著者
伊東 祐郎
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.4-16, 2019-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
23

本稿は,日本の社会が外国人の受け入れに際して常に問題となる日本語教育についてこれまでにとってきた政策を概観し,日本語教育の捉え方,在り方等を考察するものである.最初に留学生の受け入れに関わる政策と日本語教育の発展に言及し,その後,入管法改正後に増加した生活者としての外国人に対する日本語教育の需要の拡大とその多様化を紹介する.グローバル化社会で求められる日本語とその教育は言語政策の視点からどのように位置づけられるべきか,また実現のためのビジョンはどのように描かれるべきかについて論じる.
著者
伊東 祐郎
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.57-71, 2011 (Released:2017-02-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1

最近の大規模テストでは,問題をコンピュータ上で提示し,受検者の反応によって瞬時に適切なものを出題する適応型テストが開発されるようになってきた。適応型テストの実用化には,事前に問題群が統計的数値に基づいて分類され整理されたテスト問題のデータベース,即ち,項目バンク(item bank)が不可欠である。項目バンクは,①蓄積機能:作成した項目を,コンピュータ内に蓄積し保存する機能,②抽出機能:出題の目的や評価しようとする領域に基づいて,必要な項目を検索し抽出する機能,③組み替え機能:項目困難度,項目弁別力などの条件によって抽出した項目群を,必要に応じて問題文を新たに組み合わせたり,選択肢の組み替えを行ったりする機能,④作成機能:蓄積・保管されている項目を,測定目的に応じて編集・加工・削除する機能等を有している。本稿では,項目バンク作成の背景となるテスト理論の諸概念について解説するとともに,実際の項目バンク開発の一例を紹介し,今後のテスト作成の在り方を探る。
著者
伊東 祐郎
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.168, pp.3-15, 2017 (Released:2019-12-26)

本稿は,新生日本語教育学会が誕生するまでの取り組みと今後の活動内容についてまとめたものである。日本語教育学会は2013年4月1日に公益社団法人に移行した。その後4年かけて,学会の理念を問い直し,学会の事業・組織・財政のあり方について精力的な議論を重ねてきた。学会員の拠り所であり続けるとともに,日本の社会づくり,また日本と海外諸国・地域との関係づくりにおいて,社会的役割を果たす学会の基盤構築をめざしてきた。4年間の集大成としての「理念体系-使命・学会像・全体目標・2015-2019年度事業計画-」は,学会の進むべき方向性を明確にした上で,組織・財政の基盤を整備するとともに,事業の再編成を行い,中期的展望をもって事業計画を策定したものである。事業主体となる各委員会がそれぞれの目的を達成し,その役割を担えるよう,また横断的視野をもって,関連する委員会間で積極的に連携し,効率的に相乗効果が上げられるよう有 機的に機能する組織として今後の活動が期待される。 なお,本稿は『公益社団法人日本語教育学会の理念体系』(2017年3月発行版)の第1章~第3章に加筆したものであることをお断りしておく。
著者
今井 新悟 伊東 祐郎 中村 洋一 酒井 たか子 赤木 彌生 菊地 賢一 本田 明子 中園 博美 西村 竜一 篠崎 隆宏 山田 武志 家根橋 伸子 石塚 賢吉 ファム ターンソン
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

日本語学習者のための日本語スピーキング能力をコンピュータ上で自動採点するテストシステムを開発した。インターネットを介して受験でき、時間と場所の制約を受けずに受験が可能である。音声認識技術を使い、受験者の発話から特徴量を抽出することにより、自動採点を実現している。項目応答理論を用い、受験者の能力に適合した難しさの問題を出題するアダプティブテストとなっており、少ない問題数で能力の判定ができる。
著者
伊東 祐郎 酒井 たか子 三枝 令子 谷部 弘子 村上 京子 中村 洋一
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究の特色と意義本研究は、テスト開発過程に不可欠なテスト理論(「古典的テスト理論」と「項目応答理論」)を導入し、統計的分析を加えることによって、これまで日本では認識の低かった試験問題の精度を向上させられる実証的研究を行い、項目プール実現化へ向けての基盤研究を行った。また、テスト開発における項目プール化は、日本ではほとんどそのための研究が行われておらず、本研究を通して得られた知見は、今後のテスト開発の新たな方法として、具体的な形で多くの大学等で応用できるものとなった。本研究を通して開発したシステムは、次のような5つの機能を持つものである。(1)蓄積機能:作成した問題項目を、コンピュータ内に蓄積し、保存することができる。また、問題項目のほかに、過去の試験結果のデータや項目分析結果も蓄積できるので、将来の問題項目作成を効率よく行うことができる。(2)抽出機能:出題領域や評価対象領域、また困難度などの条件に基づき、必要な数の項目を抽出して試験問題を構成・作成することができる。(3)組み替え機能:抽出条件が同じでも、設問の組み合わせや選択肢の組み合わせが可能となるので、異なる試験問題を作成することができる。(4)加工機能:蓄積・保管されている試験や問題項目を、測定目的に応じて編集・加工・削除することができる。また、既に蓄積されている項目を基礎に、全く新しい問題項目を作成することができる。(5)製版機能:抽出された問題項目を、パソコン上でレイアウト・編集ができる。