著者
渡邉 章乃 佐藤 友美 矢口 行雄
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第114回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.362, 2003 (Released:2003-03-31)
参考文献数
2

1. はじめに 植物の葉の葉内および葉面を含めた範囲を葉圏といい(Carroll, 1977)、葉圏に生息する菌類は葉の表面に分布する葉面菌と内生菌を含め、葉圏菌といわれている(Petrini, 1991)。しかし、これらの菌類の役割についての研究はほとんど蓄積がないのが現状であり、さらに内生菌の中には、病原菌として報告されている菌類も含まれている。また葉圏菌に関する研究は葉面菌または内生菌のどちらか一方に集中していて、これらの比較検討を行った研究はほとんどない。そこで本研究は、内生菌および葉面菌と病原菌との関係のメカニズムを解明するため、葉面菌および内生菌を分離・同定し、既報の病害報告と比較検討を行い、さらに異なる樹種における菌類発生の季節的変動パターンの比較検討を行った。2. 方 法 葉面菌および内生菌を分離、同定するため、東京農業大学世田谷キャンパス内にある常緑および落葉広葉樹それぞれ4種を供試木として葉を経時的に採取した。常緑広葉樹としてトウネズミモチ、サンゴジュ、キョウチクトウ、ヤマモモの葉を、さらに落葉広葉樹としてソメイヨシノ、ウメ、トウカエデ、ニセアカシアの新葉の展開した2002年4月から12月の間に合計19回各葉をそれぞれ採取した。各樹木から1調査木につき5から8枚採取し、採取後、直ちに直径1cmのコルクボーラーでくり抜き葉ディスクを作製した。表面殺菌処理また無処理として、葉ディスク3枚を葉の表面をPDA培地に接するように置床した。各処理後、室温下で2週間の培養後にそれぞれ発生した菌類のコロニー数をカウントした。3. 結果および考察1) 常緑および落葉広葉樹の葉から分離された葉面菌と内生菌 常緑および落葉広葉樹8種の葉面菌と内生菌を検出するため、各葉の表面殺菌区および無処理区から分離された菌類を同定した結果、常緑および落葉広葉樹の供試葉からほぼ同様な19属の菌類が分離された。無処理区では、Alternaria sp.、Microsphaeropsis sp.、Cladosporium sp.、Pestalotiopsis sp.の順に高頻度で分離された。また処理区では、Phomopsis sp.、Phyllosticta sp.、Colletotrichum spp.の順に高頻度で分離された。Phomopsis sp.、は、両処理区より高頻度で分離された。またPhyllosticta sp.は無処理区からは全く分離できなかったことから葉面には生息せず、代表的な内生菌であることがわかった。これに対して、Pestalotiopsis sp.、Epicoccum sp.、Botrytis sp.、Phoma sp.、Mucor sp.、Trichoderma sp.は処理区から全く分離できなかったことから、葉内には内生できない代表的な葉面菌であることがわかった。今回行った表面殺菌法の処理区と無処理区では、処理区から分離した菌類は内生菌と特定できるが、無処理区では葉面菌と内生菌の一部が分離されることが推定された。葉面菌を分離するには洗浄法が一般的な方法であるが、本実験の結果から、無処理区から分離された菌類は明らかに処理区の分離数より多く、これらは代表的な葉面菌であるものと考えられた。このことは、Petrini(1991)により、葉面菌は葉の老化に伴い内生すると報告されていることからも推察された。2)葉面菌および内生菌の季節的変動 各処理区から分離した菌類のコロニー数の季節的変動を調査した結果、葉面菌は常緑および落葉広葉樹8樹種で、同様な結果が得られ、4月から12月までの全期間で同様なコロニー数を示した。これに対して、内生菌は、常緑広葉樹では葉面菌同様に季節的な変動はみられなかったが、落葉広葉樹では、新葉展開後、6月頃より12月にかけて増加傾向を示した。以上の結果より、葉面菌は樹種が異なっていても、同様な発生傾向を示した。しかし、落葉広葉樹の内生菌では、新葉が展開後、6月ころまでは全く検出されないことがわかった。次に各葉より発生した菌類の発生率の季節的変動を調査した結果、葉面菌は常緑および落葉広葉樹ともに同様な結果が得られた。すなわち最も高頻度で分離されたAlternaria sp.およびCladosporium sp.は4月から12月の調査中でほぼ全ての期間で同頻度に発生したが、Microsphaeropsis sp.は4月から12月にかけて減少傾向を示し、Pestalotiopsis sp.は8月以降増加する傾向を示した。内生菌では、高頻度で分離されたPhomopsis sp.、Phyllosticta sp.、Colletotrichum spp.の3属菌について比較検討した結果、常緑広葉樹ではPhomopsis sp.とPhyllosticta sp.は、4月から12月までの全期間で分離されたが、Colletotrichum spp.は4月から12月にかけて増加傾向を示した。また落葉広葉樹では、Phomopsis sp.は4月から12月にかけて減少する傾向を示し、Phyllosticta sp.とColletotrichum spp.は7月から発生がみられ、12月まで増加傾向を示した。
著者
佐藤 友美 進藤 智則
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.838, pp.111-122, 2003-01-06
被引用文献数
13

ソフトウエア並みに「柔らかい」回路技術として発表が相次いでいるダイナミック・リコンフィギュアラブル(動的再構成)技術。2002年12月には,ソニーが独自開発のダイナミック・リコンフィギュアラブル技術を携帯型オーディオ・プレーヤに採用するなど,いよいよ民生機器に使われるようになった。
著者
伊藤 史朗 佐藤 友美 栗原 伸一
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.63, pp.77-82, 2009-03

最古のセラピーの一つと言われる園芸活動の効果について学術的な報告が行われたのは、1699年のイギリスにおける研究が最初であり、その後、第一次世界大戦を機にアメリカでは園芸療法が広く普及した。一方、わが国では、園芸療法や園芸セラピーといった言葉が、90年代に入りようやく使われ出した。その後は順調に普及し、現在では多くの医療・福祉施設や教育機関において作業療法や能力開発手段の柱として導入されている。しかしながら、林らによる先行研究などいくつかの分析例は存在するが、医療や教育面における園芸活動の研究が近年大きく進んでいるにもかかわらず、一般的な趣味であるという認識のために、市民に対してもたらされる効果については余り注目されてこなかった。そこで本研究では、そうした園芸活動の持つ心理的効果を広く捉え、地域社会や社会・環境問題などに対する意識や活動との関連性を構造的に明らかにすることを目的とした。具体的には、松戸市周辺において園芸活動を行っている市民とそうでない市民の両者を対象に実施した意識調査の結果に「グラフィカル因果分析」を適用する。