著者
宮崎 晃亘 小林 淳一 山本 崇 道振 義貴 佐々木 敬則 仲盛 健治 廣橋 良彦 鳥越 俊彦 佐藤 昇志 平塚 博義
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.117-122, 2011-12-15 (Released:2012-01-24)
参考文献数
7

Survivinはinhibitor of apoptosis protein(IAP)ファミリーに属する分子で,各種悪性腫瘍において強い発現を認めるが,成人正常臓器ではほとんど発現を認めない。われわれはサバイビンが理想的がん抗原であり,survivin由来のHLA-A24拘束性survivin-2B80-88(AYACNTSTL)がcytotoxic T lymphocyte(CTL)応答を誘導することを以前に報告した。この研究結果をもとに,2003年9月に進行・再発口腔がん患者に対してsurvivin-2Bペプチドを用いた臨床試験を開始し,安全性と抗腫瘍効果を評価した。survivin-2Bペプチドは14日間隔で計6回接種した。その結果,口腔がん患者に対するペプチド単剤投与の安全性が確認されるとともに,その有効性が示唆された。さらに,2006年9月にsurvivin-2Bペプチドに不完全フロイントアジュバント(IFA)とinterferon(IFN)-αを併用した臨床試験を開始した。survivin-2BペプチドとIFAの混合液を14日間隔で計4回接種し,IFN-αは週2回あるいは1回皮下投与した。現在のところ,重篤な有害事象は出現していない。IFAとIFN-αを併用した臨床試験では,単剤投与と比較してペプチド特異的CTLを効率良く誘導し,安全性も容認されることが示唆された。本療法は口腔がん患者に対する新たな治療法の一つとして有用と考えられた。
著者
鳥越 俊彦 佐藤 昇志
出版者
札幌医科大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

HIVに対するprotein therapyを考案し,その基礎的研究を進めている.(1)HIV tat蛋白質の11アミノ酸から成る細胞膜透過ドメインと,GFP蛋白質との融合蛋白質を作成し,細胞内への浸透性について解析した.Tat-GFPは細胞膜を透過しなかったが,Tat-Survivin-GFP蛋白質は透過した.Tat濃度依存性,温度感受性を確認した.ドミナントネガティブSurvivin蛋白質を腫瘍細胞に浸透させたところ,細胞にApoptosisを引き起こすことに成功した.(2)つぎに,Tat細胞膜透過ドメインを含む合成ペプチドが細胞膜を透過することを共焦点レーザー顕微鏡によって確認した.HIV nef蛋白質が発現を抑制するHLA-A分子の細胞質内ドメインから,HIV nef蛋白と会合すると予想される領域を推定し,この領域とTatドメインとの融合合成ペプチドを作成した.現在,Nef発現細胞を作成し,この合成ペプチドがNefの作用を抑制するかどうか実験を行っている.(3)細胞のapoptosisを促進するミトコンドリア蛋白質SmacのN末端機能ドメインとTatドメインとの融合合成ペプチドSmac7-Tatを作成した.このペプチドは細胞内に浸透し,細胞にapoptosisを引き起こすことを確認した.HIV proteaseが発現しているHIV感染細胞内で活性化するような,HIV protease認識配列を組み込んだTat-smac7ペプチドを設計した.これがHIV感染細胞に対して選択的にapoptosisを引き起こすことができるかどうか,今後,検証する.
著者
曽ヶ端 克哉 染谷 哲史 佐藤 卓 鳥越 俊彦 佐藤 昇志 平田 公一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.1115-1118, 2005
被引用文献数
1

自動吻合器を使用したPPH (procedure for prolapse hemorrhoids) 法により痔核手術を施行したが,術後に巨大な直腸粘膜下血腫を生じ排便困難になった症例を経験した.患者は69歳女性で,痔核の脱出を主訴に外来受診し, Goligher分類ではIII度内痔核であったため手術を施行した.手術は肛門拡張器を肛門内に挿入し, Purse-string Suture Anoscopeを順次回転させながら2-0プロリンにて直腸粘膜に巾着縫合を全周にかけ,自動吻合器により切除を行った.巾着吻合の糸を索引した際に下腹部痛,嘔気および徐脈・血圧低下を訴え,術後も下腹部の違和感が残っていた.術後4日目になっても便が排出されず,肛門診の際吻合部に疼痛を訴えたため術後7日目に骨盤CT施行したところ,直腸に直径約7cmの粘膜下血腫を認めた. PPH法は手技も簡便で術後痔痛が少ないなど利点も多い.しかし安易な施行は合併症を起こすことを認識し,適応と手技を十分に検討していく必要があると思われた.
著者
平田 公一 佐藤 昇志 鳥越 俊彦 古畑 智久 大村 東生 亀嶋 秀和 木村 康利 九冨 五郎
出版者
札幌医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

消化器領域あるいは乳腺領域の超進行切除不能癌あるいは再発癌に対し、サバイビン2Bペプチドを用いた癌ペプチド療法を8例に実施した。6例に明らかな免疫学的反応を認め、臨床効果についてはrecist基準では6例にSD、2例にPDであった。尚、注射局所反応を除くと、有害事象についてはグレードIの発熱以外に面倒なものを認めなかった。したがって全例でプロトコル上の臨床研究は可能であった。一方、従来よりMHCクラスI発現が無いか極めて低い癌細胞のあることが知られており、それらについては、発現亢進のためにHDAC阻害剤の投与の有用性が動物実験的研究において知られていた。そこで適応症例については、ワクチン療法前にHDAC阻害剤の経口投与を試みた。登録症例研究計画期間終了直前に生じたことにより、現在、進行中であり、今後の分析対象とする。研究については安全に実施できたと言えるが、登録症例数の円滑な増加がみられないことが課題として残った。
著者
一宮 慎吾 氷見 徹夫 佐藤 昇志
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)は高親和性抗体の産生に重要で、また可塑性を示す一方、ヒトTfh細胞の機能制御機構や疾患との関連については未だ不明な点が多い。本研究では臨床検体を用いてヒトTfh細胞の医学的意義や機能制御機構を探ることを目的とした。研究の結果、Tfh細胞は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因である肥大扁桃に多く含まれ、またアレルギー性鼻炎や気管支喘息患者の末梢血液中のTfh細胞サブセットの構成比が健常人と比較して異なっていた。不均衡な分化を示すTfhシフトあるいはTfh2シフトに、ALOX5関連脂質メディエーターやPOU2AF1転写制御因子が関係している可能性が見出された。