著者
伊藤 光利 (2006) 五百旗頭 真 (2005) VICTOR KUZMINKOV
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

研究の第2部を構成するソ連解体後,エリツィンとプーチン時代の日ロ関係について研究を行った。まず,特徴なのは,ソ連時代と異なって新生ロシアと日本には,民主主義と市場経済の原理を信頼するという共通の価値観ができたことである。ソ連の解体とともに戦後に形成された二極支配の国際体系が崩壊し,日ソ間に存在したイデオロギーと体制上の対立がなくなった。第二に,1992年に登場したビル・クリントン政権はこれまでロシアに対して消極的であったブッシュ政権とは異なったロシアにおける民主化を積極的に指示することにした。また同盟国の日本の対ロシア政策の変化を求めた。第三に,国際情勢が変化するなかで,エリツィン・橋本の間で日ロは幅広い協力関係への転換を試みた。ロシアの政策が欧米との協調だけではなく,プリマコフ外相の下でアジアとの協力をも求める政策へと転換した。これを受けて日本はロシアに対する政経不可分の原則に基づいた「拡大均衡」政策から,更なる幅広い関係の発展を目指す「重層的アプローチ」の政策へと進んだ。日本政府は,アジア太平洋地域における安全保障のために,強いロシアの必要性を認めた上で,ロシアをG8の正式メンバーとして歓迎した。そしてエリツィンと橋本の両首脳の間に信頼関係が築かれ,それを基礎として,両首脳はクラスノヤルスクと川奈の非公式会談において画期的な合意を達成し,日ロ関係を新たな協力関係の段階に乗せた。しかし,二人のリーダシップによって築かれた日ロ関係はリーダの退場によってモメンタムを失い足踏みすることになった。日ロ両国を分断する国際構造は消えたが,両国共通の関心と利益を築くことは容易ではなかった。
著者
五百旗頭 真 久米 郁男 細谷 正宏 増田 弘 五十嵐 武士 天川 晃
出版者
神戸大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究の目的は、占領期日本に関する資料状況・研究状況を全般的に検討し、それにもとづいて、政治・外交をはじめ、経済・社会・文化の諸領域にまたがる占領期日本の変動を総合的に研究するための組織を企画し準備することにあった。その目的は十分に達成されたと考える。たび重なる研究・打合せ会議を、神戸・東京などで行い、活発な意見交換を通して、平成3年度の重点領域研究を申請することを決定し、11の班と70名余の研究者によって構成される研究グル-プを作りあげることができた。諸分野の専門家から成る学際的研究である点は当初の予定通りであるが、研究テ-マと問題関心については、討議を通して大きな拡がりを持つに至った。すなわち、研究対象をたんに「占領期日本」に局限するのではなく、占領期を中心に高度成長が構造化するまでの「戦後日本の形成」を総合的に検討し、戦後日本の全体像を提示することを目的とすることになった。現在の日本が「戦後日本」をあとに、歴史の新しい局面に進もうとしていることは、「戦後日本とは何か」に答えることを急務としているのみならず、資料状況・研究状況も本格的な研究を可能にしていると判断されるからである。国際的に理解可能な総合的研究とするため、多様な分析視角を導入することとした。戦後日本の国際的要因と国内的要因、戦後社会の国際比較、戦前・戦後の連続と非連続、戦後の外交・政治・社会文化の継承と変容などを主要な共通的問題関心とし、占領改革、1950年代の戦後体制の形成を通しての高度成長への帰結を、各レベル・各分野で分析しつつ、全体像の解明を試みる。以上のような重点領域研究「戦後日本の形成の総合的研究」(代表者・渡辺昭夫東京大学教授)を申請するという目的を達成したことを御報告申しあげたい。終りに、この企画につき相談に乗っていただいた故砂子田忠孝氏の御冥福を祈りたい。
著者
植田 宏文 藤原 秀夫 丸茂 俊彦 五百旗頭 真吾 林田 秀樹
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、資産の証券化を通じた市場型間接金融の拡大等に代表される金融システムの変革が、どのような経路を通じて経済の成長に資するのか、さらにその問題点は何かについて理論・実証的に明らかにすることを目的として分析を継続してきた。これらの分析は、現在における経済諸問題の背景を明確化させ、混迷を深める今日において将来のあるべき方向性を示す上でたいへん意義があるものと言える。