著者
八木 毅 波戸 邦夫 田邉 正雄 村山 純一 外山 勝保 大崎 博之 今瀬 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.461, pp.103-108, 2007-01-11
参考文献数
5
被引用文献数
3

本稿では,実社会情報に基づくニックネーム通信および接続制御技術によりSocial Networking Service (SNS)のセキュリティを強化する方式を提案する.従来のSNSでは,ユーザ識別子を用いた通信と,登録制や招待制に基づくユーザ間接続制御により,SNSサイト内に,現実社会の人間関係をマッピングしたコミュニティを生成する.これにより,インターネットと比較して,セキュリティを向上させている.しかし,従来方式では,ユーザ識別子がサイト全体でユニークであるため,ユーザ数の増加に伴いユーザ識別子の漏洩に起因したスパム被害およびフィッシング被害が増えていた.さらに,各ユーザがサイトに申告した年齢や住所などのアカウント属性情報と実社会の個人情報の一致性を確保できないため,不正ユーザがアカウント属性を詐称して正規ユーザとして振舞うことができた.これらの問題を解決するために,提案方式では,コミュニティ毎に,各ユーザが設定したニックネームに基づくコミュニティ通信環境を構築する.これにより,スパム被害やフィッシング被害を防止する.さらに,提案方式では,各コミュニティ管理者の要求に応じて,コミュニティ参加希望ユーザのアカウント属性情報と実社会の個人情報の一致性を確認する.これにより,アカウント属性情報の詐称を防止し不正ユーザを排除できる.提案方式では,情報の到達範囲を意図的に限定することが可能となり,その結果としてセキュリティが強化できる.
著者
野本 義弘 大崎 博之 井上 史斗 今瀬 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.458, pp.357-362, 2009-02-24

本報告は,広域・広帯域のIPネットワークの下で,遠隔ストレージとのデータバックアップ用途に適用するiSCSIプロトコルのTCPコネクション数制御機構iSCSI-APT(iSCSI with Automatic Parallelism Tuning)に関する.現在,国立情報学研究所(NII)の学術情報ネットワークSINET3では利用中に無瞬断で物理帯域を変更可能な帯域予約型サービス(通称,L1オンデマンド)をモニター公開中である.筆者らは,利用帯域の特性に応じてTCPコネクション数を自動調節可能なiSCSI-APT技術をL1オンデマンドに適用し,その効果について実測評価を行っている.現在のiSCSI-APT実装は帯域予約完了後の制御を中心に進めている.本報告では,今後,iSCSI-APTに追加予定の回線使用中の動的な帯域追従機能について,実装に先行したシミュレーションによる解析を行い,TCPコネクション数の調整を行わない方式との違いを明らかにする.その結果,TCPコネクション数を固定で利用する方式と比較してデータ転送効率が向上することを示す.
著者
多田 知正 今瀬 真 村田 正幸
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.4, pp.534-546, 2012-04-01

本研究では地理的に離れたデータセンタ間の負荷分散により消費電力を削減することを考え,特にネットワークの消費電力を考慮することの有効性について調べる.近年,サーバやネットワーク機器における電力比例性(energy proportionality)という性質が注目されている.消費電力の観点から負荷分散手法を適切に評価するには,電力比例性について考慮することが必要である.電力比例性が低ければ,消費電力は負荷の増減によってほとんど変化しないため,負荷分散による消費電力削減の効果は小さくなる.現在はサーバやネットワーク機器の電力比例性は低いが,今後の技術開発により向上することが予想され,それにより消費電力を考慮した負荷分散の有効性も向上すると考えられる.本研究ではこれまでの省電力技術の動向を踏まえてそれぞれの機器の電力比例性を設定して計算を行うことにより,現在及び将来においてネットワークの消費電力を考慮してデータセンタ間の負荷分散を行うことの有効性について評価を行った.
著者
高野 知佐 会田 雅樹 村田 正幸 今瀬 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.449, pp.301-306, 2010-02-25
参考文献数
19

ネットワークの局所的な状態情報しか分からない環境において,ネットワーク全体を適切に動作させるネットワーク制御技術を設計するために,我々は近接作用の考え方に基づく偏微分方程式を利用した自律分散制御のフレームワークを提案し,それに基づく具体的な制御方式を検討してきた.これまで,ネットワークの自律的な負荷分散のような平滑化効果を実現する為に,拡散方程式に基づく制御を考え,フロー制御への応用による輻輳回避の効果などを確認してきた.本稿では,拡散現象のくりこみ変換と逆拡散によるドリフトを考えることで,平滑化効果を実現する従来の自律分散制御に加え,有限の空間的広がりを維持するように動作する新しいタイプの自律分散制御の実現可能性を議論する.更に,アドホックネットワークの自律分散クラスタリング技術を対象にシステム構成要素が自律分散的に周囲の局所的状況に適応しつつ,システム全体として有限サイズの構造を生み出す技術の実現法について考察し,アドホックネットワークの自律分散クラスタリング技術に応用する方式を提案する.
著者
津川 翔 杉山 浩平 大崎 博之 今瀬 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.204, pp.105-110, 2008-09-04
被引用文献数
1

本稿では、参加者のソーシャルネットワークのトポロジ構造から、開発型オンラインコミュニティの成功度を推定する手法を提案する。近年、社会活動のネットワーク化が急速に進んでおり、ネットワーク上にさまざまな種類のコミュニティ(オンラインコミュニティ)が形成されている。オンラインコミュニティを活発化し、成功へと導くためには、まず、オンラインコミュニティの現在の状態を適切に把握することが重要である。これまで、オンラインコミュニティの成功要因を分析した研究や、ソーシャルネットワークを分析した研究が数多く行われている。それらの研究結果は、参加者のソーシャルネットワークのトポロジ構造が、オンラインコミュニティの成功に大きな影響を与えることを示唆している。そこで本稿では、特に開発型のオンラインコミュニティを対象とし、ソーシャルネットワークのトポロジ構造からコミュニティの成功度を推定する指標CSI(Community Success Index)を提案する。開発型オンラインコミュニティのCSIは以下のように求められる。まず、参加者のソーシャルネットワークのトポロジ構造から、オンラインコミュニティにおける各参加者のリーダシップ度を推定する。推定した各参加者のリーダーシップ度から、オンラインコミュニティの成功度CSIを計算する。さらに本稿では、オープンソース・ソフトウェア開発のための代表的なオンラインコミュニティである、SourceForgeのログを用いた実験により、提案するCSIの有効性を評価する。その結果、提案するCSIは、開発型オンラインコミュニティの成功度の推定に有効である可能性が高いことを示す。
著者
杉山 浩平 大崎 博之 今瀬 真 八木 毅 村山 純一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.314, pp.7-12, 2007-11-08

本稿では、さまざまなリンクマイニング手法や従来のデータマイニング手法を統合的に扱うことができるフレームワークNMF (Network Mining Framework)を提案する。近年、リンクマイニングに代表される、複雑ネットワークのトポロジ構造を利用するさまざまな取り組みが活発に行われている。これまで数多くのリンクマイニング手法が提案されているが、これらは異なる分野でそれぞれ独立に研究されてきた。このため現状では、それらのリンクマイニング手法を相互に連携させて利用することは困難である。そこで本稿では、さまざまなリンクマイニング手法や従来のデータマイニング手法を統合的に扱うことができる、「ネットワークマイニング」のためのフレームワークNMFを提案する。NMFは、入出力の形式が統一された7種類の機能ブロックによって構成され、これらの機能ブロックを自由に接続することにより、さまざまなネットワークマイニング手法の実現を可能とする。さらに本稿では、NMFの利用例を示し、NMFによって高度なネットワークマイニングが可能となることを示す。