著者
伊藤 君男
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.52-62, 2003 (Released:2004-02-17)
参考文献数
26

本研究の目的は,被説得者の印象志向動機が内集団成員による説得的メッセージの処理に及ぼす効果を検討するものである。実験1は,被験者は大学生79名で,説得話題に関する議論が後になされることを実験参加者に予期させるか否かによって印象志向動機を操作した。それに加えて,説得者(内集団・外集団)と論拠の質(強・弱)を操作して実験を行った。その結果,議論なし条件では内集団の説得者の説得効果のみが認められた。一方,議論あり条件では,内集団の説得者による説得効果と論拠の質による説得効果が共に認められた。実験2では,議論の予期の操作によって高められる動機(印象志向動機か正確性志向動機)が,個人によって異なるという実験1の示唆に基づき,セルフ・モニタリングの相違によって印象志向に動機づけられる被験者と正確性志向に動機づけられる被験者に分類した。被験者は大学生216名で,実験の手続きは実験1の議論あり条件と同様である。高セルフ・モニタリング群(印象志向動機)は内集団の説得者の説得効果のみが高かった。一方,低セルフ・モニタリング群(正確性志向動機)では論拠の質の主効果のみが認められた。こうした結果に基づき内集団の説得者の特殊性が議論された。
著者
河野 和明 羽成 隆司 伊藤 君男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.95-101, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

恋愛対象者に対する接触回避がどのように生じているかを分析した。大学生334名(男性126名,女性208名)が質問紙調査に参加した。調査では,恋愛対象者,同性友人,異性友人各1名を想起させ,8つの身体接触場面において,各人物との接触をどの程度回避したいかについて尋ねた。男女とも恋愛対象者に対しては,異性友人に比べて接触回避の程度を下げたが,この傾向は女性で顕著であった。女性は,異性友人に対して接触回避を高く保っているが,恋愛対象者に対しては大幅に回避を下げると考えられた。しかし,たとえ恋愛対象者であっても,恋愛対象者への接触回避は,同性友人への接触回避よりも低くならなかった。一方,男性は,同性友人,異性友人よりも,恋愛対象者への接触回避は低かった。接触回避が性的防衛の機能をもつ可能性が考察された。
著者
伊藤 君男 岡本 真一郎
出版者
愛知学院大学
雑誌
愛知学院大学論叢. 心身科学部紀要 (ISSN:18805655)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.29-32, 2007-03-10

悪徳商法における強制的な説得・承諾のプロセスを,より詳細に検討するために,本研究では,被害者に対するインタビュー調査をおこなった.そして,説得の開始から承諾にいたるプロセスを,TEMを用いることで,詳細に記述・分析を行った.調査対象者は20代女性3名であり,彼女らはエステ・補正下着の強制的な勧誘を受けていた.TEMの分析によって,エステ・補正下着の勧誘のプロセスは,「来店」「勧誘」という必須通過点(OPP)を経て,「契約する」という等至点(EFP)に至ることが示された.そこでは,「友人の勧め」「無料体験」「脅し・強い勧誘」などの圧力が働いていることも示された.
著者
伊藤 君男
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.137-146, 2002-04-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
20
被引用文献数
4 3 1

本研究の目的は, ヒューリスティック-システマティック・モデル (Chaiken, 1986) に基づき, 説得的メッセージのヒューリスティック処理とシステマティック処理との加算効果と減弱効果に対する関与の程度の影響を検討するものである。実験は関与 (高・中・低) ・論拠の質 (強・弱) ・説得者の信憑性 (高・低) を操作して行った。実験の結果, 話題への関与が高い場合には, 説得効果は論拠の質のみの影響を受けたのに対して, 話題への関与が中程度の場合には, 論拠の質と説得者の信憑性の影響が共に認められた。また, 話題への関与が低い場合には, 説得効果は説得者の信憑性のみの影響を受けていた。これらの結果より, 高関与はヒューリスティック処理の影響を減弱させる効果を導き, 中関与はヒューリスティック処理とシステマティック処理の加算効果を導くことが示唆された。
著者
伊藤 君男 天野 寛 岡本 真一郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.17-27, 1998-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 緊急事態における避難行動に見られる事前の探索経験と集合行動の効果の検討である。実験室内に被災状況を模した迷路を作製し, 被験者の実際の脱出行動を観察した。実験では, 被験者は電気ショック装置を持った実験者から逃れるように教示された。実験1 (被験者64名) は, 2 (探索経験の有・無) ×2 (単独脱出・集団脱出) のデザインで行われた。探索経験は単独で行われ, その後, 単独または4人集団で実験が行われた。その結果, 探索経験は脱出所要時間の短縮を促進するという結果が得られた。また, 単独-未経験条件の被験者は他の条件の被験者と比較して, 脱出に要した時間を長く認知しているという結果が得られた。実験2 (被験者44名) では2種類の出口を設定し, 探索経験の際, 半数の被験者には一方の出口を, 別の半数の被験者にはもう一方の出口を学習させ, 本実験では4人集団で実験を行った。その結果, 集団脱出における同調行動が観察され, 集団による避難行動において, 不適切な行動であると考えられる同調行動の生起が示唆された。本研究の結果は, 探索経験の効果を証明し, ふだんの避難訓練の有益性を改めて示唆するものであった。
著者
河野 和明 羽成 隆司 伊藤 君男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.95-101, 2015
被引用文献数
1

恋愛対象者に対する接触回避がどのように生じているかを分析した。大学生334名(男性126名,女性208名)が質問紙調査に参加した。調査では,恋愛対象者,同性友人,異性友人各1名を想起させ,8つの身体接触場面において,各人物との接触をどの程度回避したいかについて尋ねた。男女とも恋愛対象者に対しては,異性友人に比べて接触回避の程度を下げたが,この傾向は女性で顕著であった。女性は,異性友人に対して接触回避を高く保っているが,恋愛対象者に対しては大幅に回避を下げると考えられた。しかし,たとえ恋愛対象者であっても,恋愛対象者への接触回避は,同性友人への接触回避よりも低くならなかった。一方,男性は,同性友人,異性友人よりも,恋愛対象者への接触回避は低かった。接触回避が性的防衛の機能をもつ可能性が考察された。