著者
宮本 真二 安藤 和雄 内田 晴夫 バガバティ アバニィ・クマール セリム ムハマッド
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.5, 2009

ブラマプトラ川流域における高所と低所の土地開発過程の検討を行った.低所では,バングラデシュ中部における沖積低地の開発は,1.3千年前以降に定住化が開始した.一方,高所であるインド北東部山岳地域の土地開発の集中化は,1千年前以降であることが明らかとなった.
著者
内田 晴夫
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.69-74,a2, 1998

満濃池・香川用水掛かりの溜池の水質の調査結果について報告した。本地域では水質汚染が進み, 農業用水基準を満たさない溜池が多く, また, T-NとT-Pを主な指標とすると, 本地域の溜池は (1) 上流に位置する汚染が進んでいない池, 中下流に位置する (2) やや汚染している池,(3) T-Nによる汚染が進んでいる池,(4) T-Pによる汚染が進んでいる池および (5) 植物プランクトンの発生によりCODが高い池,(6) ECとpHが高い (塩基性イオンに富む) 池,(7) ECとpHが小さい (溶存イオンが少ない) 池,(8) TIPとT-Nによる汚染がともに進んでいる池,(9) T-Nによる汚染が極端に進み, 藻類が異常発生している池の9つのグループに分類できることが分かった。
著者
浅田 晴久 松田 正彦 安藤 和雄 内田 晴夫 柳澤 雅之 小林 知 小坂 康之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.73, 2018 (Released:2018-12-01)

1.はじめにモンスーンアジア、中でも東南アジア大陸部稲作圏の国々ではすでに食糧自給がほぼ達成されたことから、農業技術開発・普及および農村開発は、国家戦略の中では優先順位が下がっている。つまり「緑の革命」期の政府による、「技術の押し売り」的状況が改善し、近代農業技術の画一的な普及状況が一変している。国によっては農民の自発的な技術変革が顕著に見られるようになってきており、農業技術発展において各国の状況にはかなり大きな温度差が生じつつある。伝統農業時代に存在した、地域による多様性が再び出現しつつあると言える。また、世界の農業技術が向かっている方向も、多収技術から持続性、安定性、安全性、低投入技術へと移り、脱化学農業の動きも活発である。この変化を国際的な比較を通じて整理し、地域発展の共時的現象として確認し、地域の固有性との関連で農業技術発展における意義を明らかにすることが本研究の目的である。近年、特に2000年以降、地域研究およびそれに隣接する分野の諸研究において農業技術の現状を具体的に記述し、その変容等の意義を問う研究事例がほとんど見られなくなってきている。これは「緑の革命」という東南アジア諸国に共通した農業・農村開発国家戦略が主政策でなくなりつつあることにも関係している。しかし、そのような状況下であるからこそ、東南アジア各国では、国家の圧力から放たれた農民の自由意志による近代と伝統の統合によるもう一つの技術革新が静かに進行していると言える。まさに東南アジア大陸部では、地域の固有性に強く立脚した農業技術発展がその多様性を大きく開花させつつあると言える。このことは現在までほとんどまとまった形で報告されていない。本研究は、水田稲作に着目して、その現象の実態と現代的意義を明らかにする。それにより、地域研究に携わる研究者コミュニティと東南アジアの人々とともに、将来の農業技術のあり方について考えるという意義ももつ。2.研究手法本研究は、京都大学東南アジア研究所の共同研究として2016~2017年度の2年間、浅田が代表を務めて実施した。各国を担当する研究チームを、インド・アッサム(浅田)、バングラデシュ(安藤)、ミャンマー(松田)、ラオス(小坂)、カンボジア(小林)、ベトナム(柳澤)、という形で編成した。研究期間と予算が限られていたため、新たに現地調査を実施するという形式はとらず、各担当者が、これまで現地のカウンターパートとともに行ってきた研究成果を持ち寄り、研究会を定期的に開催して情報交換を行った。各国で近年みられるようになった新しい稲作技術の動向を整理し、モンスーンアジア全域で共通している問題を考察した。 3.結果と考察本研究の成果として、以下の知見が得られた。「緑の革命」の推進期まで、アジア各国では、食料自給を高めるために、政府によるトップダウンにより農民の間に稲作技術が普及していったが、現在は、農民が自由に技術を選択できる状況になっている。各国において機械化農業が進んでいるが、省力化・効率化など技術面での多様性が増している。各国政府は自給率を達成した後もなお収量を重視しているが、農民はコストを重視しており、両者にギャップが生じている。特に農外就労機会の増加、農村から都市への人口移動により、農業就業者の数はいずれの地域でも減少傾向にあり、稲作の持続性にとって大きな問題となりつつある。農業・農村の魅力を高めるには、国家が一方的に関与するだけでなく、農民の主体性も認められなければならない。もはやトップダウン型の政策が通用する時代ではないため、農村の現場で起こっている変化を肯定的に捉えて評価しないと、いかなる農業政策も定着させることは難しいと考える。
著者
セリム ムハマッド 安藤 和雄 内田 晴夫 田中 耕司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.518-527, 1990-09-05

バングラデシュ低地に位置する2カ村でイネを基幹とする作付体系の調査を行った。一つはキショルゴンジ県の広大な低地, ハオール地帯縁辺部に位置するジョワール村で, もう一つはマイメンシン県に散在する凹地 (ビール) に面するタカルビティ村である。調査にあたっては, 両村のトポシークェンスと作付様式の分布との関係を詳しく分析するために, 村人による土地分類に依拠しつつ, 村の全域を標高に応じて細かい土地単位に区分した。また, ボロ, アウス, アマンの3作期に栽培される作物の全筆調査を実施し, あわせて1986年から88年にかけて水文条件の季節変化を観察・測定した。両村に共通して14タイプの作付様式が認められ, うち10タイプがイネ基幹の様式であった。作付様式の構成や分布は, 両村で大きな違いは認められず, その分布はトポシークェンス, 従って水文条件の季節変化に密接に関連して成立していることが明らかになった。ジョワール村では, アウスイネ 基幹およびアマンイネ基幹の作付様式はカンダイラ・ジョミと呼ばれる高位部の土地に分布し, ボロイネ単作はシャイル・ジョミあるいはボロ・ジョミと呼ばれる低位部の土地での優占的な作付様式であった。ボロイネ基幹の作付様式は, 浅管井戸などの近代的な灌漑方式の導入後, 高位部低地や低位部高地に拡大している。作付様式の同様な分布パターンは, タカルビティ村でも認められた。以上より, 現行の作付様式はバングラデシュ低地特有の条件に適合した, 村人の環境への適応の結果であることが明らかにされた。