- 著者
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伊藤 史朗
- 出版者
- 専修大学人間科学学会
- 雑誌
- 専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
- 巻号頁・発行日
- no.9, pp.27-43, 2019-03
本研究は、在日フィリピン人のホスト社会に対する社会的距離と逆社会的距離の度合いを分析したものである。エモリー・S・ボガーダス(Bogardus 1933)が考案した社会的距離尺度(Social Distance Scale)とリー、サップとレイ(Lee, Sapp and Ray 1996)による逆社会的距離尺度(Reverse Social Distance Scale)を用い、主に首都圏在住の在日フィリピン人71人の当事者意識を分析した。本調査の結果から以下が明らかとなった。1)在日フィリピン人の日本人に対する社会的距離の度合いは総じて低い。在日フィリピン人の日本人に対する親密度が高いことを意味する。2)9割以上の回答者が、日本社会から概ね受け入れられていると感じている。3)同国人(フィリピン人)間とのソーシャル・ネットワークが日本人に対するそれよりも強い。同国人との強靭なソーシャル・ネットワークを形成・維持しつつ、それが反作用することなく、低い社会的距離の度合いを示した。母国、同国人とのネットワークを堅牢に維持する一方、閉ざされたエンクレーブを形成していない。「適応すれども同化せず」(広田 2003)の「非同化的適応」の姿勢を維持し、ホスト社会に対して高い親密性を持っていることを示す調査結果となった。今後、課題になるであろう「構造的統合」に対しどのような姿勢を持つのかが、ホスト社会の側に問われることになる。