著者
沖村 遥平 本間 裕大 鵜飼 孝盛 栗田 治
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.289-292, 2016-07-01 (Released:2016-07-29)
参考文献数
3
被引用文献数
2

夏の風物詩として存在感の大きなものに,都市部での花火大会が挙げられる.都市部で打ち上げられる花火を観賞するにあたって,周囲の建物群の影響は無視できないものであり,これらの高層な建物群によって,視界に届くはずの花火が遮蔽されてしまうのである. そこで本研究では,建物群が建ち並ぶなかでの花火の見え方に主眼を置き,建物による遮蔽と観測位置などを厳密に考慮した上で,視界にとらえられる花火の量を定量的に評価する.より具体的には,視対象となる打ち上げ花火が視界でどの程度の大きさを占めるかを,視対象の見かけの大きさを数値化した物理量である「立体角」を用いて評価すると同時に,花火の全形のうちどの程度の割合が視界にとらえられるかを,立体角の定義から直ちに算出される「可視率」を用いて評価し,これら2つの要素を評価指標とする.また,構築したモデルを都市部で行われている実際の花火大会のいくつかの事例へ適用し,実証的な視認性評価分析を展開する.
著者
野畑 剛史 本間 裕大 今井 公太郎
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.84, no.766, pp.2545-2552, 2019 (Released:2019-12-30)
参考文献数
16

In this paper, we propose a new morphological analysis method to evaluate architectural space. Specifically, we focus on the inner convex spaces as a partial inner space and enumerate all possible patterns. Since people can recognize each other in a convex space, they share five senses such as seeing each face, talking without being distracted by any obstacles. It means that a convex space is appropriate as one unit in the architectural space. Recently, some real architectural buildings have complicated and amorphous shapes with seamless special connections. In such buildings, the convex space could be a useful tool to comprehend the spatial composition. Therefore, we regard the building as concave polygons and enumerate all possible patterns of maximal inner convex space. The maximal convex spaces are enumerated in the following procedure. First, the possible candidates for the endpoints of the maximal convex spaces are enumerated as much as possible. The candidate points can be obtained by rotating lines around each reentrant angle of the objective concave polygon. Next, by confirming visibility, half-plane, and tangent line conditions, we create an adjacency matrix for candidate points. Finally, based on this adjacency matrix, we enumerate all possible maximal cliques, which correspond the maximal convex spaces for the analysis. Derived inner convex spaces can be applied to various architectural planning issues. For example, we can clarify the characteristics of inner spaces such as area, circularity. These results indicate the diversity of usage in objective architectural space. Furthermore, the distributions of inner spaces correspond to the openness of space. If space is overlapped by various convex space, it is for public usage and vice versa. We also analyze the connectivity of each inner convex space by connecting centroids by a minimum spanning tree (MST) based on the similarity. This structure would be the backbone of architectural space. Since we enumerated all possible patterns of inner spaces, it enables us to find the optimal inner spaces subject to various conditions. The optimal inner space which maximizes area, circularity, and so on, helps to understand the abilities of buildings. We believe that these new analyses expand the potential of quantitative researches for architectural planning. This study can be regarded as a critical extension of Isovist theory which has been used in numerous earlier studies because a scanning vector which constructs the Isovist is a proper subset of some maximal convex spaces. All of the above computational procedure can be completed within a realistic time, and we believe that this study proposes a new possibility of morphological analysis for architectural space. Future prospects include developing methods applicable to more complex buildings, extending the method to three dimensions, and establishing useful search methods.
著者
本間 裕大 白濱 篤
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.475-481, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

人や物,情報によってなされる地域間交流は,社会活動の特徴を把握するための重要情報である.それらは空間的に離れた地域間で生じるが,その交流はいくつかの圏域に分割されている場合も多い.このような交流圏域の存在は,同一圏域に属する地域間交流を活発にし,また,異なる圏域に属する地域間交流を阻害する要因となり得る.この交流圏域と地域間流動データとの因果関係を逆に捉えると,地域間流動データから暗黙的な交流圏域を推定することも可能と思われる.そこで本研究では,人口移動や物流の地域間流動データから,その交流圏域を数理最適化手法によって推定することを試みる.交流圏域同士の重なりを明示的に考慮することによって,社会的変化と交流圏域の空間的特徴との関係を考察する.本研究の特色としては,主に以下の3点が挙げられる;(i) 同一圏域内における交流のみならず圏域を隔てた交流にも着目していること,(ii) 交流圏域同士の多層的重なりを明示的に考慮していること,(iii) それらを汎用数理最適化ソルバで求解できるよう定式化していること.
著者
羽佐田 紘之 長谷川 大輔 本間 裕大 佐野 可寸志 大口 敬
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00347, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
28

目的地として訪問するだけの魅力を有する施設は,その整備効果を多角的に検証することが望まれている.本研究は,訪問に費やす移動費用を表すトラベルコストに基づいて,訪問移動が生じるのに必要な各施設の効用値や消費者余剰を算出し,目的地となる施設自体が有する価値を評価する手法を提案する.同時に,嗜好の異質性を考慮し,効用値が共通であるセグメントへの訪問者の分類も行う.ETC2.0データから構築した茨城県内の道の駅への訪問移動データへと適用し,訪問数は少ないものの有する価値の大きい道の駅の存在や,道の駅の魅力度向上に寄与する機能を明らかにした.提案手法は,inverse shortest paths problemモデルにより代替施設との競合関係の考慮が可能な新たなるトラベルコスト法と位置付けられる.
著者
本間 裕大
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.243-245, 2021-08-01 (Released:2021-09-11)
参考文献数
3

社会は,意思決定の連続で成立しているが,その結果である社会を振り返ると,どうも「より良い≒最適な」状態から乖離しているのでは,と感じざるを得ない場合もある.このような乖離が生じる背景には,社会全体としての最適状態と,各々の主体が合理的な行動をとったときの均衡状態とが異なるため,であることが知られている.本稿では,社会最適と均衡状態それぞれを求める簡単な数値例を示しながら,両者の特徴を提示し,広い視野をもつ重要性と難しさとを議論したい.
著者
渡部 宇子 本間 裕大 本間 健太郎 今井 公太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.682-688, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1 4

本研究では,道路斜線制限と天空率緩和が容積率と建築物高さへと与える影響を考察することを目的とする.様々な敷地形状ならびに建物形状を考慮することによって,当該制限ならびに緩和規定が容積率と建築物高さとどのような数理的関係にあり,かつ,積極的に緩和規定を用いるべき状況を明らかにする.当該条件が明らかとなることによって,建築設計の初期段階における作業効率向上が期待できる.本研究で得られた主な知見は以下のとおりである:(i) 天空率の利用が有利に働くのは,間口の広い敷地で,このときの建物形状は細長くなる;(ii) 奥行の深い敷地では,天空率緩和の場合だけではなく,道路斜線制限で多面体を想定した場合でも許容容積率をすべて消化できる.
著者
本間 千尋 本間 裕大
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.293-296, 2016-07-01 (Released:2016-07-29)
参考文献数
4

明治期に日本に移入された西欧モダンのピアノ文化は,戦後はライフスタイルの都市化に伴い全国的に浸透した.日本では子どもに楽器の演奏技術を学ばせる際にはピアノを選ぶ場合が多く,我々は自国の伝統楽器よりも西欧の楽器であるピアノの方に親しみを感じる.また現在の日本では,ピアノの経験者や国際コンクールの参加者は本場西欧を凌ぐ程になり,日本におけるピアノ文化は成熟期を迎えていると言えるだろう.このように戦後日本の都市化と不可分の関係にあり,多くの人々が趣味やレッスンで経験するようになったピアノ文化であるが,日本においてピアノ文化に関する研究は多くはない.そこで,本研究では,高度経済成長期が終焉した1980 年代以降のピアノ文化の受容を,質的調査を用いて検討し,それを踏まえた上でコンペティションデータを用い数理的解析から明らかにする.こうした視点からピアノ文化を検討することは,ピアノ文化の分析に新たな知見をもたらしてくれることが期待でき,また高度経済成長期終焉以降の日本社会の特質を垣間見ることにもなるだろう.
著者
本間 裕大 栗田 治
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.769-774, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
10

本研究は,都市内の職住分布を演繹的に導出することによって,都市の形成に対してある種の説明原理を与える試みである.具体的には,(a)居住地―就業地間の通勤,(b)混雑による負の効果,(c)就業地同士の取引の3点を考慮した上で,都市領域内における居住地と就業地の立地選択問題を,非集計ロジット・モデルを用いてモデル化する.本研究では,まず基本モデルとして人々の就業地を都市の中心点に固定し,居住地分布の形成のみを考慮したモデル化を行う.このとき,人々の効用が都市の形状を決定し,また,都市の形状が人々の効用を決定するという再帰的構造を明示的に取り入れた.人々の効用関数を適切に設定することで, Clark型,および Sherratt-Tanner型の人口分布経験式が解析的に導出される.また基本モデルを拡張し,都市内の居住地分布・就業地分布を同時に決定するモデルをも提案する.前述の通り,本モデルでは混雑による負の効果を明示的に組み込んでいるため,大都市における居住地分布のドーナツ化現象を再現することも可能である.最後に,本モデルを東京圏の職住分布に実際に当てはめ,その再現性について検証を行った.
著者
本間 裕大
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.763-768, 2009-10-25
参考文献数
17
被引用文献数
1

複数の施設を連続的に訪問する周回行動は、日常生活で頻繁に観察される。しかしながら、周回行動は施設を訪問する際の重要なスキームであるにも関わらず、それを施設の立地計画へと明示的に考慮した研究はあまり見受けられない。本研究では、複数の施設を訪問する周回行動を前提とした、集客施設のための最適立地問題を提案する。具体的には、利用者がランダム効用理論に基づく周回行動を行う前提の下、新規施設の集客数最大化問題を提案する。その上で、利用者の行動特性の変化が、最適立地点に如何なる影響を及ぼすか考察する。また、人々が周回行動を行う際は、異なるサービス種別の施設を訪問する場合も多い。この点に鑑み、複数のサービス種別を考慮した場合の、集客数最大化問題も提案する。本研究で得られる主たる知見は以下の通りである:(a)利用者が2ヶ所の施設を訪問する場合、新規施設は既存施設に隣接するよう立地するのが、多くの場合最適となる;(b)3ヶ所の施設を訪問する場合、新規施設の最適立地点は既存施設のWeber点付近となる;(c)複数のサービス種別を考慮し新規施設を立地する場合、施設規模に多寡によって適切な戦略は異なる。
著者
本間 裕大 会田 雅樹 下西 英之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.240, pp.31-36, 2010-10-14
被引用文献数
2

本研究では,制御時間スケールによる階層化という観点から,OSPF型ルーティング(最短経路)と,MLBルーティング(マルチパス)を同時実装する,新たなるルーティング制御技術を提案する.主な特長は,2種類の異なる制御技術を導入することによって,大局的には最短経路に従う安定した転送を実現しつつ,局所的な輻輳を回避し得る,柔軟なルーティング制御技術を構築した点にある.また,シミュレーションによって,単一の制御技術を導入した場合に比べ,平均遅延時間等が改善されることを明らかとした.