著者
石塚 美加 会田 雅樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TM, テレコミュニケーションマネジメント (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.527, pp.19-24, 2006-01-12

無線センサネットワークでは, センサノードの機械的故障, 電池切れ故障が発生しやすい.従って, ランダム故障や電池切れ故障により一部のセンサノードが通信不能になった場合でも, ネットワークとしての性能を最大限維持できるネットワーク技術が必要である.我々は, ランダム故障耐性, 電池切れ故障耐性の両方を高めるためには, センサノードの配置方法を工夫することが有効だと考え, 耐故障性の高いセンサ配置方法を検討してきた.以前の研究で, ノードの次数分布(隣接ノード数の分布)がべき分布に従うような確率的配置(べき配置)を提案し, べき配置はパラメータを適切に設定することにより, 一般的な確率的配置よりも高い耐故障性を実現することを示した.この検討では, 電池切れ故障耐性を向上させるためのルーチング制御については考慮していなかったが, 複数のデータを中継センサで集約して中継する制御(アグリゲーション制御)は電池切れ故障耐性の向上に特に効果があり.センサ配置方法との関連も深い.そこで, 本報告では, アグリゲーション制御を前提とした場合のランダム故障, 電池切れ故障耐性と確率的配置の関係を評価する.アグリゲーション制御の電池切れ故障耐性を評価する際には, センサの配置, センシング対象の到着過程の両方を考慮する必要があるが, これらを全てシミュレーションで評価するのは現実的ではない.そこで, アグリゲーション制御使用時の電池切れ故障耐性を特徴づけるキーパラメータを抽出し, このキーパラメータにより効率的に評価を行う方法を提案する.
著者
本間 裕大 会田 雅樹 下西 英之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.240, pp.31-36, 2010-10-14
被引用文献数
2

本研究では,制御時間スケールによる階層化という観点から,OSPF型ルーティング(最短経路)と,MLBルーティング(マルチパス)を同時実装する,新たなるルーティング制御技術を提案する.主な特長は,2種類の異なる制御技術を導入することによって,大局的には最短経路に従う安定した転送を実現しつつ,局所的な輻輳を回避し得る,柔軟なルーティング制御技術を構築した点にある.また,シミュレーションによって,単一の制御技術を導入した場合に比べ,平均遅延時間等が改善されることを明らかとした.
著者
高野 知佐 会田 雅樹 村田 正幸 今瀬 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.449, pp.301-306, 2010-02-25
参考文献数
19

ネットワークの局所的な状態情報しか分からない環境において,ネットワーク全体を適切に動作させるネットワーク制御技術を設計するために,我々は近接作用の考え方に基づく偏微分方程式を利用した自律分散制御のフレームワークを提案し,それに基づく具体的な制御方式を検討してきた.これまで,ネットワークの自律的な負荷分散のような平滑化効果を実現する為に,拡散方程式に基づく制御を考え,フロー制御への応用による輻輳回避の効果などを確認してきた.本稿では,拡散現象のくりこみ変換と逆拡散によるドリフトを考えることで,平滑化効果を実現する従来の自律分散制御に加え,有限の空間的広がりを維持するように動作する新しいタイプの自律分散制御の実現可能性を議論する.更に,アドホックネットワークの自律分散クラスタリング技術を対象にシステム構成要素が自律分散的に周囲の局所的状況に適応しつつ,システム全体として有限サイズの構造を生み出す技術の実現法について考察し,アドホックネットワークの自律分散クラスタリング技術に応用する方式を提案する.
著者
会田 雅樹 石橋 圭介 巳波 弘佳 栗林 伸一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.56, pp.25-30, 2003-05-09
被引用文献数
1

NTT DoCoMoのi-modeサービス(携帯電話端末を用いたIPデータ通信サービス)は急激にユーザ数を増やし,サービス開始から約4年後の2003年2月16日現在で契約者数が約36,773,000に達している.このような爆発的に広まった希有な通信サーービスの普及過程は,ヒット商品に対するユーザの挙動を知る上で興味深いサンプルである.人間関係の構造は,エンジニアリングによる設計や形成が行なわれる対象ではなく,多くの人々が個々に活動することよって形成される.他の社会的現象やインターネットでも同様な過程で形成されるネットワークが存在し,それらはしばしばスケールフリーネットワークとなることが知られている.本報告は,i-modeのユーザ数とトラヒック量の関係に関する非常に簡単な分析から,i-modeのpotential customerである非常に大きな人間の集合に対して,人間関係のネットワーク構造がスケールフリーとなることを示す.また,ユーザの振舞いに関する傾向についても考察する.
著者
会田 雅樹 高野 知佐 小頭 秀行 中村 元
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.10, pp.1430-1444, 2010-10-01
被引用文献数
1

通信ネットワークに関する各種データ(トラヒック量,ユーザ数等)には,何らかの形で人間社会の活動の特性が反映されていると考えることができる.我々はこれまで,情報通信サービスのデータに現れるべき乗則を利用して,人間の情報交換関係に関する社会ネットワークの構造を調べてきた.結果として得られた社会ネットワークの構造は,分析のもとになった特定の情報通信サービスのデータに関する表面的なサービス種別に左右されるものではなく,背後にある普遍的な社会ネットワーク構造を記述していることが望ましい.これを確認するためには,特定のデータ分析から得られる社会ネットワーク構造の分析結果を,他の通信サービスのデータによって検証することが有効であると考えられる.本論文では,複数の情報通信サービスのデータを相補的に用いて,データの自己無撞着性から許される社会ネットワークの構造やユーザ行動特性の分析を行う.また,得られた次数分布特性が現実のデータとよく一致することを確認する.
著者
会田 雅樹 佐々木 純
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.151, pp.37-42, 2006-07-06
被引用文献数
5

情報交換を行う人間の接続関係を分析して社会ネットワークとしての人間関係の構造を明らかにすることは,企業のマーケティング戦略や経営戦略の意思決定を支援する技術に結びつく可能性があり,工学的にも非常に興味深い.日常個人が誰と情報交換をしているかというデータを直接収集することは難しいが,利用者の多い通信サービスに関するデータを利用することによって,比較的規模の大きな人間関係の分析が可能になると考えられる.しかし,個人情報保護等の観点から,通信サービスの詳細な利用履歴データの入手や研究目的利用は容易ではないというのが現状である.本報告では,i-modeやmixiに関する一般公開されている非常に簡単なデータに着目し,その中に見いだされるpower lawを利用して大規模な人間関係の構造解明を行う.その結果,特定の通信サービスのユーザに限定されない広い人間関係に対して,スケールフリー性やユーザの行動規則に関する特徴を導く.