著者
藤原 智 宇根 寛 中埜 貴元 矢来 博司 小林 知勝 森下 遊
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

1.はじめに 2016年熊本地震(M7.3)について「だいち2号」(ALOS-2)のSARデータを用いてその変位を面的に検出している。これらの地表変位の大部分は震源断層の断層運動で説明できるものの、震源断層から離れた場所で断層運動を示唆する線状の変位(リニアメント)が数多く見つかっている(Fujiwara et al., 2016)。 こうした特徴的な変位は、2018年6月の大阪府北部の地震(M6.1)や2018年北海道胆振東部地震(M6.7)でも捉えられており、それぞれの地震で現れた変位の数や変位量等は異なるものの、周辺状況から大地震に付随して発生した「お付き合い地震断層」と呼ぶべきものとなっている。 本講演では、これらのお付き合い地震断層の特徴について報告する。2.お付き合い地震断層に共通する特徴 お付き合い地震断層は、寒川他(1985)が駿河湾西岸南部地域の活断層について示したもので、単独に活動して大きな地震を引き起こしたものではなく、他の大きな地震の結果として断層が動いたもの、という考え方である。 これらのお付き合い地震断層に共通な特徴には下記が挙げられる。(1) 標準的な長さは数kmで、直線もしくはゆるやかな曲線状の変位が連続しており、断層を挟む変位量は数cmから数10cm程度である。(2) 震源断層から離れており、震源断層そのものや直接の分岐断層である可能性は低い。(3) 大きな地震動を出したとする証拠は確認されていない。(4) 自ら動かずに、受動的に動かされたと考えられ、大きな地震の原因ではなく結果としての断層変位が生じたと考えられる。(5) 地形と変位分布に相関があり、その地形的特徴から「活断層」と認識されていたものもあるため、過去から類似の運動が蓄積している可能性がある。(6) 走向や変位の向きは周辺の応力場と整合的である。3.地震毎の特徴3-1)2016年熊本地震(1) 全体で約230本のお付き合い地震断層が確認されており、検出された数が桁違いに多い。(2) 変位の形態は正断層が大部分を占める。(3) 場所ごとに、複数の断層の走向・間隔・深度・変位の向き・変位量等がほぼ一定で揃った「群」を形成している。(4) 九州中部の別府湾から雲仙にかけて、類似した形状の正断層群がいくつか存在しており、九州中部では、類似したお付き合い地震断層が発生してきている可能性がある。(5) 熊本地震の震源断層となった布田川断層帯・日奈久断層帯の断層モデルによるΔCFFでは、お付き合い地震断層の変位の成因を説明できない。3-2)2018年6月18日大阪府北部の地震(1) 有馬-高槻断層帯の真上断層と一致する場所でお付き合い地震断層が認められた。真上断層は1596年慶長伏見地震(M7.5)での変位が確認されている。(2) 右ずれ成分が卓越しているが、地表までずれが到達しているのではなく、ずれ成分の変位は数百mほどの幅をもって広がっている。(3) お付き合い地震断層直上では、南落ちの縦ずれ成分が見られる。(4) 地震前の長期の観測によれば、お付き合い地震断層を含むやや広い範囲が継続的に沈降している。(5) 大阪府北部の地震の本震による地殻変動はお付き合い地震断層以外でも小さく、最大でも数cm程度である。3-3)2018年北海道胆振東部地震(1) お付き合い地震断層を挟んで東西短縮の変位を示し、上下成分はほとんどない。このことから、低角逆断層を形成していることが推定される。(2) 地表面でのトレースが直線ではなく、地形に沿うようなやや複雑な曲線となっており、上記の低角逆断層の性質と整合的である。(3) 現時点で、お付き合い地震断層付近は活断層とは認定されていない。(4) 地震波探査(横倉他,2014)でお付き合い地震断層直下にずれが認められており、伏在断層として存在している可能性がある。
著者
小林 知子 伊藤 友章 三浦 太郎 河島 尚志 坪井 良治 大久保 ゆかり 三島 史朗 織田 順
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.525-529, 2020-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
6

目的:東京医科大学病院救命救急センターへ搬送された,アナフィラキシー患者を調べ,特徴を検討した。方法:2011年1月〜2017年3月まで,当院救命救急センターへ搬送された192例を対象とした。発生場所,重症度,治療,原因抗原を調べた。結果:アナフィラキシーの搬送数は,全搬送数の1.69%で年々増加している。自宅外での発症が58%を占め,重症度は中等症が76例(39%),重症が103例(54%)であった。被疑物質は,食物アレルギーが74.5%を占めた。皮膚科で原因抗原が確定した25例では抗原として小麦が一番多く,次にアニサキスアレルギー,甲殻類の順であった。考察:本検討では,アナフィラキシー患者は初発例が多い。再発防止のため,原因抗原の同定と指導が大切である。アナフィラキシーに対する他科との連携が大切である。結論:都心部におけるアナフィラキシー発症動向を検討し,食物アレルギーが多いことがわかった。
著者
剣持 龍介 小林 知世 山岸 敬 佐藤 卓也 今村 徹
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.236-244, 2013-06-30 (Released:2014-07-02)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

【目的】 Rey-Osterrieth Complex Figure Test (ROCF) の模写課題における認知症患者の遂行機能障害を評価する簡易な尺度を作成し, 妥当性を検討する。【対象】 新潟リハビリテーション病院神経内科を初診し, 数唱, MMSE, Alzheimer's Disease Assessment Scale(ADAS), Frontal Assessment Battery (FAB)および ROCF の模写課題を施行した認知症患者で MMSE 得点が15 点以上かつ25 点以下の97 症例。【方法】 評価項目は, 計画的で効率的な模写遂行のために適切な順序で模写されているか否か(模写時方略)を評価する 2 項目と, 体系的な模写遂行のために重要な ROCF の部位がまとまった形態として抽出されひと続きで模写されているか否か(骨格要素の抽出)を評価する 5 項目の計7 項目とした。評価項目ごとに得点あり/なしを従属変数とし, MMSE 得点および教育年数を共変量, 年齢, ADAS 下位項目のうちの単語再生, 構成, 観念行為, 見当識, 単語再認の減点, FAB 得点いずれかを独立変数とする logistic 回帰分析を施行した。【結果】 教育年数と認知機能の全体重症度の影響を除外した logistic 重回帰分析において, 評価項目のうちの(1)模写時方略のa)大きな長方形の描き方, b)大きな長方形内部の描き方, (2)骨格要素の抽出のa)大きな長方形, b)大きな長方形内の2 つの対角線, d)大きな長方形内の水平な中央線の 5 項目でFAB 得点との間に有意な関係また有意ではないものの関係する傾向が認められた。これら5 項目の合計得点を従属変数とし, 教育年数と認知機能の全体重症度の影響を除外した重回帰分析においても, FAB 得点に有意な偏回帰係数が得られた。【結論】 本研究では, 評価項目の多くと遂行機能障害との関係が確認され, 尺度として一定の妥当性が示唆された。これらの評価項目を用いた尺度は, 認知症患者の ROCF 模写課題における遂行機能障害を評価する簡便な評価方法であり, 物忘れ外来などの日常的な臨床場面での使用に一定の有用性を有すると考えられた。
著者
神山 かおる 畠山 英子 小林 知子 八城 正典 東 輝明 境 知子 鈴木 建夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.822-827, 2000-11-15
被引用文献数
5 6

おやつ昆布の咀嚼機能食品としての特性を明らかにするために,引っ張り試験機による破断測定,官能評価,咀嚼筋筋電位ならびに咀嚼圧計測を行った.今回用いた4種の昆布では,破断応力は変化しないが,厚みが異なるため,破断荷重は異なった.官能評価では,破断に大きな力を要したものが噛みにくいと判断された.筋電位計測では,噛みにくいと判断された試料では,咀嚼時間や咀嚼回数,全咀嚼筋活動量が大きくなった.昆布のように咀嚼圧よりも高い破断応力をもつ試料の力学特性は,ヒトの嚥下までの咀嚼挙動に影響し,破断荷重の高い試料を,ヒトは咀嚼回数を多くし,長時間をかけて咀嚼し,噛みにくいと感じることが示唆された.一方,一回目の咀嚼に要する咀嚼圧や感圧面積等には,試料の力学特性の影響は観られなかった.
著者
林 行夫 柴山 守 土佐 桂子 長谷川 清 高橋 美和 笹川 秀夫 小林 知 増原 善之 小島 敬裕
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

タイ、ラオス、カンボジア、西南中国(西双版納・徳宏)での全9調査区画において771寺院の施設構成と位置情報、5500の出家者の移動データを収集し、全データを統合しタイでの移動経年データを地域情報学的手法(Hu2マップシステム、ラティスとオートマトン)で時空間解析し他区画への適応を試みた。文献から寺院と出家者の移動をデータベース化したミャンマーをふくめ地域間比較を可能とする『マッピング・データ集成I』(+1DVD)を作成した。
著者
浅田 晴久 松田 正彦 安藤 和雄 内田 晴夫 柳澤 雅之 小林 知 小坂 康之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.73, 2018 (Released:2018-12-01)

1.はじめにモンスーンアジア、中でも東南アジア大陸部稲作圏の国々ではすでに食糧自給がほぼ達成されたことから、農業技術開発・普及および農村開発は、国家戦略の中では優先順位が下がっている。つまり「緑の革命」期の政府による、「技術の押し売り」的状況が改善し、近代農業技術の画一的な普及状況が一変している。国によっては農民の自発的な技術変革が顕著に見られるようになってきており、農業技術発展において各国の状況にはかなり大きな温度差が生じつつある。伝統農業時代に存在した、地域による多様性が再び出現しつつあると言える。また、世界の農業技術が向かっている方向も、多収技術から持続性、安定性、安全性、低投入技術へと移り、脱化学農業の動きも活発である。この変化を国際的な比較を通じて整理し、地域発展の共時的現象として確認し、地域の固有性との関連で農業技術発展における意義を明らかにすることが本研究の目的である。近年、特に2000年以降、地域研究およびそれに隣接する分野の諸研究において農業技術の現状を具体的に記述し、その変容等の意義を問う研究事例がほとんど見られなくなってきている。これは「緑の革命」という東南アジア諸国に共通した農業・農村開発国家戦略が主政策でなくなりつつあることにも関係している。しかし、そのような状況下であるからこそ、東南アジア各国では、国家の圧力から放たれた農民の自由意志による近代と伝統の統合によるもう一つの技術革新が静かに進行していると言える。まさに東南アジア大陸部では、地域の固有性に強く立脚した農業技術発展がその多様性を大きく開花させつつあると言える。このことは現在までほとんどまとまった形で報告されていない。本研究は、水田稲作に着目して、その現象の実態と現代的意義を明らかにする。それにより、地域研究に携わる研究者コミュニティと東南アジアの人々とともに、将来の農業技術のあり方について考えるという意義ももつ。2.研究手法本研究は、京都大学東南アジア研究所の共同研究として2016~2017年度の2年間、浅田が代表を務めて実施した。各国を担当する研究チームを、インド・アッサム(浅田)、バングラデシュ(安藤)、ミャンマー(松田)、ラオス(小坂)、カンボジア(小林)、ベトナム(柳澤)、という形で編成した。研究期間と予算が限られていたため、新たに現地調査を実施するという形式はとらず、各担当者が、これまで現地のカウンターパートとともに行ってきた研究成果を持ち寄り、研究会を定期的に開催して情報交換を行った。各国で近年みられるようになった新しい稲作技術の動向を整理し、モンスーンアジア全域で共通している問題を考察した。 3.結果と考察本研究の成果として、以下の知見が得られた。「緑の革命」の推進期まで、アジア各国では、食料自給を高めるために、政府によるトップダウンにより農民の間に稲作技術が普及していったが、現在は、農民が自由に技術を選択できる状況になっている。各国において機械化農業が進んでいるが、省力化・効率化など技術面での多様性が増している。各国政府は自給率を達成した後もなお収量を重視しているが、農民はコストを重視しており、両者にギャップが生じている。特に農外就労機会の増加、農村から都市への人口移動により、農業就業者の数はいずれの地域でも減少傾向にあり、稲作の持続性にとって大きな問題となりつつある。農業・農村の魅力を高めるには、国家が一方的に関与するだけでなく、農民の主体性も認められなければならない。もはやトップダウン型の政策が通用する時代ではないため、農村の現場で起こっている変化を肯定的に捉えて評価しないと、いかなる農業政策も定着させることは難しいと考える。
著者
小林 知子 伊藤 友章 瀬下 治孝 江草 智津 原田 和俊 大久保 ゆかり 新妻 知行
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1046-1050, 2023 (Released:2023-09-20)
参考文献数
8

症例1は10代女性.6歳から緑豆もやしを食べると口唇の腫脹と口腔内違和感が出現.症例2は20代男性.もやしラーメンを食べたあとにアナフィラキシーショックで当院救命救急センターへ搬送された.2症例ともprick-to-prick testで緑豆もやしに陽性をしめした.さらに症例2は大豆もやしにも陽性となった.また2症例で,バラ科果実でprick-to-prick test施行したところ陽性をしめし,シラカンバ,Gly m4,Bet v1に対する特異的IgEが陽性であった.緑豆もやしは,Vig r1のアレルゲンコンポーネントをもつため,PR-10ファミリーに属す.本邦では緑豆もやしを常食しているが,アレルギーの報告が少ない.しかし,シラカンバアレルギー患者で交差の可能性がある場合は,適切に検査したうえで緑豆もやしアレルギーと診断し,アレルギー専門医はpollen-food allergy syndrome(PFAS)について詳細な食事指導する必要がある.
著者
藤原 智 三木原 香乃 市村 美沙 石本 正芳 小林 知勝
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.161-169, 2023-09-30 (Released:2023-11-02)
参考文献数
11

In the Atosanupuri volcanic complex in the Kussharo caldera, eastern Hokkaido, Japan, short-term uplift followed by subsidence around 1994 was detected using interferometric SAR (InSAR) analysis. In this study, an InSAR time series analysis from 2014 to 2022 using the ALOS-2 satellite revealed continued long-term subsidence of the entire Atosanupuri volcanic complex. The subsidence followed an exponential trend, with a relaxation time constant of several decades. However, long-term data are required to determine future displacement convergence due to frequent temporary and unsteady stagnations and uplifts. In contrast, the northwestern part of the Rishiri lava dome showed a constant subsidence rate without fluctuations. The results of the InSAR time-series analysis from 2016 to 2020 demonstrated that a horizontal sheet-like crust (sill) located 5.3 km below the surface of the Atosanupuri volcanic complex is shrinking at a rate of −1.44 million m3/year, whereas another sill at a depth of 700 m below the surface of the northwestern part of the Rishiri lava dome is shrinking at a rate of −21,000 m3/year. Although the residuals after subtracting these pressure source models indicate displacements of a few millimeters per year, these are most likely systematic errors inherent in InSAR. The InSAR time series analysis proved to be highly accurate in capturing temporal changes and spatial distribution, even when the displacement is less than 1 cm per year, and the results were not easily confounded by various errors. Therefore, data accumulation is crucial for InSAR time-series analysis.
著者
加藤 正宏 山中 俊夫 小林 知広 渡部 朱生
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.285, pp.17-27, 2020-12-05 (Released:2021-12-05)
参考文献数
14

大面積の窓を有するエントランス・吹抜空間や,窓性能が低く暖房時に窓近傍の温熱環境悪化が懸念される場合にはペリメータファンおよび自然対流型ペリメータヒータなどの窓対策設備の使用が検討される。本報告では冷却された窓面下部に機器を設置した場合の詳細な現象の把握とシミュレーション検証データ取得を目的とした温度分布およびPIV による風速分布測定を行った。また,特に上下温度分布予測モデルの検証やモデル化に反映するため,窓面近傍の上昇流・下降流風量の推定と,室温・窓面熱流の測定値より,対流・放射熱伝達率を算出した結果について報告する。
著者
和田 洋藏 小林 知吉
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.151-158, 1995-03-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
14
被引用文献数
7 12

We reared the oval squid Sepioteuthis lessoniana in pens from June 3 to July 31 1992. The eggs spawned by these squid were reared in a tank to hatch. A female reared with a male in a pen spawned 11 times at intervals of 1-9 days from June 11 to July 30. This female laid 1, 540 egg capsules containing 7, 780 eggs in total (55 to 302 capsules containing 231 to 1, 388 eggs at one spawning). The hatchability of the eggs at each spawning ranged from 66.7 to 97.8%. Another female reared without a male in a pen spawned more than four times, but the hatchability rate of the eggs was lower than the former female. The female with a male had spermatophores when she died, while the female without a male had no spermatophores after several spawnings (both females had spermatophores at the beginning of the experiment). These results suggest that the oval squids copulated over the period from the previous spawning to the next. The number (Y) of eggs in one capsule was related to the water temperature (X, °C) on the day of spawning. This relation was expressed by the following equation. Y=15.1-0.426X.
著者
市川 賢 前山 彰 小田 大嘉 中山 鎭秀 石松 哲郎 小林 知弘 鎌田 聡 山本 卓明
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.630-633, 2021-09-25 (Released:2021-11-12)
参考文献数
6

【背景及び目的】内側型変形性膝関節症に対するOWHTOは良好な長期成績が報告されている.インプラントの長期留置に伴う破損,違和感等の合併症が報告され,本邦では抜釘術が行われる傾向にある.一方,抜釘術自体に伴う感染・神経損傷等の危険性もあり海外では抜釘術に関しては一定の見解はない.また,これまでに抜釘術の術後評価を行った研究はない.研究の目的はOWHTOの抜釘術の満足度を調査することである.【対象及び方法】2015年4月から2020年3月までにOWHTOの抜釘術を施行し術後満足度を調査可能であった25例28膝.抜釘術の満足度をアンケートを用いて評価し,術前後の臨床評価スコアとの関連を調査した.【結果】VAS,NRSが術前後でそれぞれ有意に低下を認めた(P<0.05).82%の患者に抜釘術に対して満足/非常に満足との回答が得られた.【結論】OWHTO後の抜釘術により患者満足度は向上する.
著者
小林 知嵩 内藤 健
出版者
日本シミュレーション学会
雑誌
日本シミュレーション学会論文誌 (ISSN:18835031)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.18-22, 2021 (Released:2021-05-25)
参考文献数
9

自然界に存在する生命分子や原子核分裂直後の粒子対のサイズ比(質量比)の必然性を解明するために,流体力学的な近似モデルを拡張した確率論的運動量保存則のモデル(Naitoh:J. of Physics, 2012)が提示された.このモデルに1次元空間でのテイラー展開を施した後に,新たな安定性概念(最弱の安定性である準安定性)を適用することで,対称および非対称なサイズ比(質量比)が共存する理由が定性的に解明された.従来,原子核分裂については,エネルギー保存則に対してなされてきたが,この新たなモデルは,3次元非定常の運動量保存則によるもので,ベクトル量(速度)も扱っており,空間次元が高いことが特徴となっており,スカラー量のエネルギー保存則と比べて,より詳細なメカニズムの解明が期待できる.著者は,更に,多次元のテイラー展開を導入して,拡張した式とすることで,生命・非生命の粒子のサイズ,質量比の頻度分布を,従来よりも正確に求めることができることを示してきた.(Kobayashi and Naitoh, JASSE, 2019)しかも,多次元のテイラー展開を施した後にあらわれる項の群を,表面力系,対流系,中間系の3種に分類することで,ウラン235の核分裂反応における原子核内部の対流の強さ(つまり,衝突させる中性子のエネルギーレベル)が,生成される原子核の質量分布に影響するメカニズムも解明してきた.本研究では,この理論を凝縮系核反応にも適用する.投入するエネルギーレベルが小さいことを元に,表面力系および中間系の2種類の項の群を用いて反応生成物の質量分布計算を行った結果,凝縮系核反応の反応生成物の質量分布について,ある程度説明することができた.
著者
小林 知恵
出版者
北海道大学大学院文学院
雑誌
研究論集 (ISSN:24352799)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.35-49, 2019-12-20

S. ブラックバーンの準実在論は,態度の投影という考えを経由することによって,道徳的性質や道徳的事実の存在を前提とすることなく,私たちの道徳的実践を説明することを目指すプログラムである。彼は道徳的言語実践の説明に際して,道徳的言明の意味論的機能は態度の表出であるとする表出主義を採用する。しかし,表出主義の妥当性は長らく現代メタ倫理学上の一大トピックとして盛んに論じられ続けており,近年では表出主義の難点を解消する代替案として様々なタイプのハイブリッド表出主義が提唱されている。本稿では,ブラックバーンの純粋な表出主義とM. リッジが提唱したハイブリッド表出主義の相違点を明らかにし,ブラックバーン流の表出主義がハイブリッド表出主義に取って代わられるべきではない理由を,彼の理論内部の整合性という観点と,ハイブリッド表出主義自体が抱える難点に基づいて提示する。
著者
矢来 博司 小林 知勝 森下 遊 山田 晋也 三浦 優司 和田 弘人 仲井 博之 山中 雅之 攪上 泰亮 上芝 晴香
出版者
一般社団法人 日本写真測量学会
雑誌
写真測量とリモートセンシング
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.6-11, 2016
被引用文献数
2

噴火に伴う被害の軽減のためには,火山活動のモニタリングが重要である。近年,地殻変動の空間分布を詳細に把握できる利点から,SARを搭載する「だいち2号」の活用が期待されている。この「だいち2号」の干渉SARにより,箱根山や桜島などで火山活動の活発化に伴う地殻変動が捉えられた。箱根山では大涌谷で地殻変動が検出され,継続的な観測により変動の推移が捉えられた。桜島では,捉えられた地殻変動から昭和火口の直下へのマグマ貫入が推定された。これらの情報は火山噴火予知連絡会などに報告され,評価に活用されている。
著者
小牟田 清 五十嵐 敢 舛谷 仁丸 前田 恵治 元村 卓嗣 小林 知加子
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.69-74, 1992-02-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
14

CDDPを中心とする化学療法を施行後腎機能障害を来した肺癌症例に対し, 腎機能障害の指標としてBUN. Cr. Ccrを測定しPGE1の治療効果を検討した. 化学療法には, CDDP, VDS, MMCまたはCDDP, VP-16が用いられた.PGE1は60μgを一日2回10日ないし14日間点滴投与した. その結果, 7症例中6症例に於て腎機能の改善が認められた. PGE1の治療効果を明らかにするため動物実験を行った. CDDPが投与されたICR系マウスは血清BUN, Crの高値が認められ, 組織学的に尿細管障害も明らかであった.しかし, PGE1投与はこれらの障害を防止または軽減した.以上より, CDDP投与後の腎障害に対しPGE1が治療効果を示すことが明らかとなった.今後, CDDPの投与量の改善を含めた投与方法の改良の可能性が示唆された.