著者
内田 圭 浅見 佳世 武田 義明
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.497-502, 2006 (Released:2007-11-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1

A secondary forest was created by afforest of Pinus densiflora in Mt. Rokko which was bare mountain. In recent years, the vegetation has changed due to pine wilt disease and progress of succession, however the changes in secondary forests that have shifted from bare mountain regions have not been clarified. The objective of this study was to comprehensively understand the changes in the areas of secondary forests and species diversity from the 1950's to the present. It was found that succession has progressed and the areas of Quercus serrata forests that have low species diversity have increased. A decrease in the species diversity was not confirmed in Pinus densiflora forests; however the forests have been changed to a community that has many component species of evergreen forests. Based on these results, it is suggested that the species diversity in secondary forests whole Mt.Rokko will decrease in the future. Further, the results indicated that the component species of summer-green forests that had existed in Mt.Rokko before became bare mountain would disappear.
著者
松村 俊和 内田 圭 澤田 佳宏
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.193-218, 2014-12-25 (Released:2015-07-03)
参考文献数
225
被引用文献数
8

1. 世界的に生物の生息空間として重要な農地の辺縁部は,土地利用の変化によって急速に生物多様性が減少しつつある.日本の水田畦畔に成立する半自然草原は草原生植物を多く含むが,圃場整備や耕作放棄によって植生は大きく変化しつつある. 2. 本論文は日本の水田畦畔植生に関する知見を生物多様性保全の観点から整理し,生物多様性に影響を与える要因とその保全策および研究の方向性を示すことを目的とする. 3. 1990 年以前,畦畔草原は植生の研究対象としては注目されなかったが,1990 年代に非整備地の畦畔草原の重要性や,圃場整備および耕作放棄の影響が報告された.2000 年以降は保全方法の提案,裾刈り地の種多様性,同一地域内での比較,埋土種子の調査など多様かつ数多くの研究が行われている. 4. 伝統的な景観を維持する棚田やその畦畔は,生物多様性の保全機能,生態的防除機能,環境保全機能を有し,また文化的価値や景観的価値が高い. 5. 水田畦畔での種多様性の維持に関する仮説は,時間的・空間的に大規模な要因から小規模な要因まであり,長期的な歴史など大規模な要因はほとんど検討されていない. 6. 畦畔草原は歴史的に関連の深い周辺の草原から強く影響を受けてきたと考えられ,その植物相の成立の検証には,歴史学の史料,水田景観,花粉,プラントオパール,微粒炭,遺跡の植物遺体などが参考になる.また,全国的な植生調査および生物地理学や集団遺伝学的な手法によって畦畔草原の種組成の成立機構を明らかにできる可能性がある. 7. 畦畔には多様な環境条件や管理方法があるが,これらと植生との対応は未解明な部分が多い.管理との関連では,草刈り頻度や時期についての研究が多くあるものの,草刈り高さなどの草刈り方法と植生との対応はあまり研究されていない. 8. 耕作放棄によって水田の面積は減少し,畦畔草原における種多様性の減少と種組成の変化が急速に起こっている.放棄対策には希少種を多く含む場所(ホットスポット)の抽出,草刈り機械や方法の効率化,外部支援,放牧などがある. 9. 圃場整備によって,畦畔草原では種多様性の低下や外来種の増加など,植生は大きく変化する.この対策として圃場整備の工事段階では表土の再利用,種子供給源の配置,農業土木的方法の改善が,圃場整備後の段階では播種,刈り草の撒き出し,外来種の除去,保全の場としての整備地の活用などがある. 10. 調査・解析方法の課題として,種多様性の比較方法や草原生植物のリストの作成がある. 11. 畦畔草原は現状把握や保全が急務であるため,具体的な調査手法や保全手法の確立に向けた提案を示した.さらに,畦畔草原を含む半自然草原全体の保全の必要性を指摘した.
著者
小山 明日香 内田 圭 中濵 直之 岩崎 貴也 尾関 雅章 須賀 丈
出版者
Pro Natura Foundation Japan
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.27-35, 2020 (Released:2020-09-29)
参考文献数
15

霧ヶ峰高原は多くの絶滅危惧動植物の生息地であり,国内有数の観光地でもある.しかし近年ニホンジカによるニッコウキスゲの被食被害が深刻化し,対策として複数の防鹿柵が設置されている.本研究では,亜高山帯半自然草原での防鹿柵設置による生物多様性保全効果を検証することを目的に,植物・昆虫調査およびドローン画像解析を行った.結果,植物の開花種数,開花数および絶滅危惧種の開花種数はいずれも柵内で柵外より多く,チョウおよびマルハナバチの種数・個体数も柵内で柵外より多かった.また,ドローン空撮画像をもとに防鹿柵内外のニッコウキスゲの花数を計測し,防鹿柵による保全効果をより広域で視覚化した.本成果は,防鹿柵の設置が観光資源植物および絶滅危惧動植物を保全するうえで不可欠であることを示している.
著者
青島 一平 内田 圭 丑丸 敦史 佐藤 真行
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.238-249, 2017-07-31 (Released:2017-07-31)
参考文献数
36

都市緑地は都市域における重要な生態系サービス源であり,都市住民の生活満足にも貢献している。しかしながら,都市部における人口増加に伴って,緑地が提供する生態系サービスが十分に考慮されずに都市開発が進められている。都市部の緑地が軽視されてしまう理由として,生態系サービスが可視化されていないことが挙げられる。市街地に点在する都市緑地が果たす役割は生態系サービスの中でも文化的サービスによるところが大きく,その価値は一般的な市場では取引できない性質のものである。本研究では,こうした非市場価値を貨幣評価するためにLife Satisfaction Approach(LSA)を適用する。この手法を用いることで,人々の主観的な生活満足度が緑地から受けている影響を貨幣単位で評価し,それを緑地の価値として認識することができる。本研究は兵庫県の六甲山系を含む阪神間地域を事例に,GIS(地理情報システム)を利用して地理データを独自に構築した。都市緑地については学校林,社寺林,公園緑地を特定した。その上で,同地域で社会調査を実施し,それらデータを合成して緑地の価値評価を行った。その結果,生活満足度をベースにしたときに,都市緑地は森林の6倍程度の価値を有することが示された。さらに本研究では心理学分野で使われるK6指標を採用することで,緑地が近隣住民の精神的健全性に与える影響についても分析した。結果として,都市緑被率の高いところに居住する人ほど,精神的健全性が良好な状態にある傾向を示した。さらに都市緑地の中でも社寺林が精神的健全性に与える影響が顕著であることを示した。本研究では,LSAを適用して森林と都市緑地の価値を区別して推定した。それによって都市緑地は近隣住民の主観的福利に大きく貢献していることが明らかとなり,主観的福利の観点から都市緑地の評価を行う必要性が示された。一方で森林については,LSAでは価値の過小評価につながってしまう可能性が示唆された。
著者
原田 真美 東海 正 内田 圭一 清水 詢道
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.894-904, 2006-09-15
被引用文献数
2 3

東京湾内湾域におけるマアナゴとのヌタウナギ分布を検討するために,あなご筒漁船の漁獲操業日誌(1994〜2002年)から漁区別CPUE(漁獲量kg/筒1本)の月別分布図を作成した。マアナゴは,春季に来遊,着底した後,呼称めそあなご(全長35cm未満のマアナゴ)として内湾域の千葉県寄りの漁場で8月頃から混獲され始め,全長35cmに達したものが11月頃から銘柄あなごとして水揚げされ,内湾域全域に分布を広げる。ヌダウナギは,主に内湾域南西部の中ノ瀬周辺の水深30m以深に分布した。これらの分布や季節変化に影響する要因についても考察した。
著者
東海 正 塩出 大輔 内田 圭一
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

この研究ではヌタウナギ類が乱獲に陥るメカニズムを明らかにした。東京湾や相模湾で採集査したヌタウナギ標本について生殖腺を調べることで,雌雄ともに成熟全長を35cm以上と,産卵期は9月頃と推定した。体長組成の年齢群を判別して求めた全長35cmまでの成長曲線より,成熟全長35cmまでに4年以上要し,これに卵の発達に必要な1年を加えて初産年齢を5歳と推定した。さらに,一回産卵数20~50個と隔年産卵も含めて,こうした低い増殖能力が漁業による乱獲に陥りやすい理由である。
著者
東海 正 胡 夫祥 塩出 大輔 内田 圭一 荒川 久幸
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、海洋におけるマイクロプラスチック(MPs)を採集する際に標準的に用いられるニューストンネットの採集特性を明らかにして、MPsの大きさ別の推定密度の精度向上を図り、ニューストンネットによるMPs採集方法の標準化に貢献する。このために、仕様の異なるニューストンネット(ニューストンネットやマンタネット、標準的に用いられる0.33mmやその他目合)の網目選択性を表す特性曲線のパラメータを比較操業実験から推定する。また、回流水槽での実物実験やCFDを用いて、海表面を曳網される際の網内外の流速分布を求め、濾水効率を推定する。これらの結果をもとに、ネット採集数と濾水量からの補正方法を提示する。
著者
内田 圭亮 小野 裕明 奥 武憲
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.282-286, 2017-06-10 (Released:2017-06-13)
参考文献数
3

昨今様々なIOTの進展により,企業は自社製品をどのように顧客が活用しているかというビッグデータを取得できるようになったが,未だビジネス上の成果に繋げている企業は未だ多くはない.当社では@Remoteという顧客のMFP等の画像機器をリモート管理する仕組を有しており,保守関連情報がビッグデータとして蓄積されている.このビッグデータを分析することにより顧客理解を進め,新たな価値提供とビジネス上の成果創出を行っている.本稿ではMFPビジネス上の成果を創出している2つのアナリティクス·プロジェクト,自社の顧客維持のために適切な営業情報を適切なタイミングでセールスアカウントに提供するマーケティング·アナリティクス,MFPの故障予兆を捉えて故障前に予防保守情報をカスタマーエンジニアに提供するプレディクティブメンテナンス·アナリティクスについて紹介する.双方共に,最終的なビジネス成果は顧客と直接相対する担当者が創出するものであり,このためデータ分析結果の現場での活用方法に徹底的に拘った.
著者
吉田 空久 内田 圭一 宮本 佳則 南場 敬志 柿原 利治
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.2-9, 2013 (Released:2013-01-24)
参考文献数
22

延縄や籠網などの受動的漁具では,漁具の浸漬時間や操業時間帯などの時間的要素が漁獲の成否に与える影響が大きい。本研究では,東京湾のあなご筒漁業を対象として,1 尾目のマアナゴが入筒した時刻を計測する装置を開発した。開発した計測器は,室内実験で動作検証を行った上で,実海域での計測実験を行った。延べ 192 件のうち 85 件の実験筒でマアナゴの入筒時刻を計測できた。夜行性と考えられているマアナゴであるが,日中の漁具投入にも関わらず,漁具投入後 1 時間以内に 35%,さらに全体の 63% が日没前に入筒していた。
著者
名越 充 橋詰 博行 小西池 泰三 廣岡 孝彦 内田 圭治
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.665-667, 2008 (Released:2008-11-21)
参考文献数
4

Calcified tendinitis is a common shoulder disease accompanied with severe pain. We experienced many cases of calcified tendinitis over some short periods in a year. We examined the correlation between the occurrence of calcified tendinitis and seasons. 212 patients (males 72, females 140) with acute calcified tendinitis visited to 12 hospitals during two years (January. 2005-December. 2006) in the Chugoku and Shikoku area were investigated. The average age was 57.1 years old. The day of the 1st medical examination and the numbers of cases were examined. The correlation between the occurrence and 4 seasons (March-May, June-August, September-November, December-February) and the correlation in the occurrences between each areas were statistically analyzed. The correlation between the occurrence and seasons was not seen (Wilcoxon signed-rank test). In winter, the mean value of the number of cases of calcified tendonitis tended to be fewest. There was a strong correlation in occurrence between the Sanyo West and Shikoku Setouchi areas (Spearman correlation coefficient ; 0.53997, P=0.0065). More cases and analysis in various points of view are needed for evidence of the correlation between the occurrence and season.
著者
武田 誠一 上野 公彦 山口 繁 萩田 隆一 内田 圭一
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.55-64, 2003-07-15
参考文献数
10

2001年台風第15号,および2002年台風第21号が東京湾を通過する際に実海面で得られた資料を基に,波高の短期統計量等について解析を行った。資料は,東京水産大学練習船海鷹丸ならびに神鷹丸に設置されている,マイクロ波式波高計により計測されたものである。解析の結果,一般船舶や漁船の安全運航に対して,有義波高や最大波高を推定する従来の方法が,台風通過時においても有用であることが確認された。一方,台風通過時の海面においてもP-M型スペクトルで一様に近似して表現することが難しいことが確認された。
著者
久保田 敏夫 内田 圭一 植田 俊夫 奥谷 忠雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.381-383, 1988-07-05
被引用文献数
3

Simple and rapid determination of phosphorus in sediment was studied by graphite furnace (GF) AAS using a phosphorus hollow cathode lamp (P-HCL). A Zr-treated graphite tube was used for GF. For each analytical procedure a 20 mm^3 of 1% Zr solution was injected into the graphite tube and then a 10 mm^3 of sample solution containing P was injected. Digestion procedure was as follows : The sediment sample of 0.2 g was decomposed with HNO_3-HClO_4-HF, then the digest was evaporated to dryness. The residue was dissolved with 3 cm^3 6 M HCl, and diluted to 50 cm^3, and P was determined by GF-AAS. All the values obtained by the proposed method agree well with the reference value (Pond sediment, NIES No. 2) and those by Molybdenum Blue spectrometry (River sediment and Submarine sediment).
著者
内田 圭一
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

一般的に,漁業では狙った生物以外の生物が混獲されることがある。直接的に海面下の環境をモニタリングすることのできない漁業者は,種々の生物の混獲状況から漁場の環境変化を推し測っている。本研究では水温や底質に注目し,あなご筒漁業で漁獲される混獲生物の関係を調査した。その結果,混獲個体数が多かった種より,幅はあるものの混獲時の水温との関係が明らかになるとともに,これらの種は環境指標生物として有効とあることが示唆された。今回対象としたあなご筒漁では,飼育実験から水温と混獲の関係は,対象生物の摂餌行動に依存しているものと考えられた。