著者
金子 之史 前田 喜四雄
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-21, 2002-06-30

日本人の研究者による哺乳類の学名の記載とその学名を付与した模式標本の保管状況を把握することは,哺乳類学の基礎である分類学を確立するためには欠くことができない.しかし,日本の哺乳類研究者がいままでに記載発表した哺乳類の新種·新亜種などの学名と模式標本のリストは今泉(1962)を除いてなく,それも未完である.日本におけるこのような状況を改善するために,2000年までの日本人哺乳類研究者が記載した学名と出典文献のリストを作成した.このリストには "nom.nud." などの無資格名も含んだ.結果として,適格名206のうち,模式標本が現在も保管されている学名は64(31.1%),模式標本が消失した学名は57(27.7%),および模式標本の所在が未調査("N.V.")の学名は85(41.3%)となった.以上の結果から,我々は動物学標本と文献を永久に保管できる国立の自然史博物館の設立を強く希望する.
著者
前田 喜四雄
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.9-33, 1984

<I>M.australis, M.paululus</I>および<I>M.solomonensis</I>の3種における外部および頭骨計則値とそれらの相対比の若干について地理的変異を調べた。<I>M.australis</I>と<I>M.paululus</I>における下腿長および下腿長と前腕長との比, <I>australis</I>における頭骨の長さに関する計測値および脳函幅では雄が雌より大であった。一方, <I>M.australis</I>の頭骨全長に対する前腕長の比および頭骨基底全長に対する臼歯間幅の比では雌が雄より大きかった。<I>M.australis</I>の全形質と, 頭骨全長に対する乳様突起間幅の比を除いた<I>M.paululus</I>の全形質では, 地理的変異が明らかであった。<I>M.solomonensis</I>は他2種のいかなる個体群よりも大半の形質で有意に異った.<I>M.paululus</I>は頭骨と歯列の長さにおいて, 他2種のいかなる個体群よりも有意に小さかった。
著者
金子 之史 前田 喜四雄
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-21, 2002 (Released:2008-07-23)
参考文献数
39
被引用文献数
7

日本人の研究者による哺乳類の学名の記載とその学名を付与した模式標本の保管状況を把握することは,哺乳類学の基礎である分類学を確立するためには欠くことができない.しかし,日本の哺乳類研究者がいままでに記載発表した哺乳類の新種·新亜種などの学名と模式標本のリストは今泉(1962)を除いてなく,それも未完である.日本におけるこのような状況を改善するために,2000年までの日本人哺乳類研究者が記載した学名と出典文献のリストを作成した.このリストには “nom.nud.” などの無資格名も含んだ.結果として,適格名206のうち,模式標本が現在も保管されている学名は64(31.1%),模式標本が消失した学名は57(27.7%),および模式標本の所在が未調査(“N.V.”)の学名は85(41.3%)となった.以上の結果から,我々は動物学標本と文献を永久に保管できる国立の自然史博物館の設立を強く希望する.
著者
松立 大史 三好 康子 田村 典子 村田 浩一 丸山 総一 木村 順平 野上 貞雄 前田 喜四雄 福本 幸夫 赤迫 良一 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.63-67, 2003 (Released:2018-05-04)
参考文献数
10
被引用文献数
1 16

国内5郡県で採集されたタイワンリスCallosciurus erythraeus 24個体およびヌートリアMyocastor coypus 53固体について内部寄生蠕虫類の調査を行った。これら2種の外来哺乳類における本格的な寄生蠕虫調査は今回が初めてである。その結果,タイワンリスからはBrevistriata callosciuviおよびStorongyloides sp.が,またヌートリアからはStorongyloides myopotami. Calodium hepaticumおよびFasciola sp.がそれぞれ見つかった。Fasciola sp.がヌートリアに寄生していた例は日本において初めての報告である。Fasciola sp.とC.hepaticumは人獣共通寄生虫症の病原体なので留意すべきである。
著者
福井 大 前田 喜四雄 佐藤 雅彦 河合 久仁子
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.39-43, 2003-06-30
被引用文献数
3

北海道函館市において,これまで青森県以北には分布しないとされていたアブラコウモリ Pipistrellus abramus を捕獲した.捕獲個体は妊娠しており,本種が北海道内で繁殖をしていることも確認された.また,外部形態やエコロケーションコールの構造は本州産の本種とほぼ同じであった.今後,本種の北海道内における分布の拡大が注目される.