- 著者
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笠岡(坪山) 宜代
- 出版者
- 国際タウリン研究会
- 雑誌
- タウリンリサーチ (ISSN:21896232)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.1, pp.47-49, 2015 (Released:2019-10-01)
我々は、近年の日本における肥満・生活習慣病増加の解決策を見いだす事を目的として、魚介類に含まれる栄養素であるタウリンと肥満・生活習慣病発症の関連を検討してきた。生体内でのタウリン合成系の律速酵素であるシステインジオキシゲナーゼ(cysteine dioxygenase, CDO)の遺伝子5’転写調節領域には、脂肪細胞の分化に関わる転写因子のコンセンサス配列が存在することを見出した。また、マウスの脂肪組織ではCDO mRNAが高レベルで発現していること、脂肪細胞にCDO を強制発現させると培養液中のタウリン量が増加する事を示した。さらに、肥満動物では脂肪組織のCDO mRNAが減少し、タウリン不足状態であり、食事にタウリンを添加すると肥満発症が抑制され、基礎代謝が増加、脂肪組織での脂肪の分解に関わる遺伝子発現が増加している事を見出した。このことから、脂肪組織でもタウリンが合成される事、脂肪組織に脂肪が蓄積しすぎるとタウリン合成が低下してタウリン不足の状態になり、タウリンが持つ脂肪燃焼作用が発揮出来ずに肥満が更に加速するという悪循環が生じる可能性があると考えている。