著者
上原 隆平 寺本 幸生
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.71, pp.59-64, 2006-07-03

折り紙は伝統的な紙工芸であるが,近年,科学としての認知が高まり,数学的な研究が進められている.本論文ではもう一つの伝統的な紙工芸である,飛び出す絵本を取り上げる.飛び出す絵本をデザインする問題を定式化し,その複雑さを議論する.そして本を閉じる問題も,本を開く問題も,ともにNP困難であることを示す.Origami is the centuries-old art of folding paper, and recently, it is investigated as science. In this paper, another hundreds-old art of folding paper, a pop-up book, is studied. A model for the pop-up book design problem is given,and its complexity is investigated. We show that both of the opening book problem and the closing book problem are NP-hard.
著者
日野 光紀 小野 靖 小久保 豊 杣 知行 田中 庸介 小俣 雅稔 市野 浩三 上原 隆志 工藤 翔二 葉山 修陽
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.347-354, 2002-04-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
17

1998年日本結核病学会予防委員会より院内感染対策についてのガイドラインが指導され, ツベルクリン反応 (以下, ツ反) 二段階法が推奨されている。これにはブースター効果を含めた結核感染診断に際して対照値 (ベースライン値) の記録を必要とする。われわれは612名の医療関係者に対しツ反二段階法を行った。その結果を分析し至適方法を確立すること。さらに, ツ反施行前に質問用紙を用いて過去のBCG接種歴, ツベルクリン反応歴およびその反応値を聴取し, その保存状況を把握することを目的とした。ほとんどの者が過去の測定値管理が不十分であった。二段階法の結果, 発赤径, 硬結径ともにブースター効果を認めた。さらに, 年齢別の硬結径の拡大径で壮年群のほうがより拡大傾向にあった。さらに, 職種別, 勤務部署別の計測値には統計学的有意差は得られなかった。二段階法ツベルクリン検査1回目の発赤径値が30mm以上の計測値でありながら2回目で10mm以上の拡大を認める被検者が多くいることから, 院内感染管理の上でこのような対象者に対しても二段階法を施行することが必須であると考えられた。
著者
伊東 啓 柿嶋 聡 上原 隆司 守田 智 小山 卓也 曽田 貞滋 John Cooley 吉村 仁
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.577-578, 2016-03-10

北米には、13年もしくは17年に一度、大量発生するセミが生息している。このセミはその発生周期から周期ゼミ・素数ゼミと呼ばれており、なぜ素数周期で大発生するセミが誕生したのかは未だに大きな謎である。これまでの研究から、様々な周期が混在したときに、交雑の観点から素数周期だけが生き残ることが数値計算によって導かれていたが、その前段階である周期性そのものの進化は再現されていなかった。我々は、個体ベースのシミュレーションモデルを構築し、氷河期(平均気温の低下)という環境下でセミの周期性が進化する様子を再現することに成功した。これにより、氷河期による成長スピードの低下という危機的状況が周期性進化に大きく関係していることが示唆された。本結果は、環境変動によって進化が引き起こされることを明確に示したものである。
著者
上原 隆 住吉 太幹 倉知 正佳
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.154-160, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
34

統合失調症の病態は未だ明らかでなく,予防法および根治的治療法は開発されていない。神経発達障害と神経変性による脳の形態学的変化が,統合失調症の病態生理に関与する可能性が指摘され,症状が顕在化する以前(前駆期)にすでに生じているとされる。特に parvalbumin 陽性ガンマアミノ酪酸(GABA)介在神経細胞の障害が統合失調症の認知機能障害に関与していると考えられている。ゆえに,これらの形態学的変化に作用する薬物が,統合失調症の予防・根治療法につながると期待される。神経栄養因子様作用を有する低分子化合物である T-817MA は神経突起伸展の促進作用や酸化ストレス抑制作用を有し,アルツハイマー病などの神経変性疾患の治療薬として開発された薬物である。われわれは統合失調症モデル動物における形態学的,行動学的異常を,T-817MA が改善することを見いだした。これらの所見は,T-817MA が統合失調症の予防的・根治的治療薬として有望なことを示唆する。
著者
上原 隆浩 泉尾 佳苗
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B4P2138-B4P2138, 2010

【目的】重症心身障害児/者の中でGMFCSレベル5を示す児/者は姿勢コントロールが困難で姿勢変換に介助を必要とし、1日を通して取れる姿勢が限られ、背臥位で過ごす時間が多くなる。背臥位で長期間過ごすことにより脊柱側弯、胸郭変形、風に吹かれた股関節などの変形が起こり、非対称姿勢を呈するようになる。非対称姿勢は重力の影響を多く受けており、非対称姿勢の改善には重力を考慮したポジショニングの提供が必要であると考えられる。背臥位での下腿下垂法は下肢の重量を軽減させることで、変形予防、体圧不均等軽減等が可能であるが、重症心身障害児施設入所者の場合、介助者は複数で多職種となり、ポジショニングの統一が難しい場合が多く、また下腿を下垂させる為の設定も必要となり、日常生活への導入が難しい。今回、当園入園の男性に対し24時間姿勢ケアの一つとして背臥位での下腿下垂法を実施。重力の影響を考慮したポジショニングを円滑に日常生活へ導入する一手段となることを目的とし、病棟職員との協動により24時間を考えたポジショニングが定着した症例の取り組みの内容について報告する。<BR>【方法】症例は37歳男性、小頭症。平成13年10月当園入園。捻れを伴った脊柱左凸側彎あり。GMFCSレベル5。頚部の軽度随意回旋はみられるが、その他の自発運動は乏しい。声かけにより笑顔を見せ、発声することもある。食事は胃瘻より摂取。日常的に取る姿勢は背臥位が多く、その他に食事時は右背側臥位、午後より1時間程度腹臥位にて過ごす。平成20年11月、評価項目として背臥位での体圧分布、回旋モーメントの評価。1時間ごとの24時間の写真による姿勢の評価を行った。評価後理学療法時間を利用し、下腿下垂法を実施。病棟内プレイルーム、ベッド上で実施する為に、牛乳パック、すのこを使用した台を作成。その上で背臥位をとるようにした。日中過ごすプレイルーム内、移動、活動場面で使用する車椅子上、夜間ベッド上で下腿下垂法を取れるようにし、病棟看護師長、担当看護師に方法、効果を説明、理解を得た後、平成21年1月、病棟職員へ伝達。統一したポジショニングを提供した。<BR>【説明と同意】今回の発表にあたり、症例の保護者への内容の説明を口頭及び文章で行い、同意を得ている。<BR>【結果】数回の病棟職員への伝達後、24時間を通してのポジショニングが統一して出来るようになった。体圧の不均等が軽減し、下肢の脱力や持続的は脊柱の伸張が可能になった。下腿下垂法実施前は左大転子部に褥瘡があったが、実施後約2ヶ月で治癒となった。また保護者から「外泊時同様のポジショニングを行ったが以前と比べ、力が抜けやすくなり夜間もよく眠るようになった」との意見もあった。<BR>【考察】下腿を下垂させることで不安定な下肢を安定させることが出来、下肢の重量による骨盤、脊柱へのねじれ、体圧分布不均等が軽減出来た。また頭部に使用していた枕を低くすることで、頭部の床への押しつけも軽減し、全身的に脱力することが可能になったと考えられる。統一したポジショニングの実施については、まず病棟看護師長、担当看護師といったキーパーソンに方法や効果を説明し、十分な理解を得た上で病棟に伝達したことで、理学療法士が確認できない時間のポジショニングの確認が徹底出来。またプレイルーム、車椅子上、ベッド上で行うポジショニングのクッションを統一することで、ポジショニング内容及び実施が定着しやすかったと考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】重症心身障害児/者の変形を進行させる要因である重力や支持接触面の影響はあらゆる姿勢、場面で常時受けているものであり、生活を支援する上で重要な要因である。その中でポジショニングは変形予防や自発活動の促通を行うことが可能であり、24時間を通して支援する必要があると考えられる。今回の報告により多職種、複数の職員へ24時間を考えたポジショニングを伝達し、また使用物品を安価で手に入れやすいものを使用したことは介助者の知識、技術や場所に関係なくポジショニングを提供する方法が提示できると考えられる。今回の24時間のポジショニングについて、今後その経過を追うことで下腿下垂法及び24時間姿勢ケアの効果,問題点を検証できるのではないかと考える。
著者
伊藤 剛志 清見 礼 今堀 慎治 上原 隆平
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.9, pp.1-8, 2009-01-23

本稿では 「じゃばら折り」 に関する新しい折り紙の問題を提案する.本問題では与えられた n 個の山折り/谷折りの割り当てに対して,紙をその割り当てに従って等間隔に折ることを目的とする.扱う紙のモデルは以下の通り. (1) 紙は厚み 0 で重ねて一度に複数枚折ることができる. (2) それぞれの折り状態は平坦である. (3) それぞれの折り目はそこで最後に折られたときの折り状態を記憶する. (4) 紙は n 箇所の折り目を除いて剛体である.このモデルにおいて,与えられた割り当てを実現する効率の良い折り操作を見つけることがこの問題の目的である.一般の山谷割り当てに対する問題を単位長折り問題と呼び,山谷割り当てが 「MV MV MV ...」という形をしているときは特にじゃばら折り問題と呼ぶことにする.アルゴリズムの複雑さは折りの回数によって測り,折りを開く回数は無視する.この問題には自明な上界、と自明な下界 log (n + 1) が存在する.本稿ではまず以下の非自明な 2 つの上界を示す. (a) どんな山谷割り当てでも高々 [n/2] + [log (n+1)] 1 回の折りで実現することができる. (b) 任意の ∊>0 に対してじゃばら折りは 0 (n∊) 回の折りで実現することができる.次に以下の非自明な下界を示す. (c) ほとんどすべての山谷割り当ては Ω (n/log n) 回折らなければ作ることができない結果 (b) と (c) より,じゃばら折り問題は単位長折り問題の中では簡単な部類に入ることがわかった.We introduce a new origami problem about pleats foldings. For a given assignment of n creases of mountains and valleys, we make a strip of paper well-creased according to the assignment at regular intervals. We assume that (1) paper has 0 thickness and some layers beneath a crease can be folded simultaneously, (2) each folded state is flat, (3) each crease remembers its last folded state made at the crease, and (4) the paper is rigid except at the n given creases. On this model, we aim to find efficient ways of folding a given mountain-valley assignment. We call this problem unit folding problem for general patterns, and pleats folding problem when the mountain-valley assignment is "MVMVMV…" The complexity is measured by the number of foldings and the cost of unfoldings is ignored. Trivially, we have an upper bound n and a lower bound log [(n+1).] We first give some nontrivial upper bounds: (a) any mountain-valley assignment can be made by [n / 2 ] + [log (n+1) ] foldings, and (b) a pleats folding can be made by O (n∊) foldings for any ∊>0. Next, we also give a nontrivial lower bound: (c) almost all mountain-valley assignments require Ω(log n / n) foldings. The results (b) and (c) imply that a pleats folding is easy in the unit folding problem.
著者
小原 慎弥 上原 隆志 木村 圭一郎 吉田 哲郎 藤原 翔平 水口 裕尊 布施 泰朗 山田 悦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.231-240, 2009 (Released:2009-05-04)
参考文献数
16
被引用文献数
4 5

2006年12月から琵琶湖水を採水し,湖水中の溶存有機物質(DOM)を疎水性樹脂(DAX-8)で疎水性酸(HoA),疎水性中性物質(HoN)及び親水性有機物質(Hi)にカラム分画し,DOM及びその画分の鉛直分布や月変化など動態解析を行った.DOMとその画分の鉛直分布は,5月までは水深に関係なくほぼ均一だが,夏季6~9月には水温躍層(水深10~20 m)の間で大きく変化した.表層水のDOM,Hi及びHoA濃度は,5~9月に増加し,水深の深い所との濃度差が大となった.これらが増加した春季から夏季にはクロロフィルの増加が見られ,フミン物質の増加に加えて内部生産によるHi濃度の増加が影響していると考えられる.トリハロメタン(THM)生成能は,水深10 m付近で高く,水深20 m以下では35~40 μg/Lの値で水深による変化は小さかった.培養時における藻類由来有機物の単位有機炭素当たりのTHM生成能はMicrocystis aeruginosa>Cryptomonas ovata>Staurastrum dorcidentiferumの順で,その種類によってかなり異なり,土壌起源のフミン物質のTHM生成能より低い値を示した.一方,生分解時における藻類由来有機物の単位有機炭素当たりのTHM生成能は,その種類による違いは少なく,湖水の値に近い値を示した.
著者
上原 隆平
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL)
巻号頁・発行日
vol.2010-AL-131, no.11, pp.1-3, 2010-09-15

近年,計算幾何学の一部で 「計算折紙」 とよばれる分野が注目を集めている.その分野では,ある意味で折紙を計算のプラットフォームとみなしている.こうしたプラットフォーム上で,計算量理論的に手におえない困難な問題や,多項式時間で解ける問題がいくつか知られている.さてチューリング機械といった標準的な計算モデルにとって,決定不能な問題の存在は,その計算モデルの計算能力の高さを逆説的に示しているといえよう.それならば,計算折紙モデルでは決定不能な問題が存在するだろうか?本稿では,この疑問に対する解答を与える.具体的には,計算折紙モデルのごく自然な決定問題が決定不能であることを示す.