- 著者
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上原 隆
住吉 太幹
倉知 正佳
- 出版者
- 日本生物学的精神医学会
- 雑誌
- 日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.3, pp.154-160, 2015 (Released:2017-02-16)
- 参考文献数
- 34
統合失調症の病態は未だ明らかでなく,予防法および根治的治療法は開発されていない。神経発達障害と神経変性による脳の形態学的変化が,統合失調症の病態生理に関与する可能性が指摘され,症状が顕在化する以前(前駆期)にすでに生じているとされる。特に parvalbumin 陽性ガンマアミノ酪酸(GABA)介在神経細胞の障害が統合失調症の認知機能障害に関与していると考えられている。ゆえに,これらの形態学的変化に作用する薬物が,統合失調症の予防・根治療法につながると期待される。神経栄養因子様作用を有する低分子化合物である T-817MA は神経突起伸展の促進作用や酸化ストレス抑制作用を有し,アルツハイマー病などの神経変性疾患の治療薬として開発された薬物である。われわれは統合失調症モデル動物における形態学的,行動学的異常を,T-817MA が改善することを見いだした。これらの所見は,T-817MA が統合失調症の予防的・根治的治療薬として有望なことを示唆する。