著者
萬谷 直樹 岡 洋志 佐橋 佳郎 鈴木 理央 綾部 原子 鈴木 まゆみ 神山 博史 長田 潤 木村 容子 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.197-202, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
27
被引用文献数
17 14

甘草による偽アルドステロン症の頻度については十分にわかっていない。われわれは甘草の1日量と偽アルドステロン症の頻度の関係について,過去の臨床研究を調査した。甘草を1日1g 使用した患者での偽アルドステロン症の頻度は1.0%(平均)であった。1日2g,4g,6g での頻度はそれぞれ1.7%(平均),3.3%,11.1%(平均)であった。過去の文献において,偽アルドステロン症発症頻度の用量依存的な傾向が示唆された。
著者
伊関 千書 鈴木 雅雄 古田 大河 佐橋 佳郎 鈴木 朋子 金子 明代 上野 孝治 三潴 忠道
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.131-139, 2015

症例は45歳女性で,X-2年4月より全身性疼痛,発熱,倦怠感,冷え,下痢,食欲不振,めまい,頭痛,不眠などを発症し,X-1年5月に当センターにて線維筋痛症と診断された。X 年5月に入院時,慢性疲労症候群も合併していると診断された。手の少陰経と太陽経に発汗と血管攣縮を伴う疼痛発作が毎日出現しており,複合局所疼痛症候群(CRPS)と診断された。通脈四逆湯(乾姜9g,甘草4g,烏頭6g)を処方後,ほとんどの症状の軽減がみられ,CRPS 発作には大烏頭煎(烏頭1g,蜂蜜10g)の頓服が有効であった。鍼灸治療では,心気血両虚証と心庳証に対し,神門,内関,三陰交,太衝,足三里,陰陵泉,心兪,肩中兪,風池へ配穴し低周波鍼通電治療(1~4Hz)を併用し,手の少陰経と少陽経へは子午流注経絡弁証も用いたところCRPS 発作頻度が減少した。湯液と鍼灸の併用は,難治性の疼痛症候群合併症例に有効であった。
著者
山岡 傳一郎 伊藤 隆 浅間 宏志 佐橋 佳郎 三谷 和男 姜 東孝 安井 廣迪 渡辺 均
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.270-280, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1 6

漢方製品の使用量と金額は近年増大しているが,輸入生薬単価の上昇と保険薬価低下のために,漢方薬を扱う業界には長期低落傾向がみられる。生薬国内生産はこの30年間減少し続けているが,状況改善への試みがなされている。福島県の会津産人参生産量は153トンから8トンに減少したが,圃場の拡大と栽培期間短縮の研究が開始された。奈良県では生産から販売までの一貫体制の構築に取組み,大和当帰を用いた新たな商品開発販売のため,生産者,製薬・食品メーカー,大学研究機関による協議会が活動している。また薬用作物の国内生産に向けて,農林水産省,厚生労働省ならびに日本漢方生薬製剤協会は,3年間にわたり生産者と製薬各社とのマッチング会議を各地で開催してきた。漢方による医療費削減のためには,漢方製剤だけでなく煎薬などの生薬を直接用いた治療のできる医療体制が必要である。生薬国内生産コストを賄う施策に関する議論が望まれる。
著者
伊関 千書 鈴木 雅雄 古田 大河 佐橋 佳郎 鈴木 朋子 金子 明代 上野 孝治 三潴 忠道
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.131-139, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
39
被引用文献数
1

症例は45歳女性で,X-2年4月より全身性疼痛,発熱,倦怠感,冷え,下痢,食欲不振,めまい,頭痛,不眠などを発症し,X-1年5月に当センターにて線維筋痛症と診断された。X 年5月に入院時,慢性疲労症候群も合併していると診断された。手の少陰経と太陽経に発汗と血管攣縮を伴う疼痛発作が毎日出現しており,複合局所疼痛症候群(CRPS)と診断された。通脈四逆湯(乾姜9g,甘草4g,烏頭6g)を処方後,ほとんどの症状の軽減がみられ,CRPS 発作には大烏頭煎(烏頭1g,蜂蜜10g)の頓服が有効であった。鍼灸治療では,心気血両虚証と心庳証に対し,神門,内関,三陰交,太衝,足三里,陰陵泉,心兪,肩中兪,風池へ配穴し低周波鍼通電治療(1~4Hz)を併用し,手の少陰経と少陽経へは子午流注経絡弁証も用いたところCRPS 発作頻度が減少した。湯液と鍼灸の併用は,難治性の疼痛症候群合併症例に有効であった。
著者
盛 克己 中村 謙介 太田 東吾 貝田 豊郷 富田 寛 村山 和子 村山 照之 佐橋 佳郎
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.27-32, 1989-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7

傷寒論には, 誤治によって病態が崩れてしまった「壊病」という状態があることが記載されている。同じように「合病」や「併病」の記載もある。後者については, 多くの先輩たちによりその病態や治療についての研究がなされ,「合病」については1つの処方で対処し,「併病」については先表後裏・合法・先外後内・先急後緩で対処することが明かになっている。しかし,「壊病」についてはその病態や治療についての報告はあまりみられない。しかし, 誤治などによって病状がはっきりしなくなることは臨床的にはよくみられ, その中には「壊病」と考えられる症例があると思われる。今回, 臨床経験を通じて,「壊病」の病態の解明及び治療の一助として, 1つの考えを示唆してみた。
著者
萬谷 直樹 佐橋 佳郎 岡 洋志
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.52-56, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
17

中医学の理論では芍薬は酸味があり収斂作用をもつとされている。芍薬の煎液の味を調査するため,12人のボランティアが赤芍と白芍の煎液を試飲した。各人は赤芍と白芍の味が五味(酸,苦,甘,辛,鹹)のうちどれに近いかを選択した。一番感じる味として,ほとんどの者は苦味を選択したが,酸味を選択した者はいなかった。少なくとも現代においては,芍薬にはほとんど酸味がないと考えられた。芍薬の収斂作用と筋弛緩作用について酸味と関連づけて考察を行った。
著者
鈴木 朋子 伊関 千書 佐橋 佳郎 三潴 忠道
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.130-135, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
19

『傷寒論』を原典とする白朮附子湯は意外に報告が少ない。今回我々は痛みで体動困難となった患者に対し白朮附子湯が著効した症例を経験したので報告する。症例は介護施設入所中の84歳女性。主訴は痛みによる体動困難。 X 年1月定期受診した際左側胸~側腹部の激しい体性痛を訴え即日入院となった。精査上器質的異常は認めず,問診にて冬期にもかかわらず脱水予防のため水道水を2—3L/日近く施設で摂取させられていたことが判明した。小便は自利だが数日便秘であった。NSAIDs などは効果なく,入院当日より白朮附子湯を開始した。内服後大量の軟便を排泄するとともに痛みは急速に改善し退院調整後第13病日退院した。会津地方の介護施設で冬場に水道水を多飲させられ水毒に陥り「風湿相搏」状態となったことが今回の痛みの一因と考えられた。風湿が原因の痛みに対しては桂枝附子湯,甘草附子湯とともに白朮附子湯も考慮すべき処方と考えられる。
著者
中村 謙介 村山 和子 太田 東吾 貝田 豊郷 佐橋 佳郎 富田 寛 村山 暉之 盛 克巳
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.221-225, 1989-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7

咽喉痛, 疲労倦怠感を主訴とした夏風邪の患者に麻黄附子細辛湯加甘草を与えたところ, 風邪症状と共に疲労倦怠感が消失した。以後患者は風邪とは無関係に疲労倦怠感の治療のために本方を服用するようになった。この症例にヒントを得て, 疲労倦怠感を主訴とする虚弱体質, 自律神経失調症, 術後疲労に本方を投与し効果を得ている。いまだ少数であるが印象に残った数例を報告し, 本方の有効な疲労倦怠感を明確にする目的で, 患者の自他覚症状の病態分類を試みた。この結果麻黄附子細辛湯証は陰証寒候, 虚証, 表証, 肺 (呼吸器) 症状, 水毒の五つの病態の混在したものであり, このうちの虚証が顕著となった易疲労倦怠に本方が有効であると結論した。