著者
伊藤 崇志
出版者
国際タウリン研究会
雑誌
タウリンリサーチ (ISSN:21896232)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.9-11, 2015 (Released:2019-09-20)

我々のグループは主に心臓や骨格筋におけるタウリンの病態生理学的意義を解析する目的でタウリントランスポーター欠損マウスを作製し、解析を行ってきた。その中で、組織タウリン合成能が極めて低い心臓及び骨格筋において組織タウリンの欠乏に伴い機能的及び形態的異常を見出した。また、近年、このマウスが加齢依存的な組織異常を呈し、さらに、寿命が短くなることを見出した。このことから、組織タウリンが寿命と関連する可能性があると考えている。
著者
伊藤 崇志 東 純一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.311-317, 2004 (Released:2004-04-27)
参考文献数
29
被引用文献数
6 10

高脂血症や糖尿病,高血圧症などの生活習慣病の増加に伴い,冠動脈疾患をはじめとする動脈硬化性疾患が増加の一途をたどっている.タウリンは,循環器疾患に有効である可能性がこれまでの研究から明らかにされつつある.また近年,数々の報告から,タウリンが動脈硬化病変形成にいたるまでの様々な段階で抑制的に働くことが示唆されている.高コレステロール血症モデル動物において,タウリン投与によるLDLコレステロール低下作用やHDLコレステロール上昇作用,脂質酸化抑制作用を介し,動脈への脂質の蓄積が抑制されることが報告された.また,動脈硬化発症の引き金となる血管内皮機能障害がタウリン服用により抑制されることが報告された.タウリンは次亜塩素酸に対してスカベンジャー作用をもつことが知られ,近年の研究から,LDLの酸化にマクロファージ中のミエロペルオキシダーゼにより産生される次亜塩素酸が関与していることが明らかにされ,タウリンがLDLの酸化を抑えることが示唆された.さらに,タウリンと次亜塩素酸との反応物タウリンクロラミンは,NF-κBの活性化を阻害することにより白血球におけるサイトカイン産生を抑制することが報告され,サイトカインが動脈硬化の進展に大きく関与していることからも,動脈硬化抑制メカニズムの1つとして注目すべき作用である.
著者
伊藤 崇志
出版者
国際タウリン研究会
雑誌
タウリンリサーチ (ISSN:21896232)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.28, 2021 (Released:2022-09-04)

2020年初めより新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で蔓延し、現在、抗ウイルス薬や重症化を抑える治療薬の開発が急務である。タウリンクロラミンは免疫細胞により産生されるタウリン誘導体であるが、広域な抗菌、抗ウイルス作用があり、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対する殺傷作用も期待されている。また、タウリンクロラミンは免疫細胞の炎症性サイトカインの産生を抑制する作用があり、COVID-19の重症化を抑える効果が期待できる。
著者
伊藤 崇志
出版者
国際タウリン研究会
雑誌
タウリンリサーチ (ISSN:21896232)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.6-8, 2016

サルコペニアは老化とともに起こる筋力や筋肉量の低下を指し、超高齢化社会においてその予防や治療の開発のニーズが高まっている。我々は以前報告したようにタウリントランスポーター欠損マウスにおいて、骨格筋中のタウリンの欠乏とともに骨格筋老化が促進されることを見出しており、タウリンがサルコペニアに対して有効な物質であることが示唆される。タウリン欠乏と骨格筋老化促進との関連性を明らかにするために、トランスクリプトーム解析を行った。本稿では、トランスクリプトーム解析およびそのデータに基づくパスウェイ解析の結果から明らかになったタウリンの骨格筋における役割について紹介する。
著者
村上 茂 川﨑 安都紗 小野 鮎子 伊藤 崇志
出版者
国際タウリン研究会
雑誌
タウリンリサーチ (ISSN:21896232)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.35-37, 2018 (Released:2019-11-11)

魚介類に豊富に含まれるタウリンは、海藻にも存 在し、浸透圧調節等の役割を果たしていると考えら れる。われわれは、海藻の中でも紅藻類のフノリが タウリンを特に多く含むことを見出した。海におけ るフノリの生育環境を考えると、タウリンが乾燥や 浸透圧変化、紫外線、温度変化などの環境変化に対 応するために利用されている可能性が推察される。 また海では、さまざまな生き物が解毒や代謝にタウ リンを利用しており、海洋生物の体内のタウリン量 には食物連鎖が大きく関わっている。海藻をはじめ とする海洋生物におけるタウリンの役割を解明す ることは、哺乳類やヒトにおけるタウリンの作用の 理解につながる。
著者
平 修 常山 幸一 川崎 安都紗 小野 鮎子 前川 昭 伊藤 崇志 宮崎 照雄 城本 淳 小林 春輝 大森 肇 片野 肇 村上 茂
出版者
国際タウリン研究会
雑誌
タウリンリサーチ (ISSN:21896232)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.27-29, 2017 (Released:2019-11-11)

イメージング質量分析(MS)により、マウス筋肉 組織中の「どこ」にタウリンが局在するのかを視覚 的に解析した。本報ではラット脚部より採取した、 ヒラメ筋、腓腹筋、足底筋の凍結切片を用いて、タ ウリンと分岐鎖アミノ酸である、バリン、ロイシン、 イソロイシン、リジンの局在を解析した。