
金 恵英 川島 真 中川 秀己 石橋 康正 吉川 裕之 松倉 俊彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, 1988

尖圭コンジロームの邦人男子18例について,臨床,組織,免疫組織化学ならびに電顕学的検討を行い,さらに,分子生物学的にヒト乳頭腫ウイルスDNA(HPV DNA)の検出,同定を試みた.発症年齢は平均34歳で性的活動の活発な年齢層にみられ,ソープランドであるいは売春婦より感染したと思われる例が14例を数えた.感染機会から発症までの期間は平均6.3ヵ月であった.発生部位は,尿道口,亀頭,冠状溝,包皮,陰茎,肛囲と外陰部のみにみられ,他部位の疣贅を合併した例はみられなかった.臨床型では,角化傾向の乏しい小丘疹型が13例,強い角化を示す角化型が1例で,肛囲の4例はいずれも花野菜状を呈していた.診察し得た10名のsexual partnerのうち5名に尖圭コンジロームを認め,sexual partnerの診察および治療の重要性を痛感した.組織学的には表皮肥厚,乳頭腫症,空胞化細胞の出現を特徴としていたが,空胞化細胞をほとんど認めない例も4例みられた.免疫組織化学的にパピローマウイルス特異抗原の存在を検索したところ,12例(67%)で主として空胞化細胞の核に一致して陽性所見が認められた.電顕学的検討を行った10例全例で36~46nmの電子密度の高いウイルス粒子と考えられる粒子が観察され,その他,径200nm前後の辺縁が星芒状の粒子も認められた.生検材料より全細胞DNAを抽出し,blot hybridization法を用いて,HPV DNAの検出を行ったところ,全例で遊離型のHPV DNAの存在が証明され,そのタイプはHPV6a型7例,HPV6c型1例,HPV11a型7例,HPV6型およびHPV11型のいずれとも異なる型3例と同定され,欧米および邦人女子例とほぼ同様のタイプが検出されるものの,本邦の尖圭コンジロームの一部では,欧米とは異なるHPV型が関与していることが明らかになった.
著者
江畑 俊哉 石氏 陽三 佐伯 秀久 中川 秀己
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.5, pp.1035-1040, 2015-04-20 (Released:2015-04-23)
参考文献数
13

瘙痒性皮膚疾患の治療効果判定においては,検証された基準に基づいてかゆみが評価されるべきである.かゆみの評価尺度としてVisual Analogue Scale(以下VAS)などの信頼性,妥当性が検証されている中,5D itch scale(以下5D)が開発された.5Dはかゆみの持続時間,強さ,経過,悪影響,身体分布を評価して点数化する自記式質問票で,著者らは5Dの日本語版を,順/逆翻訳,プレテストを経て作成した.5D日本語版により,かゆみの複数の側面を簡便に評価し定量化できることが期待される.
著者
林 光葉 小林 光 伊東 慶悟 谷戸 克己 石地 尚興 上出 良一 中川 秀己
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.949-954, 2012-11-01

要約 症例1:72歳,男性.初診の3か月前より前立腺肥大症に対しデュタステリド0.5mg/日の内服を開始した.その2か月後から両側乳頭部に疼痛が出現し,初診時両側乳輪部に有痛性の皮下硬結を認めた.超音波検査で両側乳頭直下に円盤状の低エコー像を認め,女性化乳房を疑った.内服中止し,約1週間で乳頭部の疼痛は軽減した.病理組織像では乳管上皮の増生や断頭分泌を伴うアポクリン化生を認めた.症例2:83歳,男性.初診の3か月前より前立腺肥大症に対しデュタステリド0.5mg/日の内服を開始した.その1か月後から両側乳頭部に硬結が出現し,初診時両側乳輪部に有痛性の皮下硬結を認めた.超音波検査で円盤状の低エコー像を認め,女性化乳房を疑った.内服中止後約1週間で乳頭部の疼痛は軽減したが,皮下硬結は4か月後も残存していた.病理組織像では乳管上皮の増生を認めた.5α還元酵素阻害剤の副作用としての女性化乳房は広く認識されるべきである.