著者
佐藤 真行 新山 陽子
出版者
日本フードシステム学会
雑誌
フードシステム研究 (ISSN:13410296)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.13-24, 2008-02-29 (Released:2010-12-16)
参考文献数
24
被引用文献数
6 5

Recently, with the social requirement, traceability systems come into use for recognition of thehistory or origin of the food product. However, there remain important problems: what and how muchinformation should be supplied to consumers. Some people argue that the information should beoffered as much and detailed as possible. Others suggest that because a deluge of information is notdesirable, we should sort out or summarize the information and then provide to consumers.In this paper, for inquiring the desirable quantity of information with traceability systems, weanalyze the consumers' ability of processing information by using discrete choice models. Throughthe experiment by increasing the quantity of information, two interesting results are obtained. First, we identify the point at which the effect of information overload occurs. The result shows thatinformation entropy indexes are lowest at 6 attributes and become higher at more than 6 attributes.These imply that information overload effect appears around 6 attributes. Second, “knowledge” and“product involvement” are found to be dep ressant factors of information overload. People who havehigh knowledge or high involvement have relatively low entropy index.From these findings, we can argue that to provide too much information to consumers isproblematic because it makes consumers confuse. To avoid this, we should select what is importantinformation for them. It is also important to offer an appropriate education and enlightenment inorder to heighten their knowledge and involvement.
著者
青島 一平 内田 圭 丑丸 敦史 佐藤 真行
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.238-249, 2017-07-31 (Released:2017-07-31)
参考文献数
36

都市緑地は都市域における重要な生態系サービス源であり,都市住民の生活満足にも貢献している。しかしながら,都市部における人口増加に伴って,緑地が提供する生態系サービスが十分に考慮されずに都市開発が進められている。都市部の緑地が軽視されてしまう理由として,生態系サービスが可視化されていないことが挙げられる。市街地に点在する都市緑地が果たす役割は生態系サービスの中でも文化的サービスによるところが大きく,その価値は一般的な市場では取引できない性質のものである。本研究では,こうした非市場価値を貨幣評価するためにLife Satisfaction Approach(LSA)を適用する。この手法を用いることで,人々の主観的な生活満足度が緑地から受けている影響を貨幣単位で評価し,それを緑地の価値として認識することができる。本研究は兵庫県の六甲山系を含む阪神間地域を事例に,GIS(地理情報システム)を利用して地理データを独自に構築した。都市緑地については学校林,社寺林,公園緑地を特定した。その上で,同地域で社会調査を実施し,それらデータを合成して緑地の価値評価を行った。その結果,生活満足度をベースにしたときに,都市緑地は森林の6倍程度の価値を有することが示された。さらに本研究では心理学分野で使われるK6指標を採用することで,緑地が近隣住民の精神的健全性に与える影響についても分析した。結果として,都市緑被率の高いところに居住する人ほど,精神的健全性が良好な状態にある傾向を示した。さらに都市緑地の中でも社寺林が精神的健全性に与える影響が顕著であることを示した。本研究では,LSAを適用して森林と都市緑地の価値を区別して推定した。それによって都市緑地は近隣住民の主観的福利に大きく貢献していることが明らかとなり,主観的福利の観点から都市緑地の評価を行う必要性が示された。一方で森林については,LSAでは価値の過小評価につながってしまう可能性が示唆された。
著者
山川 肇 佐藤 真行 杉浦 淳吉 福岡 雅子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.2-2, 2010

本稿では、販売包装に関する小売事業者の2Rの取り組みとして肉の袋入り販売を取り上げ、その先進事例の実態と容器包装の発生抑制効果について考察した。その結果、1)袋売りの対象となる肉はさまざまであり、袋の種類も事業者により違いがある、2)手間の増加があるという店舗もあったが大きな問題となっておらず、一方、コスト減や顧客増のメリットも見られる、3)鶏・モモ肉の場合、袋入りの売上割合は15~30%であり、すでに一定程度、消費者に受容されている、4)買うことはあるが毎回は購入しない主な理由は、安売りのときだけ買う、まとめ買いのときのみ買う、売り切れが多い、などであることがわかった。また5)今回の測定サンプルでは、真空パックを除き、袋包装の包装資材重量は2g前後、トレイ包装では6g前後となり、さらにごみ処理される包装ごみの削減率を試算したところ、1パックあたり6~52%となった。
著者
蔡 佩宜 篭橋 一輝 佐藤 真行 植田 和弘
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-12, 2014 (Released:2014-08-01)
参考文献数
30

本研究は、設楽ダムを事例に、公共事業をめぐる関係者間の利害対立の構造を分析し、社会的合意形成を阻害する要因を考察するとともに、全国のダム検証に係る「関係地方公共団体からなる検討の場」の取組みの意義と限界を明らかにすることを目的にしている。本研究では、まずダムの必要性をめぐって開発主体である国や県と反対派住民の主張が対立する中心的論点について、行政が提示した将来の水需要量の数値に問題があることを示した。そして、ダム建設についての利害対立を調整する制度や手段について、設楽ダムのような直轄ダム事業の検証に係る審議会は事業者と関係公共団体が中心に行うのに対して、補助ダム事業の検証は地域ごとに多様な利害関係者と制度設計の下で審議を行うという違いがあり、両者を比較しながら、ダム検証についての現状制度の不十分性を指摘した。
著者
佐藤 真行
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年度は環境の価値の経済学的定式化とその測定手法の開発にとりくみ、それら環境評価手法に基いた環境政策に関する研究を行った。本年度は研究計画の最終年度にあたるため、これまでの研究蓄積を総括し、本研究課題の成果を論文にまとめ、学術雑誌等に投稿し掲載された。第一に、離散選択モデルを環境問題とりわけ建築廃棄物問題に応用した研究「建築廃棄物問題と住宅政策」が査読を経て『経済政策ジャーナル』に掲載された。これは昨年度の研究に基づくものであるが、今年度の改訂の際に住宅選択時の環境負荷にかんする消費者選好の多様性を分析するために、計量モデル(Random Parameter Logit Model)を選好パラメタの相関を含めるかたちに展開し、そうした選好の多様性をふまえて建築廃棄物問題と現状の住宅政策にかんする考察を行った。第二に、とりわけ情報の不完全性と繰り返される消費者行動と環境の認識を分析するための研究「環境・品質情報の信頼性と消費者行動」が査読を経て『国民経済雑誌』に掲載された。本研究では離散選択モデルと計数データモデルを併用することで、繰り返し選択と環境認識の関係を分析した。また、先の研究とあわせて、消費者選択の頻度によって情報の影響の差異があり、環境評価手法における注意点をあわせて整理した。第三に、情報の質と量が消費者行動に影響することが定量的に示した以上の研究を発展させ、情報の受け手側の性質に注目して情報過負荷現象の発生と抑制のメカニズムを分析する研究に着手した。本年度は、消費者への情報提供や教育・啓蒙活動の影響を分析する研究を行った。知識や関心が高くなければ環境情報は適切に処理されず選択における混乱(行動誤差)の原因になること、そして知識の提供や専門家とのコミュニケーションはそうした誤差を抑制する作用があることを示した。