- 著者
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久米 郁男
曽我 謙悟
境家 史郎
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
本研究は、江戸時代における大名家の「統治体制」の成立を、大名家が大名個人の「家」から、家臣団がそれぞれの分限にしたがって帰属する「公的」な共同体たる「御家」といたる変化と捉えて、そのプロセスを実証的に解明し、その意義を検討することを目的とした。その際に、アメリカやヨーロッパの政治学会において近年注目される統治体制形成に関する計量的歴史分析の業績のなかでも、Blaydes&Chaneyによる封建革命とヨーロッパ君主の在位期間に関する研究やKokkonenn & Sundellによる長子相続と君主制の存続可能性に関する研究など江戸期への応用可能性の高い論文を検討してその延長上に我々の研究デザインを構築した上で、我々プロジェクトの従属変数である統治体制変容の計量分析の前提となる各大名家・諸藩の統治体制データの構築を行うための手がかりとして、工藤編『江戸時代全大名家事典』などの2次資料を利用してデータベースの作成を進めた。その結果、江戸大名3576名について、家名、藩主名、藩名、石高、出自(父母)、出生地(判明しているもののみ)、生年、没年、家督相続年月、官位、官位叙任年、退任年月、退任理由、幕府要職、要職就任年を項目とするデータベースを完成させた。これと平行して、御家騒動の様々な類型(福田2005)の背後にある因果メカニズムに注目し、先行研究に基づく御家騒動データベースを構築した。しかし、この過程において、御家騒動に至らない(観察されない)統治体制の変化をどのように捉え、その効果を検証するかについて研究上大きな課題があるとの結論に至った。そこで、藩主在任期間、藩主交替の態様などについてより広く計量分析を行い、我々の仮説を一定程度サポートする有意な分析結果を得た。本プロジェクトは終了したが、この分析結果を基に内外の学会での報告に向けてペーパーを作成し成果発表を準備している。