著者
河瀬 理貴 井料 隆雅 浦田 淳司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.184-200, 2021 (Released:2021-07-20)
参考文献数
24

災害の影響を緩和する上で救援物資輸送は重要な課題である.救援物資の迅速かつ的確な輸送のために,我が国ではプッシュ型とプル型の二種類の戦略を計画している.しかし過去の災害では,ラストワンマイル輸送や被災地からの情報伝達でボトルネックが発生し,これらの戦略は期待通り機能しなかった.この経験に基づき,被災地に直接輸送する体制やICTに依存しない情報伝達体制が提案されている.本研究では,提案されたプッシュ型とプル型の戦略を定量的に評価するために,直接輸送が可能な輸送ネットワークや継続的な通信が不可能な情報ネットワークにおける在庫輸送戦略を分析する.その結果,直接輸送が最適であることを証明し,情報伝達が断続的な場合にプル型がプッシュ型よりも性能が低下する可能性とそれを回避する方策を示した.
著者
羽藤 英二 朝倉 康夫 山本 俊行 森川 高行 河野 浩之 倉内 慎也 張 峻屹 高見 淳史 井料 隆雅 佐々木 邦明 井上 亮
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

プローブ技術を援用したデータフュージョン理論による総合的行動調査の高度化に向けて、1)行動文脈の自動識別アルゴリズムの開発、2)プローブデータを基本とした交通調査・管制システムの開発、3)これらを組み込んだモビリティサービスの実装研究を行ってきた。時系列に同一個人の行動データの蓄積が可能なプローブ技術を用いた総合的行動調査の可能性を示すと同時に、様々な交通施策評価や交通管制の効率化に向けたプローブ技術とデータフュージョン理論の可能性を明らかにすることができた。特にセンサー情報を利用した行動判別アルゴリズムでSVMにAdaboostアルゴリズムを組み合わせることで、大幅な精度向上が可能になり、加速度センサーを有するスマートフォンによって95%以上の確率で交通行動の自動収集判別を可能にすることに成功した.こうした技術とPT調査を組み合わせた総合的な調査プラットフォームを構成することで,従前のワンショット型の交通調査からAlltheyear型の交通調査への移行と,総合的調査技術を用いた交通計画の可能性を示した.
著者
朝倉 康夫 羽藤 英二 井料 隆雅 多々納 裕一 長江 剛志 赤松 隆 吉井 稔雄 山本 俊行 中山 晶一朗
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

情報通信技術の高度化に伴い,GPS,携帯電話,PHS などの移動体通信システムの利用者数は飛躍的に増加しつつある.移動体通信による位置特定機能を用いると,機器を携帯する個々のヒトの位置特定が可能であり,過去数年の間に移動体通信機器を利用した交通行動調査手法が数多く提案されてきている.移動体通信を利用したヒトの交通行動の観測と分析手法については,1998 年に研究代表者らがITS 世界会議で発表した論文を皮切りに国内外で研究が進められている.国内ではプローブ車両による道路交通流の観測に代表されるように,実務面でも移動体観測への関心が高まっている.しかしながらこれに関連する既往研究のほとんどは平常時の交通行動を対象としたものであり,災害時を想定した観測システムの開発や分析手法に関する研究は見られない.一方,災害時の交通ネットワークのリスク評価に関しては,多様なアプローチから研究されてきているが,災害時の交通行動に関する実証データを得ることが困難であるために,実際の交通ネットワークを対象としたリスク評価研究の蓄積は必ずしも十分ではない.移動体通信機器を応用して災害時の交通行動を,災害を模した状況において実証的に把握することは,災害時の交通ネットワークのリスク評価の信頼性をより高め,また,より精緻な場面への応用ができるようになることが期待されよう.