著者
橋本 直樹 野田頭 達也 藤田 正弘 高屋 誠章 熊谷 達夫 田中 正則 佐々木 睦男
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.323-327, 2000 (Released:2011-06-08)
参考文献数
26

症例は35歳の女性で, 下腹部腫瘤を主訴とし近医を受診, 卵巣腫瘍の診断で当院産婦人科にて両側付属器切除術が施行された. 組織診にて印環細胞癌と診断されたため, 当院内科にて胃内視鏡検査を施行し, 胃体中部大彎にIIc病変が認められた. 生検にて印環細胞癌と診断され, 当科にて胃全摘術3群郭清を施行, 再建はρ吻合, Roux-Y法で行った. 病理組織学的検討では深達度m, リンパ節転移n2 (+), 脈管侵襲はly (-), v (-) であった. 術後, 化学療法を施行し, 現在外来にて経過観察中である.一般にKrukenberg腫瘍は播種性転移として取り扱われているが, 本症例では肉眼的および腹水細胞診での腹膜播種は認められなかった. 検索した限りでは胃粘膜内癌によるKrukenberg腫瘍の報告は6例のみで, 本症例はまれであると考え報告した.
著者
板橋 幸弘 馬場 俊明 加藤 智 佐々木 睦男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.108-111, 2005-01-01
被引用文献数
9

症例は36歳の女性で,間欠的な強い腹痛で近医を受診し,右上腹部に径10cm大の腫瘤を指摘されたが原因不明のまま退院した.再度腹痛が出現したため当院救急外来を受診した.腹部超音波およびCTで右上腹部の可動性のない腫瘤に一致して腸管重積像を認めた.翌朝より血便を伴い,血清CPK値1,003IU/Lと著明に上昇したため緊急手術となった.回腸末端を先進部とし,横行結腸中央付近に達する回盲部型腸重積症で,Hutchingson手技で重積を解除したが,重積されていた右側結腸全体の腸管壁が著明に硬く肥厚しており結腸右半切除術を施行した.盲腸から上行結腸にかけて後腹膜に固定されていないことが腸重積の誘因と思われた.切除標本で重積の原因となりうる器質的変化を認めず,特発性腸重積症と診断した,重積腸管が広範囲で,長時間経過している場合には腸管壁の不可逆的な変化が強く,重積を解除しても腸切除は必要と思われた.
著者
安室 喜正 中田 昇 川人 誠治 佐々木 睦男
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.397-404, 1987-12-01
被引用文献数
2 3

置換型ライコムギ(2n=42,AABBR'R')の特徴は,(1)A,Bゲノムのほか,コムギDゲノムの染色体とライムギRゲノムの染色体から構成された新しいR'ゲノムからなり,(2)そのR'ゲノムはほとんど例外なく2Rを欠き,2Dを含むことである.この特異的な2D-2R染色体置換は,メキシコのCIMMYTの育成系統群では,地理的条件から2D上の日長不感応性遺伝子によるものとされている.しかし,我々の研究室で育成した置換系統群は,育成過程でそのようた地理的制約はたいので,当該遺伝子の影響は考えられず,2D-2R置換の原因は種子稔性に関与する遺伝子が2Dに存在するためであろうと推測した(YASUMURO et al. 1983)、本研究は,2D,2R染色体とコムギおよびライムギ細胞質を因子として組合せた4種類の核・細胞質型の個体を作成し,それらと種子稔性との関係を調査し,ライコムギの2D-2R置換の原因を明らかにしようとした. 3系統の交配親,(1)aestivum細胞質(aes)をもつ2D-2R置換型ライコムギ系統S78,(ゲノム構成AABBR'R',ただしこのR'ゲノムの染色体構成は1R,2D,3R,4R,5R,6R,7Rである),(2)複倍数体型系統Beagle(AABBRR),(3)cereale細胞質(cer)をもつ複倍数体型系統(cer)-JM_135を用いて,S78x Beagleと(cer)-JM_135 x S78の交配を行い,F_2,F_3を育成した、(aes)および(cer)の2細胞質とAABBR'R'とAABBRRの2ゲノム構成を組合わせた4種類の核・細胞質型の個体,(aes)-AABBR'R',(aes)一AABBRR,(cer)一AABBR'R',(cer)-AABBRRを,F_2,F_3から同定して選び出し,それらの個体の種子稔性を調べた.その結果,2D,2R染色体とコムギ,ライムギ細胞質との問には,種子稔性に関して次のような顕著な相互作用が認められた.(1)2D染色体の存在は(aes)細胞質のもとでは高種子稔性をもたらすが,(cer)細胞質のもとでは植物体が貧弱となり低種子稔性をもたらす。(2)2R染色体の存在は(aes)細胞質のもとでは高低いずれの種子稔性をももたらすが,(cer)細胞質のもとで高種子稔性を得るためには不可欠である(Fig.2).これらの結果はコムギ細胞質における2Dの2Rに対する選択的有利性を表わしており,ライコムギにおける2D-2R染色体置換の原因となることを示している.また,このような主要形質における核・細胞質相互作用の存在は,ライコムギ育種において,コムギあるいはコムギ近縁種の細胞質に対する最適核遺伝子型の選抜,即ち核・細胞質相互作用の選抜が有効であることを示している.
著者
西村 顕正 森田 隆幸 村田 暁彦 馬場 俊明 池永 照史郎一期 木村 憲央 佐々木 睦男
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.346-350, 2003-07-01
被引用文献数
1

抗リン脂質抗体症候群(APS)に全身性エリテマトーデス(SLE)を合併し上腸間膜静脈血栓症を発症した1例を経験した.症例は63歳女性.平成7年APS,平成9年SLEと診断され当院内科で加療中であった.平成13年5月21日より腹部不快感を自覚した.5月26日より腹痛が増強したため救急外来を受診した.腹部造影CTで上腸間膜静脈血栓症を疑い,同日緊急手術を施行した.トライツ靱帯から約190cm肛門側の小腸に約50cmにわたり虚血性病変を認め,これを切除した.術後は抗凝固療法を行い,17日目に退院となった.上腸間膜静脈血栓症は稀な疾患であり,早期診断が困難なことが多い.凝固能亢進状態にある患者では同疾患も念頭に入れ,早期診断と治療にあたることが必要と考えられた.